Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

五風荘でお食事会

そんなに遠くない所に住んでいるのに、昨日まで知らなかった五風荘。
南海本線「蛸地蔵」という駅で降りて、地図を見ながら
路地を歩いていくと、突き当たりを左に曲がればそこがお屋敷。
葉月も末になるとこの時間帯ははや暗く、久しぶりに夕立まで。

  


知る人ぞ知る、五風荘。向かいはすぐに岸和田城のお堀端。
大阪は南部、だんじりで有名な岸和田市岸和田城
そのお隣にある昔の市長(寺田利吉)さんの邸宅を、
がんこ寿司が年間2000万の予算で借りて、
売り上げの1%を寄付することになっているらしい、
御茶屋だったとかいう大邸宅。
今からではこんな立派なお庭のある回廊式のお屋敷など建てられやしない。
貴重な文化遺産、維持費のかかる市のお荷物、
建築物を保存し、守り伝えていくための苦肉の策?らしい。

  


玄関から出入り口は小さな待合、居酒屋さんのような、
風呂屋さんのようなあの例の靴置き場。
お土産売り場まであってしばし案内を待つことに。
仲居さんもみんな着物姿で、どこまで行くのか案内されて、
会合に遅れて着くこと30分ほど。
いやあ、直線距離にしたらもっと近いかと思ったけれど、
なんのなんの、公共交通機関では迂回路を取らねばならぬ。
大阪市内に出て飲むよりも時間が掛かる。

  

  


さて、始まりかけた宴に参加し、和風の調度を眺めつつ、
上げ膳据え膳のご馳走を頂く。正座して食べなければならない、
和風の個室は足を悪くしている者にとっては、少々苦痛。
(後で知ったのだが、椅子席の部屋もある。
今度自分で来る時は、 事情を話してそこを予約しよう)

  

  

雨上がりの十六夜の月に照らされたお庭も凄いけれど、
邸内のしつらえ、調度品、飾り付け等、内部も凄い。
有田焼の大皿や塗りの箪笥、名画がさりげなく。
じっくり説明を聞く時間も無い夜の食事だったのが残念。
もう少し下調べして来て見ればよかったのだが、
誰がどうしてここを選んだのか訳も知らずに
のほんんと地図を見ながら来てしまったのが悔やまれる。

  

  



ガラス障子の向こうに見える、和風の間接照明に、
昔々若かりし頃、今は亡きお茶の師匠宅に招かれた、
夜のお茶事を思い出す。足元を照らす蝋燭のほの明かり。
心尽くしの会席料理、床の間、掛け軸、
・・・あれから随分経ったのに、数年で止めたお稽古は、
足が痺れた「思い出」だけになってしまい、技として身に付かぬまま。
食い気ばかりが募る年月。

  

  


明治までお茶屋だったので回廊形式で庭園を見ながらお食事できる。
その全景が絵や写真になって飾られている。
入り口に御座らっしゃったのは、かつての当主の彫像。


蔵の中を行ったり来たりしている様な、そんな雰囲気の部屋も、
さりげなく置かれた調度も見応えがあり、
お食事そのものは庶民的なレベルで、お値段は手ごろ。
さすがに昼はともかく、夜は予約なしでは何だが。

  

  


十六夜の月を楽しみながら、お食事。
同僚との会食でなければ、もう少ししっとりしめやかに、
「目にはさやかに見えねども」秋めいた話題も出たのだろうが。
まあ、9月に向けての頑張ろう会にしては、随分と風流な場所を選んだものだ。
がんこ寿司ではあちらこちらに、昔の建築物を損なわぬよう心掛けて
何箇所かこのような風情のお店を開いているとのこと。
これはプチ旅行も兼ねて、残りの店もいずれは訪ねてみねばなるまいて。

 

食後暗い中を少しばかり散策。
今度は昼明るい時にしっかりと目に焼き付けておこう。
正門は奈良東大寺塔頭中性院表門を移築、敷地3千坪。
主屋と庭園を見渡せる三つの茶室。
全てを見て回ったわけではないが、桐の1枚板の欄間。
図柄は平等院と同じものらしい。


 


池の傍、篝火が炊けるようになっているらしい。
この風情、実際に揺れる炎を楽しみたい。
ぜひぜひ、もう一度家族で来てみよう。
最近稀に見るヒット、穴場だ。
季節折々の催し物も工夫されているようだし・・・。
この年齢ともなれば、こういう落ち着いた場所で
ゆっくりお食事を楽しみたいもの。
若い方にもお手ごろ値段。家族もOK。


出かける時は気に染まぬ思いで慌ただしく出向いたのだが、
帰る時にはお腹も目も満足して、雨上がりの涼しい庭を散策、
十六夜の月のもと、久しぶりに見る岸和田城の風情を楽しんだ。
なかなかに良いお食事会でした。

句集 十六夜

句集 十六夜