Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ベスト・キッド

話題作「ベスト・キッド」を見てきたが・・・吹き替え版だったので今ひとつ。
近所にシネコンが4つもあるのに、みんな吹き替え版。
では字幕が見当たらない。これが気落ちした一つ。
それに、子供が主人公の映画、アニメではなくて実写版は少々気が重い。
有名人の父親と一度共演し、今度はジャッキーチェンとの共演。
そんな少年を主人公としてどう鑑賞すればいいのか、少々気が引ける。


まず、子供ということできつめ辛めの批評できない。
「泣く子と地頭には勝てぬ」同様、映画の世界では、
「子役と動物には勝てぬ」の鉄則がある。ある意味、ずるいわな。
そして、国を超えた引越し、激変ともいうべき環境の変化に沈む子供と
対照的に能天気な母親。
(いくら強気に装って弱みを見せない役柄の母とはいえ・・・)
「見た目とは違う」と語っても、最初抜け殻のジャッキーの役も・・・。


老け役の(いやもう既にトシですが)ジャッキー・チェン。
見るのが辛い。「燃えよ ドラゴン」の端役の時から知っているだけに。
もちろんいい役どころではあるが、何だかストーリー上都合よく現れてきて、
しっくり来ない。序盤からパワー全開で出てくる必要はないけれど。
映画全体、当たり前の盛り上がりは、それなりに上手。
ちょっとした矛盾点、それも気になるけれど目をつぶろう。
いったん鼻につくと、やっぱり、何だかなあ・・・。


カンフーを容赦ない攻撃の技と教える人間と、
かつてどのような確執があったのか、無かったのか、
相手側(悪役)が一対一の試合にこだわる「わけ」がわからん。
物語には悪役が必要だが、ここまで露骨に子供を使ってやるのも名あ・・・。
悪役を演じさせられた中国人の子供が少々気の毒になった。
だから、クレジットにメイキング映像を入れて、
「製作中はみんな仲良しだったんだよ、心配しないでね」の
配慮的なメッセージ入れたんだろう。ずるいわな。


どうしても、あの北京オリンピックの国家的ズルを思い出してしまう。
(今回の上海万博も色々あるらしいけれど)
様々なからくりがあった北京オリンピックを思い出して嫌な気分になってしまう。
あの、胡散臭い疑惑と作りこみ映像、口ぱく替え玉の少女の歌う姿、
少数民族の衣装を着た漢民族の子供たちが演出した多民族強制のイメージ。
そう、イメージ戦略を国家レベルであざとく行っていることが思い出されて、
映画を見ながらうんざりしてしまうのだ。


中国政府のご協力を得ましたといわんばかりの、北京の景色。
「ラスト・エンペラー」以来の故宮の撮影。
貴重な世界遺産、滅多に見られない聖域に近い景色、
その素晴らしい自然と人との有様を、万博に絡んだ観光政策の一環として
映画の中に盛り込みましたという雰囲気、ありあり。
「狙えるものなら何匹でも柳の下の泥鰌を狙え」的な魂胆が見え透いていて、
もの凄く嫌だった。


ラストの試合の電光掲示板の結果発表も、気持ち悪かった。
アニメのポケモンバトルじゃあるまいし、人を何だと思ってる?
いかにも「ハイテク産業最前線を走っています、中国」を宣伝したいんだか。
国力充実、気合十分、世界に試合を挑んで「I'm NO.1!中国」
そう叫んでいるが如きの、演出。
現実にこういう試合があったら、肌の色の違う主人公の名を叫んだだろうか、
中華思想の中国側が・・・。ありえん、と思った。
中国に直接的な恨みを持っているわけではないけれど、
やはりあのオリンピック以来、中国のメディア戦略はなんだか信用できない。
しょせん娯楽映画なんだからと笑って済ませられないのは、何故?
自分でも不思議なくらい気になって仕方がない。

そうだったのか!中国 (集英社文庫)

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新・中国若者マーケット

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主人公は頑張っていたよ。ウィル・スミスの息子に生まれたからにゃ、
親の七光りでも何でもやるだけやらなくちゃ、ね。
CGで作りこめない部分もあるから、一生懸命努力しただろう。
素質有る無しにも関わらず、肉体的にもハードだったと思う。
でも、そんなに短期間に成長しちゃう主人公。
やっぱり、普通ではありえない。


カンフーの解釈や教え方の部分、そこは従来の訓練とは異なり、
なかなかユニークだったけれどね。さすが新ネタを振った演出。
シングルマザーで明るく頑張る母親への、我儘な態度を反省させるべく、
上着の掛けおろし動作の繰り返し、許可を貰ってから出入りする礼儀等。
家庭菜園の泥を利用した足元の訓練、
山腹の神秘的な寺院や遺跡を背景にした訓練。
いかにも観光絡みだったけれど、それはそれでよかった。


いまだに中国はピオネール、共産主義の格好を学校制服に?
あのオリンピックのために破壊されたはずの裏町、胡同?
観光用に残しておいた部分での撮影? 迫力ある逃走劇、
公園での太極拳や卓球など健康維持に余念の無い庶民の姿、
引っ越し先の部屋に置かれた不自然なほどでかいソニーのTV。
七夕祭りの伝統的な行事の雰囲気を盛り込んだ映像。
カンフー以外の要素を盛り込んで、全体として甘めな流れ。
「ちいさな恋のメロディ」と昔の「ベストキッド」へのオマージュ?
ある意味、オリジナル性に乏しかった・・・。


ジャッキーが出ていなかったら、映画館まで足を運ばなかったかも。
基本的にカンフー映画はTVでしか見ない私。
というか、ジャッキーとウィル・スミスの息子が出ていなかったら、
話題性を保つことができたか? このストーリー。
楽しいシーンはあったけれど、製作側のお約束と意図と契約内容で、
雁字搦めになっているような印象ばかりが気になった映画。


よく言えば、父を亡くして父性に乏しい年に、
異国の武術の達人が躾も含めて、師となり、
弟子としてカラードの少年を鍛えることで、
人種的な差別や子供世界のいじめ、思春期の揺れる心を支え、
一つのことをやり抜き、存在価値を高め、自信を付けさせる。
その過程で妻と子を失った男の人生も、カンフーを通じて再生する、
カンフーでつながれた師弟愛、師と弟子の二人三脚。
そういうコンセプトだったのでしょう。


子供がカンフーを教えてくれた師にあたる人に、「友達」と語りかける、
今風の感覚、原語ではどうなっているのか、吹き替えのせりふには抵抗があった。
目上の人間を安易に「友達扱い」で語るな・・・と、
感じる私は頑ななんでしょうね。
トモダチ親子が嫌いな私ですから。
擬似的父性を師に求めながら、友達だと表現するのを、
子供だから許されるとするのを、あまりにも「ウザイ」と感じる私は、
古い人間、なのかも。

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