Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

初秋や軽き病に

一昨日の休日出勤が、ほぼ立ちっぱなし。
昨日の中秋明月祭も、昼間は立ちっぱなし。
やはり無理をしてしまったらしい。
上等のインソール入りの靴でも駄目だったようで、
左足が全くいう事をきかない。左足の脹脛と足首から先、
左足裏、情けなくなるくらい右足と別。
どう見ても土踏まずは左足の方が右足よりあると思うのだが、
足底筋膜炎(足底腱膜炎)の足の痛みは尋常ではない。


踵に骨棘というが、それだけでここまで痛いか?
左足の筋力が落ちているというが、何故こんなに?
姿勢? 筋トレに通うこと半年足らず、
一旦良くなったように見えて、一進一退で痛みが増したり引いたり。
結局、立ち仕事が長いとヒールを履いていなくても、これだ。
痛くて痛くて、左足が他人の足のようにいう事をきかない。


せっかくのシルバー連休。敬老の日
私の足だけが「私」を取り残して、年老いてしまったのか。
全く持って理不尽な足の痛みに、今日は憂鬱な一日。ダウン。
家事をする気力もなく、パソコンにボーっと向かっている。
これでいいのか? やらなくてはならないことはあるはずなのに、
何もかも投げ打って・・・。情けなや・・・。


虚子だったっけ、「初秋や軽き病に買ひ薬」
いい加減もっと涼しくなってもいいと思うが、
暑さの余り病気になってもおかしくない。
しかし、仕事をするにせよ遊ぶにせよ、動物の四足に反した、
二本足歩行のためにここまで痛い思いをしないといけないのか。
情けなや。もっとも脊椎カリエスの虚子は包帯を換えるのにも、
痛さの余り涙をこぼしたというから、
私などは比べるのもおこがましい贅沢病なのだが、
そこまではいかぬ「軽き病」とはいえ、痛いものは痛い。


そこで、こういう時、電脳玉手箱の蜘蛛の巣は、
頭の中に蜘蛛の巣を張り巡らして煙をまくのではなく、
心に風穴を開けるように、別世界を見せてくれる。
大阪はまだまだ暑いけれど、秋の便りはあちらこちらから。
薬を買いに行くのではなく、(休日に通院は無理)
薬になるような気分転換をして過ごす。
動かないというよりも、動けない人間には電脳玉手箱は便利。

仰臥漫録 (岩波文庫)

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正岡子規の〈楽しむ力〉 (生活人新書)

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美しい写真がある。仰ぎ見ることができない山々も、高山植物も、
かつて訪れたことのある山奥の懐かしい温泉も、見覚えのある道も、
住んでいた事のある町々、忘れられない景色、遠い国々、
全てが見知らぬ人々の手を通して提供される。
時には言葉が添えられて、或いはコメント返しとなって、
静かな小さなやり取りが交わされ、通り過ぎていく。


ツィッターでなくてもいい、そんなにしょっちゅう呟く時間も無い。
ボーっとしていること。心の中だけで呟くこと。
誰かにフォローして貰うことよりも、自分だけの世界を守ること、
時にはお互いに行き来すること、選択する自由、
家族の中にも、外にも、目に見えない世界が広がる。


時には、SFの世界にあるように、テレパシーを信じたい人間が、
リアルタイムのフォローアップを求めるのかもしれないけれど、
所詮は「立って半畳寝て一畳」が本質の人間だから、
独りきりの寂しさを味わい切ることも必要だ。
家族の中にあっても独り。贅沢な独りではあるが。


痛みを忘れることはできなくても、痛みを案じてくれる人間が居る。
虚子は淡々と自分の世話をする人間のことを批判していたが、
長患いをする人間を一喜一憂しながら世話をするのは大変で、
家族は自分の心を守るために、看病という一般人の非日常を
普通の日常として享受するために、平坦とも冷淡とも
何とも言えぬ日常を生き抜いていただろうと思う。
傍に居ることに徹するだけでも、大変なことなのだから。


ボルタレンを、見つからなければロキサニンを、
そう思って探す時に限って、見つからない。
薬が切れていたりする。症状が安定していれば、飲まない鎮痛剤。
ドンと痛みが来る。買い薬では治まらないだろうと思いつつ、
適当な痛み止めを薬箱から取り出して「気は心」「無いよりはまし」
胃が荒れることも承知の上で、飲んでみる午後。


パソコン画面はプチ異世界を連れて来る。
しかし、現実の痛みを取り去るわけではない。
わかっていてその異世界にしばし耽溺する。
パソコンも依存性の高い麻薬のように私を蝕む。
その毒をもって、毒を制するが如く、一日が過ぎる。

明るい昨日と対照的な今日一日。
どんよりとしたかーちゃんを遠巻きにしながら、
家族が居ることのありがたさ。
家族に迷惑を掛けていることの切なさ。
元気で痛くない機嫌のいいかーちゃんであればこそ、
別の日常、別の一日もあっただろうに。


そうこうしている内に、シルバー連休は終わる。
もっとも私にとっては2連休。普段の土日と変わらないが、
家人と娘にとっては3連休。こんな風に終わる一日。
初秋や軽き病に感謝する。
重ければ駄文を綴ってもいられない。

病牀六尺 (岩波文庫)

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正岡子規の世界

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