Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

とある出張後 

塀の中。滅多にない出張なので、少々緊張。
田舎、人里離れて、各駅、タクシーもバスもない駅。
無線タクシーを呼ぼうにも話中で繋がらない。
仕事ととはいえ、予想していたこととはいえ落ち込んだ。
どう割り切って自分の経験に組み込んでいけばいいのか、わからない。
それよりも、往復で歩く距離が半端ではなく、片道2時間半の出張、
(新幹線に座っているような、そんな気持ちの良いものではなく)
肉体的な疲労に加えて、精神的なボディブローが
じわじわと効いて来る感触が、たまらなく疲れを募らせた。


おまけに付けて貰ったばかりの仮歯はまたも一日で取れた。
再び近医に出向くのもかったるい。
幸か不幸か、出張帰りに病院に寄る時間があり、
駄目元でお願いして、急患扱いで付けて貰った。
それにしても、主治医とセメントが乾くまでの処置が違う。
単に「噛んでいてくださいね」ではなくて、
かみ合わせ部分にコットンを挟んでくれる。
電子カルテを書いている間、ずっとかみ続け。
つまり、噛んでいる時間が長い。
普段の主治医はコットンは殆ど使わないし、
30分程度飲食を控えるようにの指示だけ。



「どうせ取れる形の仮歯だし、根っこの治療している間は仮歯いらないよ、
却って使わないほうがいいよ。どうせ仮蓋しているから大丈夫。」
とは本日の先生のお言葉。そうかもしれない。
きっとそうなのかもしれないけれど、神経部分、治療中の部分に、
直接食べ物の何かが作用しそうで気分的には良くない。
熱くても冷たくても、噛んだ圧力によっても痛みは走るというのに。


気分転換がしたい。
出張先の目に見えない空気を背負ったまま、帰りたくない。
小さなレンタルギャラリーで一服し、家人と待ち合わせて、
辛い辛いラオス料理を食べて帰宅。胃の腑がひっくり返った感じ。
辛さで、異国情緒で忘れてしまいたい。
仕事とはいえ、辛い研修、余り見ていたくない世界。
私にとってはそうだった。
割り切って通り過ぎるには、余りにも辛い。


そんな思いで一日を締めくくろうにも、なかなか。
いつになく湿りがちな思いに、ともすれば侵食されそう。
冷たく流れ込む夜の空気。
誰といても何を見てもただただ寂しい。
この感覚は、幾つになっても消えないらしい。


黒光りするキーの向こう。
ただただ寂しい生活を思い出す。

塀の中から見た人生

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ハンプティ・ダンプティは塀の中 (ミステリ・フロンティア)

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