Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

フレンチトーストが食べたくて


そこは開店1周年の記念のプレートを立てていた。
暫く心理学関係の研修や勉強会から遠ざかっているのだが、
たまに思い出したように顔を出して見て、
自分が錆びつかないようにメンテナンスしている。
いつまで経ってもプロのど根性は養えそうにないが、
それでも「あすなろ」精神でへばりついているしかない。


しかし、自分の立ち位置は何だろう、在り方は?
この中途半端な勉強の仕方、学び方の何が現場の役に立つのだろう、
今の自分をどれだけ支えてくれるというのだろう。
そう思うと、辛く切なくやるせなくなるのだが、だからと言って、
今の生活を全て投げうって別の世界に入ることもできないし、
そうするよりも何よりも、経済的な基盤を第一に動いているわけだから、
無茶をして夢見てキャリアを失うわけにはいかない。


そんな自分を励ましてくれるように、その店はある。
何とも懐かしい色使い、ベージュを基調とした柔らかい色調で。
ご夫婦2人でやっているのだろうか、どちらがお菓子を、
どちらが料理を担当しているのだろうと・・・。
そう、この店では手作りのクッキーなんぞも置いていて、
ティータイムに寛ぐもよし、ちょっとした定食を食べるもよし。


基本のご飯とスープは変わらなくて、添えの小皿料理だけが変わる。
初めて入った時もそして今日も、いつも同じ、落ち着いた雰囲気。
置いてある本はスローライフ関連の雑誌、エッセイ、童話。
テーブルや椅子のちょっとした空間に飾りだな、雑貨、調度。
それが押し付けがましくないかわいらしさで置かれている。
この空間が何とも心地よい。


今日は、食事前だというのにどうしてもこの店で寛ぎたくなって、
この店のフレンチトーストを食べたくなって。
疲れているんだな、私。落ち込んでいる、めげている、
勉強すればするほどできないことがわかるだけ。
年を取ったからとて埋まることはない、この裂け目にどんよりとしながら、
疲労と空腹を抱えて駅までとぼとぼ歩いて来た。


賑やかな声を後ろに聞きながら、その世界に入っていくことも、
未練を感じながらも同じ空気を吸うことも、
あれこれと思い煩いながらも、その場に立つことのできない、
同じ時間を共有することのできない意気地なしの自分に、
忸怩とした思いを抱きながら、家族の傍にいて、
今の仕事のことをあれこれと考えて、精一杯だと感じている。


そんな自分の喉元を、柔らかく甘くくすぐりながら、
シナモンの香りが、砂糖とバターの甘さとしょっぱさが、
軽やかなハーモニーを奏でながら胃の腑へ滑り落ちていく。
一瞬、どこか遠いおとぎの国のお姫様になったような気分で、
ゆっくりと飲み下しながら、自分がふわりと軽くなったような、
そんな心持ちでほっとする。


そんな空間。そんな場所。この店は、不思議な寛げる店。
お勘定時に、「一周年の記念です」と焼き菓子を貰った。
ご縁が続きますように。そんな心遣いも嬉しい。
ご馳走様。ありがとう。
このお店でほっとする人が増えますように。

スコーン&ホットビスケット

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スペインから届いた、ほっとやさしいレシピ

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