スペイン料理店FUIGO

夏にオルメカ展に訪れた時、実はここでランチをする予定だった。
目を付けていたのだが、残念ながら入れなかった。
→http://d.hatena.ne.jp/neimu/20100807/1281897525

今回自分一人で思い立ってアンテアに会いに、ナポリまで行く代わりに、
カポディモンテ美術館展にやって来て、独り飯とあいなった。
何、別に珍しいことではないのだが、やはり何となく侘しい。
イタリアの絵画を見て、スペインの料理を食べる京都の夜。
しかし、食に関しては仕事より粘り強く？　再度来訪、FUIGO。
初めての店に入るのはなかなか勇気がいるが、何故か勘のようなものが働いて、
是非にと執着する店には余り大きな「外れ」はない。

　　

FUIGO。スペイン語でどんな意味が？　鞴。日本語の鞴ではなく？　
京都の店らしく、外国料理の出入り口に魔よけのお呪い。
店内は薄暗く狭い。しかし、一見さんお断りのようなイカツイ雰囲気は無い。
それに、少々のことではめげずにカウンターに座り、味見をして写真を撮る、
そんな度胸が備わった年齢と体重に！？だけはなっている私なのだ。

たった2度のスペイン、気ままにバルに入ってという旅行は無かった。
大急ぎでマドリッドとトレドだけを駆け抜けた旅行。
いつか行きたいと思っている、乗り継ぎだけで通り過ぎたバルセロナ。
青池保子の『アルカサル-王城-』の舞台になった町、セビリア。
小西章子の『スペイン子連れ留学』で憧れたスペイン。
そんな思いを胸に、つき出しとガリシアビールで一人乾杯。

アルカサルー王城 第13巻 (プリンセスコミックス)

スペイン女王イサベルの栄光と悲劇 (1980年)

口開けというわけではないだろうに、カウンター奥に二人連れだけ。
そのうち予約していたのかテーブルにも客が。
タイル張りのカウンター隅に陣取って、調理や調度、メニューを吟味、
自分の胃袋と懐具合と相談して頭を捻る。
セットのお勧め料理を選ぶのは簡単だ。
しかし、単品を注文してどんなふうに捌いてくるか、
それは賭けの様な客としての楽しみの場だ。

　

メニューに現れている本日のお勧め。仕入れに左右されるお勧め。
それがどんなものか、ワクワクする。
肉と魚介とどちらを主流にしようかと悩んだが、今回はせっかくなので、
季節ものの牡蠣とマテ貝をメインにした料理をそれぞれ頼んだ。
突き出しはもう少しオリーブが欲しかったが、味は申し分ない。
スペイン風のオムレツは、私も真似して昔よく作った。

　　
　

牡蠣のグラタン、ガレットに似た目玉焼きが乗っかったマテ貝。
卵で和える前と会えた後の写真をどうぞ。
鳴門にいた頃は新鮮なマテ貝を自分で料理したが、和風味。
こんな風にして食べるとは思いも拠らなかった。
今日のマテ貝は良品。肉太のしっかりした歯ごたえ。

　　　

料理が進むに連れて、カウンター越しにやり取り。
お互い相手の反応を確かめるように会話をするのも楽しい。
お店の由来、鞴は向こうでもFUIGOと発音するらしい。
というか、スペインからの外来語が日本語に？　単なる偶然？
あちらこちらに鞴が飾られているのは、そのままお店由来の飾りか。

　　　

ロックの氷は溶け難く、ほどよくお酒の味を変化させる。
下手に溶けてあっという間に水っぽくなるシロモノではなかった。
ロック用の氷は別物らしい。なるほど。
ハーブウィスキー味わいは、ほど良く料理の脂っ気と混ざり合った。
・・・若かりし頃病み付きになったズブロッカを思い出す。

美味しいものを食べていると、単純に幸せになる独り者の時と異なり、
家人を連れてきたい、娘にも味わってもらいたいと思う。
こんなふうに思える独り飯は、ある意味苦みの混じった幸せの味だ。
誰かと一緒にいる時間を削り、自分の趣味を優先し、一人で食べ、飲む。
そういうものに気負い無く時間やお金を使う年齢になったと言えば、そう。

　　

いまだにふらふらしていると言われたら、それも否定できないけれど、
独身の頃の海外旅行、巡礼の旅、数々の礼拝、異国のワインや料理。
家族の顔を思い浮かべながら、グラスを傾け料理をつまむ。
リニューアルの終わった文化博物館に来たら、
みんなでここ、FUIGOで食事をしよう。

そんな私の12月はハードな仕事のご褒美から始まる。
今晩はその前哨戦。
明日から一泊二日の家族旅行。

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