Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ポスター天国

  


本日をもって、天保山にあるサントリーミュージアムが閉館した。
16年間、天保山にあってビジュアルな文化を発信していた。
でも、ここは交通の便が今一つ。駐車料金が高く、
子供連れで一日中遊べる海遊館から流れてくる客は当てに出来ず、
実際は孤立無援のまま頑張っていたような気もする。
3Dのシアターを併設していた天保山の美術館。
この不況で打撃を受けて維持するのは難しかったのだろう。

  

  


最後の日、お客さんは凄かった。
私も何点かミュージアムショップで買い物をした。
娘と家人と日本の古いポスターを楽しんだ。
特に戦前のポスターの類は、親子で歴史の話をしながら鑑賞。

  

  


西洋のポスターも懐かしいデザインが多かった。
足が悪く背も低かったロートレックの生い立ちを知ると、
また異なる思いで見ることのできる踊り子たち。
浮き立つような雰囲気で、また世紀の移り変わりを絡め取るような
アールヌーボー。お馴染みのアルフォンス・ミュシャ
様々な作品群に時代を、思い出を重ねながら、
娘がいることに不思議な思いに囚われている。

  

    


この美術館が出来た頃、バブルの終わり、独身だった頃。
今、こうして家族連れで閉館の日に見に来ている、その不思議。
季節だけではなく時代も移ろう。そして人の世も、家族も。
家族を得て、成長を見守り・・・。
人間で言えば16歳と言えば社会人に向けて本格的な勉強や修行に入る年、
結婚も出来る年齢。一人前になる一歩手前の年だというのに、
サントリー天保山は成人することなく幕を引くことになった。

   

  


展望台テラスからの眺めは小雨模様の中、
今日という日を嘆いて泣いているよう。
港の景色も雨にけぶり、何とも言えない。
風向計も兼ねていたモビール、行き来する観光帆船。
この景色はここから再び見ることができない景色だと思うと、
何とも名残惜しい。
何故なら私たち家族にとっては最初で最後になる、この美術館。
娘だけは小学校の遠足で来たらしいが。

  

  


最上階の展望レストランのラストオーダーで昼食、
お世辞にも上等の食事を提供するわけではなく、
夜間のバーを兼ねた簡易レストランだが、眺めは絶品。
円形のガラス窓の写りこみも、観覧車・海遊館など。
外の景色も窓の景色もなかなか趣があって粋な場所だったが、
今日でここもお別れ。

  

  


雨上がりの外ではうっすら虹も。
堀江健一のマーメイド号が強風の中に。
サントリー美術館天保山の外装に映り込む景色の中に、
自分の姿を見出し記念撮影。
2010、何もかも終わりやおしまい、閉園、閉館が相次ぐような、
そんな気がする。職場・職域・職能、世の中全般、
色んな所で「もうお終いだよね」みたいな雰囲気が漂う年末。