Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ルーシー・リー展へ

うららかに見えるのは空の色ばかり。晴れた空、強い風、
日差しは名のみの寒波の晴れ間、凍てつく寒さ。
久しぶりに昼間の淀屋橋、光のルネサンスのコースを歩く。
あの呆れるほどの人通りは跡形もない。
寒々とした人気のない場所に、小さなマルシェが店開き。
図書館横の中之島公園で最近こういう催しがあるのは知っていたが、
来たのは初めてだ。残念ながら真冬に来る我々もどうかと思うが。


しかし、昼前とて14時までのマルシェの殆どはもう店じまい、
もしくは品数少ない状態。ただ、安くて新鮮なのは嬉しい。
これから出かけるのに、野菜をぶら下げていくの波動かと思ったが、
誘惑に勝てず、サラダ用のグリーン大根、紫の花野菜
「ぼうぜ」ではなく「しず」と書かれた寿司を購入。

  


今日のランチはわざわざ家人がメールで知らせてくれた場所、
中之島公会堂と東洋陶磁美術館を横に、川面を行き来する船を見下ろす、
そんな素敵なロケーションが可能なランチ。
予約を入れていなかったので暫く待ったが、待っただけのことはあった。
気さくなおにーさん、冷水のかわりに暖かいハーブティー
寒い中、温まる接待のお店、GARB

  


1週間ぶり家族が揃う。本来はアイススケートと映画の予定。
ところが真横の東洋陶磁美術館を見ていた娘が、
前から興味がある、と言う。現在ルーシー・リー展開催中。
確かに現代的なデザインと色、娘好みのピンクと青、
街中で見かけるチラシやポスターは、なかなか人目を引く。
絵に興味のない家人も、一度も入ったことのない東洋陶磁美術館
入ってみてもいいかなあとのたまう。
珍しいことだ。というよりも、この界隈に勤めて4年余り、
来ようと思えばいつでも来れるはず・・・。

ルーシー・リーの陶磁器たち

ルーシー・リーの陶磁器たち

ルゥーシー・リィー 現代イギリス陶芸家

ルゥーシー・リィー 現代イギリス陶芸家


晴天の霹靂とまでは行かないまでも、二人が興味を示すならば、
私とて見るのはやぶさかではない、と言うよりも、
時間を作ってどうにかならないかと思っていたのはかーちゃんの方。
思い出のある安宅コレクションが鎮座増しますここは、
かーちゃんにとっては大好きな場所の一つなのだ。


初めてこの場所に来た時も、なかなか鬱屈していたらしい私。
今思いだのは、展示品の素晴らしさにな心慰められた思い出だけなのだが。
http://d.hatena.ne.jp/neimu/20081225
海外でも国内でも、ほんの少しだけ陶芸をかじったことのある私は、
焼きもの関係の美術館や展覧会が好きだが、
いつの間にか、お茶もお花もお稽古をやめてしまい、
仕事一辺倒、家事育児の毎日。


度重なる引っ越しで使う器も最小限。機能と壊れにくさだけ優先、
和風の食器、金泥や意匠の凝ったデザインはいずこへ。
ブランド物と称されるお高い食器類は仕舞われたまま、
使わずに過ごして、ワンプレートで洗いものを少なくして、
毎日を乗り切っているものの、心のゆとりは少ない。
盛り付けの美や茶碗の扱いも教えることの出来ないまま、
娘を育ててしまいそうだと思いつつも、自分に心のゆとりがない。


ルーシー・リーの作品は日本人好みの作風なので、受けがいいのか、
予想外の人出に驚いた。こんなに混んでいるとは思わなかった。
人並みに押されながらメインの展示と、国宝級の所蔵品を見て回る。
今回、器は想定内の印象だったが、ボタン類に関しては初めて。
昔の記憶が蘇る。子供の頃、若かりし頃の母が着ていたスーツ、
洋服のボタンはこれに似た凝ったデザインで、
今の洋服からは考えられないくらい装飾性の高いものだった。
きっと海外のこういうデザインの影響で誂えたものか、
当時の流行だったに違いない。


目の前に並べられた初期から円熟期までの様々な作品。
第2次世界大戦を背景に、イギリス社会で認められるまでの、
苦労に苦労を重ねた女性の指先、轆轤から生まれた作品たち。
ざらざらとした肌の焼き物、溶岩のような肌合い。
甘さを抑えた上品なピンク、理知的なしっとりした水色、
落ち着いた黒の器を見ると、昔初めて買ったお薄用の茶碗を思い出す。
あれはどこに仕舞っただろう、もう30年以上前の。


持ち重りのする器と向かい合う、しっとりした時間は、
どこにも見出せない。そういう時間に居住まい正して座る、
器を扱う、香を焚きしめる、茶をたてる、そんな生活に向かい合う、
自分自身をどこにも見出せないままの、だらしない毎日。
生活優先を言い訳に自堕落な毎日。
そういうものを意識させる、色とフォルム。
もしも唇をつけたらどんな風に感じるだろう。
器の縁、ふちを眺めながらその感触を想像する。


そんな時間にはあっという間に過ぎる、土曜の午後。
まだまだ日差しは明るい、風が寒く、冷た過ぎる。
これから予定していた念願の野外のアイススケート場へ。
私たちはまだ知らない、風と光と歓声と、
久しぶりに、それこそ何十年かぶりに履くスケート靴。
その先に何が待っているか、そこで何が起こるか。

ルーシー・リー

ルーシー・リー

  • 作者: トニー・バークス,西マーヤ,荻矢知子
  • 出版社/メーカー: 株式会社ヒュース・テン
  • 発売日: 2006/07/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • クリック: 23回
  • この商品を含むブログ (10件) を見る
季刊炎芸術 101

季刊炎芸術 101