Festina Lente2

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救急搬送 大腿骨骨折

銀盤上の華麗な滑りというわけにはいかないが、
娘は手すり磨きから少しずつ足が動かせるようになって来ていた。
家人は40年ぶり、私は30年ぶり、昔の記憶を頼りに滑っている。
というよりも、おっつかっつ、かろうじて歩いている感じ。
かすかな記憶ではフィギアではなくホッケー靴を履いたはずだが。
いずれにせよ、靴紐が結びにくかったっけ。今もそう。
それに、スキー靴が靴下一枚でも履けるぐらい履き心地が良く、
着脱が簡単になっているのに比べて、スケート靴は進化していないのが分かった。
レンタルシューズだからなのか、とにかく硬く痛くフィット感も無い。


滑っているとただでさえバランスを取りにくい左足が痛み、
リンク中央に座って休憩を取る私に比べて、
こわごわながらも楽しそうな娘と、思いのほか上手に滑っている家人。
スケートリンクに来て小一時間も経ち、私もスケート再開。
おっとっと、ひっくり返りそうになる私に「危なかったねぇ」と
後ろから声を掛けて抜かしていく家人。
ゆっくり来る娘の方を見やって、彼はどこまで先を滑ったやら。


見覚えのある色、上着がリンクの上にある。見間違い? 人違い?
家人が横になっている。こけている、倒れている。
自力では起き上がれないようだ、近くの人が係員を呼んでいる。
家人に声を掛ける。遠くから響いて来て自分の声ではないみたいた。
家人は痛くて起き上がれない様子。足が全く動かせないよう。
誰かの声。「骨が折れているぞ。救急車や」16:20

てきぱき救急急変トレーニングDS ([ゲームソフト])

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救急活動コミュニケーションスキル 何を聞く?何を伝える?

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担架で救護室に運ばれる。誰かの声。
「めちゃくちゃ痛そうだ、あれは。絶対大腿骨折れているぞ」
・・・嫌な予感がする時は大抵当たる。
骨盤にまで及んでいなければいのだが。
家人の骨密度は私よりもずっと低い。
私が平均以上だから比べても、とは思っていたが。
痛がる家人、なかなか担架に乗せられない。
16:50救急車内、搬送先がなかなか見つからない。土曜の夕方。
バイタル正常、交通事故の開放性の複雑骨折でもない患者は、
命の危険、緊急性が少ない患者だから大病院では受け入れない。


骨折はひび? 単純骨折ならばまだいいか? 骨盤? 大腿骨? 
いずれにせよリハビリを兼ねて3ヶ月から半年の療養、
頭の中で自分の乏しい知識を総動員する。
17:00 どこにどうやって連絡? どんな風に話す、いや、まず受診してから。
娘と同乗しながら頭の中がクルクルする。
受け入れ先の病院が見つかり搬送、到着、痛がる家人の洋服を切り裂き、レントゲン室へ。
その間、看護師のインテークを受ける。他の人のいる廊下では。
娘に聞かれないよう別室を依頼。


17:30 見事に折れているレントゲン写真を見ながら説明を受ける。
今後のことを医師と相談。このまま入院、月曜手術となるか。
18:00 経過をあちらこちらに連絡。
18:20 慢性の持病の術前術後の管理の為に、主治医のいる病院へ転院転送の運びとなる。どちらの病院にも迷惑を掛ける形となる。
慌ただしい中、本当に申し訳ない。
待合室の娘に水分補給、昼に買ったお寿司がここで役に立つとは。


18:35 真っ暗になった道路を高速で移動。
19:40 到着。入院手続き後、ER前で待つ。
20:30 整形外科病棟処置室。
21:00 医師の説明を受ける。ある意味、予想通り。
明るくにこやか且つビジネスライクで、やや棘のある言葉に
素直にはなれぬものの、受け入れてもらったことに感謝しつつ、
書類にサインをする。


輸血同意書(おそらく必要ないかもしれないが万が一のため)
血漿分画製剤の使用に関する説明と同意文書。
手術(検査)承諾 申込書。手術(検査)受諾書。
指定病衣申込書などと言うのもある。


説明と了解についての覚書。ここの説明が一番長い。
症状に関して、手術の必要な理由、手術方法の概要。
救急病院で予め説明を受けているので、すんなり入る。
大腿骨転子部骨折・観血的骨接合術という言葉自体は。
ここで初めて聞かされた説明は、具体的な危険性について。
「術中、術後等に予見される危険性」以下延々と。


麻酔によるショック(生命予後の危険性) 出血 感染 
再手術による治療(デブリードマン 人工物抜去)
人工物脱転 人工関節の必要性 骨癒合不全(小転子を含む)
股関節痛の残存 神経障害 金属アレルギー 遅発性感染
肺炎などの悪化、静脈血栓塞栓症(抗凝固薬による予防の必要性と出血合併症の可能性)
複合性局所疼痛症候群 その他予期せぬ内科的合併症が起こりうる


予後の見込み 上記合併症がなければ良好。
「何か質問はありませんか」と言われても、すぐに何を訊けばいいのか。
今まで自分が見聞きして来た知識を総動員して、説明と繋ぎ合わせて考えてみたとしても、
所詮「まな板上の鯉」なのでどうすることも出来ない。
ひたすら最も適切な処置をお願いすることしか出来ない。


手術は月曜日の何時になるか分からない。おそらく17時以降だそう。
緻密に管理・予定されたスケジュールの中に割り込む形になる、
救急搬送の患者としては、仕方のないことだ。
開放性の骨折ではなくて良かった。少なくとも感染の危険は減る。
痛みにめげている家人を励まし病室に残して、娘と帰宅。23時半。
夕方から夜に掛けて、世界が一変。好事魔多しの土曜日。

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