Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

スローステップを私に

如月はその重ね着を脱ぎ捨てるのが当たり前という顔をして、
弥生におっとり刀で乗り込み、我が物顔に振舞う。
もうずっとここに居座っているような顔で、
年度末の慌ただしさを春の嵐のように連れて来る。
そう、月足らずの早産のような如月が逃げ去ってしまうと、
前髪を掴む間もなく通り過ぎるチャンスの神様のように、
弥生が駆け抜けて去っていく。
そんな季節がやって来た。


お陰で私はきりきり舞いをしている。
山のような書類に囲まれて、毎日残業を3時間。
自分だけが要領が悪いのか、やり方が変えられないのか、
折り合いを付けられないまま、てきぱきこなすことが出来ない、
事務処理能力の落ち込みは老眼のせい?
聞き間違いはなくても読み間違いは沢山。
この焦燥感。
何を食べても美味しくない。


お願い。今の私は自分のベッドで眠る余裕もない。
お願い、ゆっくり湯浴みをさせて。
早足でバス停に駆けていく、そんな生活がしたいんじゃない。
時間どおりにバス停についても、必ずバスは遅れてくる。
だからゆっくり歩いても間に合うのかもしれないのに、
その日に限って時間どおりに来るかもしれないバスのために、
私は歩みを遅くすることは出来ない。

ラグタイム・ミュージック集

ラグタイム・ミュージック集



ゆっくり歩いていきたいのに、
ゆっくり歩くことが体を甘やかしていることだという。
大股でゆっくり歩くことに憧れているのに、
実際は長衣の裾を翻して、速歩しているように歩き回っている。
気忙しいのはあれもこれも締め切りが重なっているから。
今年から余計な会議が二つも三つも増えたから。
会議のための会議、総括のための総括、
振り返りという名のアリバイ作りばかりが増えて、
何が嬉しいのか、全く以て小市民の私には、
管理職の管理の手腕が何を絡め取ろうとしているのか、分かりかねる。



お願いだからスローステップで、花の季節が始まる弥生を楽しませて。
一歩一歩ゆっくりと結果を出す話がしたい。
紙面にまとめて時間のある時に読んで置いてくださいなんていう、
そんな会議はしなくても書類さえ回せばしまい。
読む人は読む。読まない人は決して読まない。
なのに、一堂に会して会議を持つことが
共通理解を深めることだと信じようとしている茶番。
それは、ジェスチャー。それは詭弁。



その会議の準備に追われて、おまけに今まで通りの書類に追われて、
今まで以上の点検に追われて、追われっぱなしの私。
物事の進み具合の後ろ姿ばかりを見て、追いかけているばかり。
自分のペースをいうものを見失ってしまったように。
私はこんなステップを踏めない、手続きは。
こんなやり方を踏襲できない、追随できない、承認できない。
内々尽くしになってしまう前に、ゆっくり考えさせて欲しい。
走りながら考える、考えるよりも前に追い立てられる、
そんな生活に雛飾りもなく、お出かけもなく、
御馳走もない、弥生の始まりに。



私が憧れるのはスローステップな生活。
日の出ている明るいうちに、周りの景色を楽しみながら、
バス停まで歩いて、時間どおりのバスに乗り、
夕食の支度をする時間がたっぷりある事。
少々手の込んだものを週末に作り、娘の弾くピアノを聴き、
友達と電話で話す夕べがあり、図書館で本を選ぶ宵。
買ったDVDやCDを楽しむことが出来る、そんな夕食後。


走り回るのではない、何もかも短い時間内に、
同時に終わらせないと、こなさないといけない日常ではなく、
もっと立ち止まって、方向転換が出来る余裕のある、
そんなステップを踏みたいと思っているだけ、
そう願っているだけなのに。

スローライフでいこう―ゆったり暮らす8つの方法 (ハヤカワ文庫NF)

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マーラー:交響曲第2番「復活」

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