Festina Lente2

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当たり前の日常

実に当たり前の日常を過ごしている。
地震津波の災害等に触れた内容がいつもと異なる
職場の朝礼が終わったあと、デスクに戻ろうとしたら
上司に呼び止められ、どきっ。
また今日も何か新しい書類の提出を求められるのかと思えば、
義理堅くもホワイトデーのお返しを頂いた。
ある意味、驚愕・恐縮である。
再び廊下に出て階段を駆け上がろうとしたら、呼び止められ、
更に上の上司からお返しを頂いた。全くの想定外。
そしてデスクの上にも相方からのお返しが。


私は結婚以来、義理チョコとは縁がない。(笑)
今回、仕事人生を揺るがすような事件が職場で起き、
みんな憔悴しきっていた矢先でもあったので、
ささやかななる激励の意味合いも込めて、贈った。
何しろ疲れているときには甘いもの、気は心。
こちとらも家人が退院した翌日でもあり、
嬉しいような嬉しくないような微妙な日であった。
何しろリハビリもままならぬまま、本当にこれでいいのかの退院。
手放しで喜ぶわけには行かない慌ただしい昨日の今日だったから。


家と職場、押し寄せる内外の憂いごと多く、
一瞬たりとも帰宅時の気分転換になればと贈ったのだが、
今日がホワイトデーであることなぞ、当の私は忘れていた。
提出しなければならない書類の締め切りが明日だというのに、
出来ていないのをどのようにまとめればいいのか、
今日の会議でどのように発言しなければならないか、
そんなことで朝から頭はいっぱい。
ごくごく当たり前の日常。
その中に、連絡の全く付かない親族への思いが、
友人・知り合い、旅した土地への思いが通奏低音のように流れている。


殺伐とした予定をこなし、インスタントダイエットスープの昼、
紛糾こそしないまでも殺伐とした会議、一通り事務仕事を終えると、
バス停に駆けつけ、相も変わらず遅れてくるバスに苛立ち、
スイミングを終えた娘がちゃんと髪を乾かしただろうか、
時間通りに歯医者さんに間に合っているだろうか等と
気を揉みながら待ち合わせ場所にもなっている
娘の待つ矯正歯科に駆けつければ、夜も19時を過ぎている。
都会の田舎、田舎の都会は夜の闇の中に、ファーストフードと
スーパーマーケットだけが明るい。


当たり前の日常がここにある。
付け焼き刃的なことはメッキがはがれる。
故にひたすら週明けからは日々の営みを粛々と続ける。
誰も私の両親の故郷がどこかも知らない。
私のルーツは職場の人には関係ない。
娘にとっても私にとっても大事なのは、何か。
不必要な動揺をせずに、老いた親を祖父母を先に寝かせ、
自分たちのするべきことを、残業を、宿題をすること。

たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する

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日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

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昨日、このような記事が出ていて話題になっているようだが、
この手の内容はあちらこちらで話されているだろう。
家人も似たようなことをメールしてきた。
誰もが考えることではあるが、事実を受け入れて納得した、
戦中派の老父は既にこのように生活しており、
もとより認知症の老母はこの枠組みの中で自分を守っている。


無関係なように見えて、大きな全体の当たり前の日常を送ること。
それが、傷み悲しみ病む一部を抱えながらも日々を生きる、
強さであり、労りであり、基本であることを、
実感せざるを得ない。
無関係なのではない。深く関係しているからこそ、
係わらざるを得ないからこそ、この内田樹の記事にあるように、
――「寛容」、「臨機応変」、「専門家への委託」を、
被災の現場から遠く離れているものとして
心がけたい――という考えを大切にしたい。

津波災害――減災社会を築く (岩波新書)

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