Festina Lente2

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紙面に見る景色

昨日の大阪府の高校入試の問題が朝刊に載っている。
でも、全く読めない。字が小さ過ぎて老眼鏡がないと。
職場でも家でも、読めない字が増えてきて、
読み間違いが出てきてしまう。
昔、年よりはどうして眼鏡をずらしているのか不思議だったけれど、
老眼鏡に掛け換える暇があったら、眼鏡をずらして見た方が早い。


いつかこれを娘が解くのか、そう思って読みたいけれど、
この読まれてたまるかといわんばかりの小さい字は、
まるで親の私を「お呼びじゃないよ」と拒否しているよう。
限られた紙面に内容を納めるためとはいえ、
若い子供の目からも読みにくいに違いない入試問題の紙面。
みんな試験結果が心配で見るだろうか、いや、見ないだろう。
模範解答だけ、確かめるに違いない。


問題文の中の景色は、失われていく美しい日本の棚田。
「棚田」なんていう言葉を今の子は知っている? 読める?
砂防なんて言葉、分かる? ざっくり目を通して思う。
娘が15歳になった頃には、どれくらい分かるだろうか。
どんなふうに読み、解くだろうか。
古文の問題は例年に比べて私好み。和歌の問題。
最後の文章の出典、森本哲郎? またずいぶん古い。
自分が中高生の頃の流行だったような。
出題者はきっと私と同年代に違いない。

ことばへの旅〈上〉 (PHP文庫)

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疲れている状態、今がどういう状態なのか。
疲れ、それが有るのか無いのか、
現状今日を把握する中で、その成分を吟味するよりも、
有る無しを前提にする。
ある「疲労」?
ない「疲労」? 
砂漠の民は、日本人と考え方が違う。


限りない砂漠の向こうで何が有るか、無いか。
その基準で物事を考える。
八百万の神様のいる日本の豊穣の景色ではなく、
何も無い砂漠の中で、有る無しの是非。
考え方の差異は生まれ育った環境に左右される。
砂漠の思考・森林の思考。いや、これは森本哲郎じゃなかった。
でも、この文章は読んだことがある。
どこでだったか?

森林の思考・砂漠の思考 (NHKブックス 312)

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日本十六景 (PHP文庫)

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そんなことを思いながら、国語の問題だけ振り返る朝。
えーと、大阪府は作文もあったはず。
随分配点の高い作文。子供心にもどうやって採点するんだろうと、
不思議に思っていた作文、私たちの御題は「月」だった。
高校入学後、面白みのない作文ばかりだったと毒づかれたので、
記憶に残っている受験の頃の思い出が蘇る。
今年は「自分の好きな身近な景色とその理由」?
さてさて、娘はどんな景色を思い出すだろう。


紙面を追うことは出来ない。数学は図形が、社会も理科も英語も。
読む暇なく仕事に出かける。
あと、4年後、いや、3年後、
娘はこのレベルの問題を解く15歳に成長しているはず、なのか。
ああ、娘はそんな年齢になっているはずなのか。
どんどん身も心も成長して、かーちゃんの身長を追い越し、
新しい世界へと歩き出している青春真っ只中。
そんな未来を、高校入試の紙面を見ながら想像する。
娘の未来を。
いつか娘が解くかもしれない、問題だらけの人生。


娘が見る景色の中に自分がいない時のことまで想像する。
この非常時ともいえる日本の今の中で、
確かな明日を地道に引き寄せるために、
かーちゃんは生活費を稼ぎに出かける。
ぎりぎりまで仕事、一人でかき込む様に食事、
ボランティアに顔を出す。
娘と私の好きな作家の新刊(漫画だけれど)本を買う。


帰宅。ブルースクリーンが出なくなった画面に一安心。
届いたメールの中に、「連絡遅れましたが我が家族は全員無事です。
母も兄弟家族も全員無事です。」を見つける。
娘の年齢の時に知り合った、仙台在住の人からのメール。
震災後、初めて届いた直接の便り。


心の中の景色に灯がともる。ほっとする。
解けなかった問題が解けたような、そんな気になる。

ここではない★どこか 春の小川 (Flowersコミックス)

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ちはやふる(12) (BE LOVE KC)

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