Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

星空コンサート三度(みたび)

3年ぶりの大阪フィル、大阪城西ノ丸庭園での星空コンサート。
娘が小学校3年の時以来だ。確か、このコンサートの後で
しばらくしてから連休時に憩室炎で入院してしまった。
あの頃も仕事のせいで体調は思わしくなく、ばてばてだった。
その後、雨天・荒天のせいで行かなかった星空コンサート。
今年は絶対に行かねばならないと思っていた。
何故ならば朝比奈さん亡き後の大阪フィルを、
大阪の音楽シーンを盛り立ててくれていた名指揮者、
大植英次氏がこの場でタクトを振るのは恐らく最後だろうと。


  


昨日の雨を吸った芝生は少々柔らか過ぎるくらいだが、
今年はちゃんとビニールシート持参で自衛。
毎年来ている常連客と思しき人々は早くから場所を取り、
ゲネプロはもちろん、他の吹奏楽の演奏もしっかり聞いている。
BBQこそしていないものの、宴会気分でビールやワインを片手に
つまみを平らげて既にみなさん盛り上がっている。
何時間も前から本命を待つのに、寒さ対策もあって
着込む以外にアルコールは欠かせない?
残念ながら車を駅に置いている私は禁酒。残念。


   


天満橋で杖の家人と娘と待ち合わせ、えっちらおっちら西ノ丸へ。
小中学生は無料、大人1000円という格安のコンサートだ。
昨日休日出勤の時はコンサートを諦めていたのだが、幸い天気は雨、
順延になってくれたお陰でこうやって来ることが出来た。
娘は家人の所へ行っていたので、久しぶりに大阪で待ち合わせ。
家族でコンサートを楽しむ夕べ、まずは腹ごしらえから。


   



関西の映画館同様、見る前に食べる大阪。聞く前に食べる大阪。
寿司や唐揚げ、ロールサンドに骨煎餅、プチトマトやイチゴ、
口直しやデザートも取り揃えて、お茶にチューハイ、野菜ジュース、
十分胃の腑を暖めてから少しずつ冷え込んでくる夕暮れ時、
コンサートに備えて準備万端。
憧れの大植さん登場! と思いきや、どうしたの?
仕事のし過ぎ? 風邪? 無理しているんじゃないの?
物凄いガラガラ声の挨拶。・・・今年は特に酷い声では?


   


まず、一番最初にユーモラスな口調でスポンサーの紹介と感謝。
(それでなくても音楽はお金の掛かる世界)
何しろこれだけ大掛かりな野外コンサート。
以前の様に壇上を大写しにする、大画面モニターが無いのが寂しい。
そして、忘れてはならない。今年は未曾有の大震災、
国としての非常時ともいえるこの時期、関西が元気でなくてはと
世間で言われつつもこの生活を享受していていいのか、
後ろめたささえ感じる日々。犠牲者のために黙祷、そして、
第1曲目。厳かに、エルガーエニグマ変奏曲』より「ニムロド」。
そして2曲目、ドヴォルザーク/スラヴ舞曲 第8番 ト長調


   


3曲目以降、大阪との関連を述べつつ、姉妹都市の紹介、
ブラームスの故郷ハンブルグも大阪の姉妹都市らしい)
日本に震災時有効の手を差し伸べたアメリカへの感謝を込めてか、
過去の交友を振り返りつつなのか、大植さん、
日本語よりも英語が達者? スカイスクレーパーの訳、
「摩天楼」が出て来なくて「魔宮殿」、四苦八苦の場面も。
それじゃあ、インディ・ジョーンズの冒険だってばさ。
というわけで、やっと辿り付く曲は少しロマンチック。
J.コリー、「想い出のサンフランシスコ」。



3曲目、例年若き音楽家を紹介するコーナー。
今年は中学生のヴァイオリニスト、林 周雅君を迎えて、
ブラームスのヴァイオリン協奏曲より 第3楽章♪
家人も賞賛、あの難しい曲を堂々と弾きこなす才。
ヒステリックにならぬ高音部の澄んだ音色、
柔らかく丁寧に紡がれる低音部とリズム、
複数の弦を同時に弾くテクニックにぶれも無く、
若き体力でさっくり仕上げた感。期待される将来。


 


思い思いの姿で寛ぐ聴衆を見下ろす大阪城
次第に夕闇も濃くなって来た。みんなが期待する今年の装い。
当初はジャック・スパロゥを予定していたらしい。
例年話題になるコスプレ? を披露する大植氏。
今年は地球を救うをテーマに、『スーパーマン』のマント姿で登場。
(さすがにタイツはなし)今年最後の噂はやはり本当なのかと、
このサービス精神に拍手。映画「スーパーマン II」のエピソード。
敵から水爆を奪い、宇宙で爆発させ地球の危機を救う。
原発に揺れる日本で、平和への願いをこめての選曲。


   


そして滅多に聞くことのできないCoplandの名曲。
リンカーンの肖像』の朗読の部分のを、
元アナウンサーの美声を披露する大阪市長に託し、
星空コンサートは冴え冴えと燃え上がる。
知性を疑う知事とは裏腹に、面目躍如の感がある。
朗読と音楽の一体となった妙技に聞きほれる。



財政難を理由に文化施設や教育予算を著しく削減し、
地震液状化現象でいつ倒壊してもおかしくない場所に、
府庁を移転すると税金の無駄遣いを辞さず、
府民の従僕である前に自己顕示欲に忠実、
大阪にカジノを招いてお金を落とせばいい等、
福祉と教育を無視して一部の特権階級にだけ金をばら撒く、
話題集めと人心を惑わすことに長けているやからと異なり、
大きな諸問題を抱えながらも、冷静に知的に精力的にアピールする
大阪市長の真髄を発揮した瞬間。
リンカーンの演説の言葉は胸に沁みた。


   


一同しんみりと感動したところで、フィナーレに向かって
定番、チャイコフスキー序曲「1812年」。
(さすがに疲れて来たのか、大植さんちょっと元気が・・・)
高校、大学の吹奏学部員も舞台の下にずらりと並び大迫力。
これで終わりかと思いきや、まだまだ。
スーザ/星条旗よ永遠なれ。
ロッシーニ/「ウィリアム・テル」序曲。
そして、みんなで合唱、「上を向いて歩こう」と「ふるさと」。


   


ふるさと日本の復興は始まったばかり。まだまだ先は遠い。
福島の原発問題、日本有数の米どころと漁港を失った
第1次産業への痛手を思うと、人間の傲慢さに対する
自然の無慈悲さは計り知れない気もする。
しかし、私たちの国、ふるさとを守るために、上を向いて歩こう
肩を落とし下ばかり向いてはいられない。
そんな思いで、義援金募金箱に志を入れて帰宅。
3年ぶり星空コンサートの夜。

エルガー / エニグマ (謎)変奏曲作品36

エルガー / エニグマ (謎)変奏曲作品36

エイブラハム・リンカーンの肖像

エイブラハム・リンカーンの肖像

R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」