地の曇天はいずこ
心ここにあらず、仕事仕事仕事。
その毎日を、あくせくした毎日を空と地面に挟まれて、
ふとした拍子に正気に戻る、そんな瞬間が恋しい季節。
まだこの地域の田んぼには水が入らない。
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5月末に台風を求めるように徳島へ向かい、
台風に追われるように帰阪したのだが、
阿南はとっくに水田に水が入り、稲もそこそこ伸びていた。
早場米の地域だからそうなのだが、娘に地面に広がる青空を見せたかった。
台風の雨の中ではそれも叶わぬ。
朝、いつの間にか赤芽がしわの赤い色が緑色に大人びて、
桜も花桃も葉っぱだらけとなり、地面の雑草が掘り起こされ、
ツツジがサツキとなり、ニセアカシアの白い花が雨にくたされ、
黄金色の金エニシダが藪から伸びて揺れ、気づけば野バラの季節も、
紫陽花が主役の季節に取って代わり、いやいや、花菖蒲もしっかり咲き。
たんぼの季節―JAPAN The Ancient Rice Fields
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季節は巡っているのだけれど、朝の気ぜわしいわずかな時間に、
窓の外を見遣る余裕もあらばこそ。実家の庭も道も中庭も、
本来ならば春から夏へ、そこここと景色を変えて見応えのある時期なのに、
バラの花を愛でることもなく、いつの間にか刈り取られた菜の花、
種ばかりになってドライフラワーと化している路地裏。
あちらこちらの生け垣や、伸び放題に伸びてきた葛の葉の大きさ、茎の太さ、
いつの間にか堅くて食べられなくなった三つ葉、
もうすぐ新鮮な物が手に入るかもしれないと期待させてくれている、茗荷。
花も緑もハーブも木々の緑も、心にささやかな刺激を与えてくれるけれど・・・。
私が見たいのは、私が見たいのは・・・。
ただただ一面に広がる田んぼに水が入り、空を映す大画面となるあの瞬間。
まだごくごく小さい田植えしたばかりの、小さな苗が風にそよぐともなく、
頼りなげに揺れている、天を映し込んだ田んぼの広がる景色。
空に谺する若き稲魂。今年の収穫を約束するかのようにさざ波を立てる、
瑞々しい水面、田んぼの田んぼらしい景色の始まり。
水が引かれた、その初々しい稲田の始まり。
その景色が見たい。
心広がるように、地面が水面になる一瞬を。
梅雨の雨を恵みとして、曇天をも映し込み、
若き嬰児を抱いて広がる田んぼの景色を。
地の曇天、水の平面。
ただただゆかしき、この季節の一瞬の景色よ。
→http://d.hatena.ne.jp/neimu/20070605
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