Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

高台寺と百鬼夜行展


高台寺、知る人ぞ知るお寺、
今年は大河ドラマ『江』で有名になった、秀吉の正室、おね(ねね)が
秀吉没後、落飾して住んだ「終の棲家」の寺だ。
豊臣家の盛衰を見守った女丈夫とも言える彼女の住まいは、確かに高台。
高台寺と言われるだけに山に登るのと同じ、かなりの運動量を必要とする参詣。


  


その私たちを迎えてくれたのは、巨大な白い観音像。
京都に疎い私たちは知らなかったが、霊山護国神社の観音像だった。
歴女ならぬ、志士ブームの頃は参詣する人も多かったろう。
それを横目にどう見ても、昨年の朝ドラ『ゲゲゲの女房』の影響を受けているんじゃないかと
誤解されそうな漫画タッチの妖怪達が提灯に収まっている。


   


高台寺に来たのは他でもない。高台寺展と称するポスター、
実は高台寺に属する圓徳院での百鬼夜行展を見るため。
娘が行きたいと願うものをかーちゃんが拒むはずもなく、
かーちゃんも高台寺、初体験。無理にリハビリ中の家人を誘わず良かった。
高台寺は正式には「鷲峰山 高台寺」。まあ、どの寺も正式には山が付くが、
正真正銘紛れもない山の上にあり、バス停から歩いて行くと結構な上り坂。
有名な「秀吉とねね」の寺、高台寺絵巻で知られる寺は、その庭も美しい。

 
  
   


幸い俄雨の小雨模様で、観光客の足も途切れ気味。
これに乗じてゆっくりと見学、散策。手入れの行き届いた空間は、
日本人を落ち着かせる空間の美、余白の美に満ちていて、
暑い夏を涼しく過ごせるような、そんな工夫に満ちている。
「日本の家は夏をむねとすべし」と古来言われてきたが、
日本家屋の広々とした間取りと世界に、ほっと一息付く庭園前。

 
  
  


あれに見えるは木造の回廊。何とも優美な雰囲気に見とれる。
残念ながら通行禁止。傷まないようにするためには仕方がない。
池の上に架かる観月台、さすがに見事な建築。
空の月を愛で、池に宿る月を愛で。

  
  
   


もう一つの池は臥龍池と上に架かる臥龍廊。ねねの御霊屋へ、
廊下が延びているが、ここももちろん通れない。
高台の上にある御霊屋の蒔絵が美しい。いわゆる高台寺蒔絵。
そして、花いかだの文様が何とも言えぬ雰囲気を醸し出す。
尼姿なれど、調度の品々が人柄を偲ばせるとはこのことで。

 
  
  


内部撮影は遠慮したが、外の景色なら撮っても構うまい。
美しく彩色を施された建物は、さぞや当時豪華絢爛と輝いていただろう。
瓦一つ取っても風格、周囲の侘び寂びの佇まい、なんともいえぬ。
山頂近くの茶室は千利休の意匠による傘亭、時雨亭とか。
じっくりというわけでもなく普通に眺めたのだが、時間を食った。
午前中殆ど費やし、目的の百鬼夜行展の圓徳院までなかなか辿り着けない。

 
    
  


竹林を下って雲居庵で休憩、「花意竹情」の軸と滝の絵も涼しげな団扇を眺め一服。
学問の神様をまつる高台寺天満宮高台寺掌美術館
扇子の展示などを見ているうちに、どんどん予定時間がずれ込んでいく。


    
  


そもそも、『ぬらりひょんの孫』なる漫画とアニメに心酔している娘。
現世で報われる事なきエネルギーは虚構に向かうのは今も昔も同じ。
リア充や妄想は、思春期に「健全と不健全」の間を幾度となく行き来する。
妖怪Tシャツを着て登校も辞さぬという娘だが、自分の小遣いで買うこともなく、
(本ほど強烈に押し通して買おうとはしなかった)


    
  


百鬼夜行展目当ての子どもの参詣客も、それなりに多い。
高台寺と圓徳院、いずれも幽霊画で有名な円山応挙の絵が何枚かあった。
なのに子ども達が歓声を上げて注目、触りたがったのは円徳院の畳の上に、
昔ながらの木の台の上に置かれた、涼しげな一品。どかんと大きな氷。
昔風のクーラーは、目から楽しむ世界。かーちゃんも実物は初めて見る。
氷屋さんが活躍している、今日の町、今日の寺院の佇まい。


    
  


そして伝統行事がさりげなく息づく今日の町。旧暦の七夕飾り。
裁縫(織物)が上手になりますようにと織女に願いを託す、五色の糸。
お坊様が書いた子どもの絵のあどけなさ、禅宗では良く円(○)を書くが、
その円のように愛らしい幼児の顔がお軸になっている。
圓徳院でもお茶席はあったが、もう昼をだいぶ過ぎている。
名残惜しく席を立ち、遅めのランチタイムと相成った。

圓徳院住職がつづる高台寺物語 (日本の古寺)

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新版 古寺巡礼京都〈37〉高台寺

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