Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

坂道から「百獣の楽園」へ

昨日16日の京都、母と娘のそぞろ歩き、後編。
(写真は大きくなります)


円徳院を出て昼ご飯の場所を探すが、どうにもこうにも見当たらない。
その間にちょっと裏通りに入り込むと、表通りの喧噪とは別世界。
訳知りのお金に余裕のある人が入るお店、隠れた名店、秘密のスポット、
そんな雰囲気の民家と見まごうお店がそこここに。
そして、京のしきたりを守った民俗学的御守り、発見。
魔除け厄除けの蘇民将来、茅(ちがや)の飾り物。


  


さて、観光地の昼ご飯は高くてまずいものと決まっている。
ただし、世界に冠たる日本の観光地、古都京都の面目を掛けて、
見た目がまずく味もまずくでは沽券に関わる、そんな風情のお店が並ぶ。
一見さんを相手にしないのが基本の老舗ではなく、
一見さんだからこそ、口コミが怖いのである程度の品質を保つ。
観光の質も、お食事の味も。ただし、お値段高め。
ビジネス街のランチとは大違い。
金銭感覚に少々疎い娘も、さすがにこの相場には目が点。
「大阪よりずっと高い」・・・当たり前です。


    
  


ぶっかけうどんの上に載せる薬味、野菜の盛りつけの芸術的というか、
見た目でごまかしたというか、ヘルシー、ローカロリー。お高め。
背に腹は代えられずで近場の店に入った後で後悔。
清水さんまで登る坂の中腹より上には、もう少し安くてお手頃な、
おばんざいバイキングのような店も。
リベンジしたいと悔しがる娘。はいはい、次回、清水へお参りする時にね。

  



少しばかり物色して歩く店、季節のあしらい、何とも言えずゆかしい佇まい。
もっともっと眺めていたいちょっとした和風雑貨やお土産物の数々。
そういうものに後ろ髪を引かれる思いで、歩く坂道。
振り返るとずいぶん登って来たなあ。京都東山山麓二寧坂(二年坂)を。
もっとしっとり歩くことが出来ればいいのだけれど、お盆、今宵は大文字。
混雑は致し方ない。


    
    


ずっとずっと昔、こんなふうに清水に行く道を歩いたはずなのに、
もう殆ど記憶にない。親と歩いたのか、小学校からの遠足だったのか。
せめて娘は、かーちゃんと歩いたなあ、夏の暑い日、清水さんへの坂道。
そんなふうに思いだしてくれるだろうか。
二人でせめてもの思い出に、和風のシュシュを買う。
清水寺のライトアップは来年以降の楽しみに。大文字も。


  


五条に下って降りてバスを捕まえ七条へ。本日最終目的地。
京都国立博物館。娘と私のお気に入りの場所でもある。
常設館は工事中のため見られないものの、夏休みの特別展示は子ども向け。
分かり易いテーマで美術品・民芸品に興味を持って貰おうという、
展示の工夫が見られる楽しいものだった。
そう、題して特別展観「百獣の楽園―美術にすむ動物たち―」



どんな角度から美術品を見るか、誰からも教わったことはない。
美学の授業は音楽が中心で、手探りで好みの品々を味わって来た。
最近は上から目線の展示ではなく、それぞれ工夫を凝らし学芸員の手間暇をかけ、
子どもにも大人にもわかって貰おうという気迫に満ちた企画や展示が増えてきた。
四半世紀前の作品さえ揃えて並べて来歴さえ記しておけばいいという、
消極的な展示ではなく意図的な読み取り、鑑賞を促す展示が増えた。



お陰で物事の切り口、異なる角度から鑑賞し直す楽しみを知り、
娘と一緒に様々な芸術作品に接することが出来る。
一度見たことがあるから、知っているからと、そこで引いてはならない。
新しい知見、今まで知らなかった楽しみ、未知の世界が広がっている。
それでなくても、私が興味を示さないものでじっくり眺め、
それなりに解説を一生懸命読んでいる娘の姿を見ると、
親としては胸が熱くなる思い。(親ばかですね)
作品の詳しい説明はこちら



十二支の中に猫がいないのは何故? 想像上の動物、実際のものとの比較。
お馴染みの身近な動物、小さなものから大きなものへ、絵画、彫刻、様々な意匠。
生きて動く動物ばかりが集まる動物園とは異なるものの、これはこれで楽しい。
知の地平線、思考の枠組み、観点、描写、色使い、どれを取っても発見や驚き、
ちょっとしたユーモア、当時の思い込み、考え、思想、世相。
様々なものが盛り込まれて、歴史と文化という大きな背景の中にある。
それを垣間見る楽しみを、ずっと持っていて欲しい。
日々の生活の中で見つけるもよし、こうやって展覧会に来るもよし。


大文字に向かって賑わう京の町を、大阪に向かって戻る。
お祭りは逃げない。来年のライトアップも楽しみに。
坂道を元気に歩けるようになったとーちゃんと一緒に、また来よう。
母と娘のデートは、またどこかで、楽しもう、ね。

おひとり京都の愉しみ (光文社新書)

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