Festina Lente2

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娘は12歳

用意しておいたプレゼントを娘の勉強机の上に置く。
今日は出張で早く帰れない。
平日なのでとーちゃんもいない。
誕生会は週末に引き延ばされている。
土曜日が運動会なので、前倒しにするのではなく、
例年のように行事を終えてから、
打ち上げも兼ねて誕生日のお食事会の予定。
だから、今日は何もない。ちょっと寂しい、12歳の誕生日。


マリアンヌの夢 (岩波少年文庫)

マリアンヌの夢 (岩波少年文庫)

まぼろしの白馬 (岩波少年文庫)

まぼろしの白馬 (岩波少年文庫)


前から出張があるとは言い聞かせているものの、
どうしてもこの日から動かせなかったかと心は痛む。
朝、寝ぼけ眼で起きてくる娘はプレゼントになかなか気付かない。
そう、今年はお洋服だの何だのと盛り沢山ではない。
見る人から見たら実に素っ気ないもの。
読んで貰いたい本が数冊と、ひこにゃんの付いたポロシャツ。
でも、その本の中にはかーちゃんが読んで貰いたいものも含めて、
娘が今はまっている「夏目友人帳」に関するものを入れておいた。
メッセージカードは啄木が猫を詠みこんだだもの。



後で気付いた娘が笑って言う。「猫尽くしだね」
にゃんこ先生と呼ばれるキャラクターが活躍しているのだが、
私たちの世代には「にゃんこ先生」と呼ばれるキャラクターは別にいる。
その辺がちょっと違うけれど、別の漫画・アニメなのだから仕方がない。
ちょっと浮世離れした主人公という点では同じかも知れないが。



そして、星座が煌めく切手。ピーター・ラビットが描かれている切手。
昨今、切手を使って手紙を書くなどということは無くくなったけれど、
小学生時代に切手収集をしていた名残で、ついついシート買いしてしまう。
記念切手を見ると欲しくなって大人買いしてしまう。
星や星座の話が大好きだったのは娘が低学年の頃だったが、
うさぎ年生まれの娘にかこつけて買ったピーター・ラビットの切手と
抱き合わせでプレゼント。記念品、記念品。


  


実は昨日のうちにおねだりされて、買っているものは傘。
何でも骨の数が多い傘に憧れていて、和風の雰囲気にいいのだとか。
最近の流行なのか、コンパクトな折りたたみ傘ではなく、
24本も骨のある傘が流行っているらしい。
傘らしい出っ張りよりも限りなく円に近いようなフォルム、
それが人気らしいのだが、本当にそうなのか。
ただし、そういうものはそれなりにお高くて、
娘が選んできたのはお安めの16本。赤い布地に黒い骨。
何となく番傘テイストの懐かしい感じ。


娘が憧れる和風、和柄。京都が好きな娘らしい。
かーちゃんの好みではなく、娘の好み。
かーちゃんは6年生の頃、何が好きだったのか覚えていない。
自分の母親に手紙を貰ったと思うのだが、内容も覚えていない。
年を取るとこうなるものなのかと情けない思いではあるが、
娘が重ねる誕生日で心に残るのは、親の思い込みでは決められない。
毎年手作りのケーキを作る家、家族が集まってお食事会をする家、
色んな家の様子をブログで見たり聞いたり。
真似をしたいなあと思うこともあれば、絶対出来ないと思うことも多々。
いいんだ、うちはこれで。
そう思うしかない。いいんだ、うちはうち。
今年は今年。こうなってしまった。平日の誕生日。
ホールケーキにネームプレートも無い誕生日。

Happy Birthday

Happy Birthday


そんな娘が夜、21時前に出張から帰宅した私が買ってきた、
カットケーキを食べながら、元気に学校の話をしてくれる。
これが幸せでなくて何だろう。
学校での出来事をあれこれ話してくれる娘の存在。


おまけに、BSのTVシネマで始まった『デルス・ウザーラ
オープニングを見て「BSで見るのは3回目だなあ」と呟く私の隣で娘は言った。
「これ知っている、2年か3年生ぐらいのとき見た。
 新しい銃を貰ったばかりに強盗に襲われて死んじゃった人の話だよね。」
!!! 驚愕! それはこの物語のラストシーンだ。
冒頭は森の中にあったはずのかつての友、デルスの墓が開発の波でわからなくなり、
呆然とする男の回想から始まっているのだが、そのシーンだけで、
話の終わりの部分を思い出すとは!
調べてみると確かに3年前、娘が3年生の時の記事がある。
(映画の話はこちら→http://d.hatena.ne.jp/neimu/20081206


デルス・ウザーラ』は哀しい話だ。強い感動よりも哀しい。
自然と共に生き、自然の中で生き抜いた男が、自然と共に墓まで失う。
彼の生き様は、卓越した能力は老いと共に失われ、
街中で暮らすことも出来ず、餞別に貰った最新式の銃さえも、
結果的には彼の命を奪うことになる。
狩りに行き狩りに死す運命にあったとはいえ、想定外の末路。
彼の美しい心、優しく逞しく哀しい人生。
デルス・ウザーラと行動を共にしたロシア人の目を通して描かれた、
失われていく世界、自然、人間、人の心。
年齢を重ねて見れば見るほど、しみじみさせられるこの映画を、
娘が覚えていてすぐに口に出すとは・・・。
かーちゃんが12年前に産んだ赤ちゃんは、こんな娘になったんだねえ。


半世紀近い年の差の娘、干支は一巡。
お誕生日おめでとう。
これからの君の成長を、かーちゃんは楽しみに頑張る。
これからの君の成長を、とーちゃんも楽しみに頑張る。
子は鎹(かすがい)。
這えば立て、立てば歩め、どこまでも。
君が創る未来に向かって。

思い出のマーニー〈上〉 (岩波少年文庫)

思い出のマーニー〈上〉 (岩波少年文庫)

思い出のマーニー〈下〉 (岩波少年文庫)

思い出のマーニー〈下〉 (岩波少年文庫)