Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

6年生の運動会

普段の心がけか、昨日の雨が嘘のように上がり、
やや肌寒いものの、すっきり爽やか、清明冷涼、
何と気持ちの良い朝、娘の運動会の朝。
張り切って3人分のお弁当を作る。
他所様のようにお重に詰めるほどの材料は無いけれど、
娘の好物を詰めて、秋らしく葡萄。
私が子どもの頃はもっと遅い時期だった運動会。
栗ご飯が美味しかったことが思い出される。
ああ、娘もとうとう最高学年の行事を一つ一つ終え、
卒業までの階段を上がる時期に入ったのか。


小学校最後の運動会が始まる。やや曇り空なのも有り難い。
ずっと立って見ていなければならず、体力的にも消耗戦。
穏やかな日差しは有り難い。
若いお母さん方とは20年以上の年の差、
下手すりゃ敬老席に座っている方々が、自分の年に近い。
2年前はPTAの腕章を巻いて写真係。
何だかそれは遠い遠い昔の出来事のよう。
小学校最後の運動会。自分の運動会は?
そんな半世紀近くも昔のこと、記憶の彼方。
でも、雨に降られたことはなかった、ただの一度も。
娘の運動会も、結局親が晴れ女のせいか、娘が晴れ女なのか、
天候に恵まれて、良かったなあ。


昨夜真新しい真っ白な体操服の上着に、自分でネームを付け、
用意しておいたこれまた新しい白い靴下、
新しい駿速の靴(本当は昨日の雨で濡れていなければ、
はき慣れた別の靴の予定だったらしい、娘曰く)
紅白の帽子の色はやや薄れてきたものの、今年は紅組。
勝つといいね、勝てるといいね、行ってらっしゃい。


 


親の感傷はさておき、少々寝坊をしてしまい、
3人分全部作り終えないうちに、開会式の時間が近づく。
いかんいかん、進行係で開会式の司会をする娘を見逃してしまう。
ダッシュで駆けて何とか間に合い、・・・。
あれ? 最近ってラジオ体操しないんだったっけ?
毎年こう思い続けて、とうとう6年生。
簡単なストレッチだけでいいのか? 本当にそれだけで?
保護者席のない運動会。常に立ち見の運動会。
次の娘の出番まで1時間以上はある。
ある意味、兄弟姉妹の居ない気楽さ、再び6年生の出番までに、
お弁当を完成させに帰って、再び学校に戻るかーちゃん。やれやれ。


毎年思う、どうして体操服を着ているのに、運動靴も靴下も白じゃないのか。
どこに自分の子がいるか目立たせるために、
目印代わりの縞々やピンクやオレンジのハイソックスなのか。
訳のわからないごちゃごちゃした統一感のない足元が見にくくて、
違和感を感じる私の感性が年寄りなのか。
サッカー選手の足元を真似るように派手な色彩の靴下、
どう見ても運動靴と言うより、運動向きではない遊び着に近い靴。
そんな児童生徒の格好を見て、何とも言えぬ気分に浸るのも今年限り?



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同じ保護者とはいえ、四半世足らずの差が殆ど。
何故か小学校の運動会如きに来るのに、
革のロングブーツを履き、とんでもなくイカレタ髪の色で、
ブランドもののバッグを肩から提げ、これまたブランドものの紙袋手に持ち、
今からどこへ出勤するのかという格好でおいでになられる方も。
かと思えば、じじばば総出の大家族。
杖や車いすは当たり前で、中庭はデイサービスの散歩か遠足かの風情。
花見やバーベキュー会場と変わりない校舎の間の花壇や遊び場。
井戸端会議の場と化す非常階段。
保育園幼稚園の子ども達を相手にしながら、大わらわのお母さん方。
三脚や脚立の上で「動画命!」といった風情のお父さん方。
この景色をも今年でお別れか・・・。



何をしてもカワイイ1年生の団体演技。
合っていても間違っていても、こけても笑っても、何をしてもカワイイ1年生。
娘のこの姿を私が見ることはなかった、入院していて。
だから、自分が見ることができなかった娘の姿を重ね合わせて、
1年生の子ども達の演技を見る。
2年生、少し大きくなっている。
3年生、こんなに体がしっかりしてきたのかとびっくりするくらい。
演技力も違うなあと実感させてくれる。


4年生、体もでこぼこだけれど、ぐっと大きくなってきた分、
上手なこと下手なこの演技の差がはっきりわかる。
同じ動作をしていて、どうしてこうも差が開くのだろうと呆れるほど。
5年生、毎年大漁旗を振り回して踊るパターン。
低学年の琉球音楽、中学年の花笠音頭、高学年のよさこいソーラン
この手の団体演技のパターンは毎年変わりそうにない。



今までの思い出が蘇ってくる。
でも、保育園の時の方がもっと鮮明。
マンモス校での運動場の演技は蟻の大きさの子ども達。
どこに自分の子どもがいるのやら。
望遠レンズで追いかけるほどの気合いも根性も体力もない親は、
若い保護者の嬌声の片隅で、背の高さだけを頼りに娘の姿を探している。
一緒にお昼を食べる時は「見慣れたいつもの娘」でも、
みんなの中に紛れてしまうと、どこに行ってしまったのか、
見失ってしまってさっぱりもわからない。
大勢の中の一人になってしまう、集団の中。


これから先、小中高と、どんどんそうなっていってしまうのだろう。
自分だけの、自分たちだけのカワイイ娘、愛しい娘、
そう思って育ててきたけれど、だんだん宇宙人のように、
わからないことが増えてきて、流れていく時間。
関わる人の数の中でどこでどうしているのやら。
目を凝らしても耳を澄ませてもなかなか掴めぬ娘の気配に、
神経を尖らせたり、ほっとしたり、
一喜一憂する生活に入っていくのだろう。
親子の距離はどんどん開く。
年齢差は変わらなくても、精神的にはどんどんと。



午後から晴れて、空は秋空、鱗雲。風はやや強く渡るも、
昨日の雨が幸いして埃も立たず、抜群のコンディションの中、
団体競争、演技、リレーと進んで、6年生の団体演技。組体操。
東北の大震災を思うと、運動会を開くことの出来る幸せを噛みしめたいと、
そんなスピーチから始まった運動会が、もうすぐ終わる。
劇的な逆転勝利、4点差で優勝! 沸き上がる歓声とため息、
一気に解ける緊張、ざわめく保護者。



稲穂が頭を垂れる、学校農園の脇を通りながら、
家人と歩く小学校からの帰り道。
心は爽やか、足取りややや重いが。
心がすーすーする一抹の寂しさを抱えつつ、秋空の下。


後は、先週祝えなかった娘の誕生日のお食事会。
運動会の後の夕食、歩いて5分のレストランでの恒例行事。
祖父母と祝いの膳を囲める幸せを噛みしめて欲しい。
戦い済んで日が暮れて、10月は始まったばかり。