Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

インクルーシブ・デザインナウ2011

(写真は大きくなります)
朝も早から、2時間余り掛けて電車・地下鉄・京阪を乗り継ぎ、
出町柳から歩いて15分、京大総合博物館へ。
学祭らしいがそういう雰囲気も余り感じない、静かな朝。


もう十年以上前になる。障害者教育という言葉が使われなくなり始めた頃、
障害とは何かという概念を習った。いわゆる三つのレベルで捉えるというもの。
1.機能・形態障害(Impairment):生理的レベルでとらえた障害
2.能力障害(Disability) :個人レベルでとらえた障害
3.社会的不利(Handicap) :社会的レベルでとらえた障害



しばらくして障害という言葉は不適切であるとして、
障がい、もしくは障碍と書かれるようになっていた。
しかしノーマライゼーションという言葉は、正常とそうではないものという
線引きが差別に繋がると言葉の上での抵抗、意味の上での論争がきかれるようになった。
小学校の教科書や福祉関係の言葉でユニバーサルデザインという言葉が目につき始めた。
障害児教育という表現は支援教育という言葉に取って代わられていった。



視覚支援、聴覚支援などと。それはそれで、何かしら助けられなくてはならない、
助けねばならない、そういう負い目を感じさせる欠落感が巧妙に意識される、
もしくは意識されないような仕組みになっているとも思えるのだが、
本質的な意味合いから離れた言葉の上でのやりとりが、
どうもしんどくてならないことが往々にして多かった。



現在はこのような言い方で捉えられるようになってきている。
マイナスの視点からプラスの視点へというが、いかがなものか。
1.機能・形態障害(Impairment)→心身機能・構造(Body Functions & Structure)
2.能力障害(Disability) →活動(Activity)
3.社会的不利(Handicap) →参加(Participation)



統合教育という言葉、インクルーシブ教育という横文字遣いの言葉、
普段余り耳にしないものの、改めて紹介されると、
そういうこともそうなのか、ああいうことも含まれるのか、
自分の頭の中では当然と思っていたことも、意外に感じられたことも、
インクルーシブなデザインという発想があってのことだと、
考えさせられた今日。INCLUSIVE DESIGN NOW 2011会場。



多様な個性や能力をもつユーザーの参加による、
社会の革新をめざすデザイン手法。
障害のある人や高齢者、
身体的に特別なニーズをもつ人の課題だけではなく、
貧困や環境問題、災害など、様々な社会的な課題に対して
「デザインによる解決」をめざす実践
例えば参考にして頂きたいのは→http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/inclusive/
              →http://popo.or.jp/info/2011/12/incl.html



前半は企画展「INCLUSIVE DESIGN NOW 2011」を塩瀬隆之先生の解説で。
いかにもデザイン関係の人だから? 若くてお洒落な先生の解説は、
分かり易くてきぱきしていて、聞いていて楽しいものだった。
インクルーシプと聞くと、福祉や障害者関係、人権教育等々、
何だか外枠の固い部分がトゲトゲしていて抵抗を感じる時もあるのだが、
今日の話はそういうものを全く感じさせずに、様々なものの考え方、
企画、取り組み、工夫の楽しさ、アイデア、発想の広がりを紐解いてくれる、
楽しい30分間だった。もっとお話を聞いていたかったのだけれど、
今日は後半の部もあるので、説明は至極簡単に切り上げ。




被災地で誰がどんな手助けが出来るのか、特技は、支援できる内容は?
一目でわかるようにTシャツの裏に書かれた文字。
力を入れなくても切れるはさみ、視覚的に動物をイメージ、
動物園内の地図を頭の中に収められるように工夫されたレストラン、
車いすの人や盲導犬を連れた人が利用しやすいデザインの椅子。
服薬への抵抗を減らすかわいいピルケース、豚鼻デザインの吸入器。
すぐに水と一緒に飲めるようにとペットボトルの蓋にあるピルケース。




棺に収めることが出来ない程、被災地の大勢の犠牲者を、死者を、
その尊厳を保つ形で見送る、安置する、死者を悼む、包む形。
遺骸を、遺体を、どのようにその場にまつるのか。
のし袋の形をした純白の遺体収納袋。




どこで人は安らぐのか、一息入れるのか、お気に入りの場所はどこか、
そんなことを書き込んだ立体的な見取り図、実は福祉施設の場で、
人を世話する人が癒されるような場所、バーンアウトしないような工夫を求めて、
あれこれ聞き取りするのではなく、ちょっとした呟き思い付きを書き込んで貰う、
黒板式アナログツィッタ―的な立体見取り図。
ある意味、建設的なマインドマップにも似た構造。



 


クロアチアでのインクルーシブなデザインのワークショップ。
諸外国での取り組みと同様に、日本での取り組みもこの展示で知ることができる。
企業も研究室も前向きに取り組んでいるんですよという宣伝、アピール、啓蒙。
ちなみにこの展示会場のテーブルやパネル等、
被災地のゴミとして処理された材木等をチップにして、再利用されている。




ヒューマンデザイン、グローバルデザイン、インクルーシブデザイン。
娘にもこういう展示を見せたかったが一緒に来られなくて残念。
子ども連れでも良かったのだろうが、参加者は結構高年齢?
もっとも、この京大総合博物館自体は子度向けの説明会も行っているらしいが、
特別展や企画展をどのように扱っているのか、詳しくは知らない。
近ければ頻繁に訪れたい所ではあるが。
さて、次が本日メイン、開館10周年記念の展示の解説。
駆け足で「埃及考古」へ。

インクルーシブな社会をめざして―ノーマリゼーション・インクルージョン・障害者権利条約

インクルーシブな社会をめざして―ノーマリゼーション・インクルージョン・障害者権利条約

ノーマライゼーション思想を源流とする スウェーデンの教育と福祉の法律

ノーマライゼーション思想を源流とする スウェーデンの教育と福祉の法律