『三銃士―王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』
三銃士を見に行く。お高く取られる3D版ではなく普通の2D版。
これで十分、目が疲れることもないし。
荒唐無稽な時代を無視した、楽しかろう目新しかろう精神のストーリーは、
原作の『三銃士』を冒瀆しているようにも思えてならない。
『指輪物語』こと、『ロード・オブ・ザ・リング』で活躍した
若きオーランド・ブルームが34歳(三銃士?)という、
映画館の中での宣伝も笑えるところがあったので、まあ見てみるかと野次馬根性。
ちなみに彼はバッキンガム公爵の役柄で、三銃士じゃないけれど。
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鳴り物入りで宣伝しているのは、監督の奥さんが活躍するという、
映画界ではよくある話だが、どんなもんだか。
いずれにせよ、ドレスで暴れ回るのは日本のやくざ映画で、
緋牡丹博徒が活躍するような、そんな風情か? 違うのか?
振り袖無頼控のようなものか?
殺し屋かスパイのような役しか回ってこないのか、この女優・・・。
- 作者: アレクサンドル・デュマ原作,アレックス・リトヴァク原案・脚本,アンドリュー・デイヴィス原案・脚本,クヌート・コアー著,梅崎 麻衣
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でも観たくなった一番の理由は、
アレクサンドル・デュマの原作を愛しているからにほかならない。
『三銃士』と聞くだけで条件反射のように、胸が躍る。
頑固、ガスコン、ガスコーニュ魂と覚えたあの頃の自分も。
わずかな挿絵から異国のチャンバラ活劇を、時代劇風スパイ大作戦を、
文字で追ったあの頃が懐かしいから。
でも、この原作とレオナルド・ダ・ビンチの飛行船、何故抱き合わせに?
- 作者: ドメニコロレンツァ,エドアルドザノン,マリオタッディ,松井貴子
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押し合いへし合いこみ合っている都会の映画館ではなく、田舎の都会のシネコン。
ガラガラのレディスデー、夕方の上映。娘を誘って夕食がてら鑑賞。
子供の時に読んだ、あの勧善懲悪の血沸き胸躍るあの気持ち、
手に汗握りハラハラドキドキしながら、追いつ追われつの逆転劇に、
スカッと胸のすくような思い、それを期待していたというのに、
何だかおバカな観客に合わせたのか、観客をバカにしているのか、
荒唐無稽な娯楽映画にだけ仕上がっていたのが、残念。
- 作者: 佐藤賢一
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三銃士、主人公と成る頑固な若者が一種の起爆剤となって四銃士。
ちょっとしたきっかけ、争いの火種、成功と失敗、巧妙な罠、友情と恋、
忠誠と裏切り、欺瞞。政治の駆け引き、何もかも新鮮だった読書。
原作を読んだ時、旗を打ち抜かれて黄金の百合を刺繍する云々の下り、
ドーバーを行き来する間一髪の緊張、臨場感、その活劇描写に一喜一憂。
子供心にも楽しい話だったが、ここまで映像化して換骨奪胎も度を過ぎると、
何だかなあ、イマジネーションの拡大とか言いつつ、
ちまちま若者の悩みにウジウジのルイ13世が、馬鹿丸出しでかわいそう。
おままごとの夫婦とリシュリュー煮罵られても、ここまで徹底して、
漫画化した映像だと、どうにもこうにも。
- 作者: アレクサンドルデュマ,長島節,Alexandre Dumas,生島遼一
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ただ一つオープニングだけは良かった。意外性の掴みも戦略。
とはいえ、これも荒唐無稽な客引きの仕掛けで、がっかりしたけれど。
話の舞台を変える時の地図の使い方に心ひかれるものがあったかな。
地図を俯瞰して、当時の町並みにカメラワークをパンする。
パリが今のパリではなく、本当に一区画だけがパリ。
かのベルサイユ宮殿はまだ無く、ポン・ヌフ周辺が賑わう様子。
そんな描写の仕方は面白かったが。
王の肖像―権力の表象の歴史的哲学的考察 (叢書・ウニベルシタス)
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それにしても花のノートルダム寺院の尖塔の上に飛行船を突き刺すような、
神を冒涜する映像、敬虔なカソリック教徒から文句は出ないのか。
ガーゴイルが雨樋だと強調している画像は良かったが、
大阪城や東京タワーをゴジラやその他の海獣立ちが壊すのと同じ感覚で、
ノートルダム寺院が壊されているのを見て、ちょっとショック。
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そして、あり得ないエンディング。
あんな高い空から海に落ちて生きている女スパイ、ミレディ。
バイオハザードの続きか!? 出ている映画を間違えていないか?
おまけにCGを駆使した船と飛行船の山が、フランスを目指すドーバー海峡。
これって、今ひとつだった映画、『トロイ』のCGを彷彿とさせる。
やめようよ、続編ありますから期待してねっていう、セコイ終わり方。
娘でさえも『ライラ―黄金の羅針盤』だって、いつ続編が出来るのか、
全然わからないねって言っているくらいなのに。
同じ子役はもう使えないだろうねって。
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頭を空っぽにしてみるには良かった。
それにしても、豪華な衣装、活劇を繰り広げた割に、
中身のない映画で残念。これを見た人間が、
『三銃士』のオリジナル世界を誤解することがないよう祈るだけ。
そりゃ、原作だって大衆文学じゃないか。
読者任せの、読者好みの作りじゃないかって、突っ込まれたら、
当時の感覚からすれば、純文学ではない、チャンバラ文学かも知れない。
でも、ねえ。やっぱり映像化した今回、奇想天外、荒唐無稽に過ぎる。
斬新さという名の傲慢さにうんざりしたかな。
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