Festina Lente2

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マイウエイ―12000キロの真実

戦争映画は嫌いだ。戦争を題材にしている映画も嫌い。
大抵の場合、家人が見たいというので付き合いに見る場合が多い。
若い頃は話題作だから見たが、出来るだけ見たくないというのが本音。
しかし、今回はフリーチケットがなかったらやっぱり見なかった映画。
見て良かったとは思うが、テーマは重い。
人権に関しても、歴史に関しても、興味関心は高いが、
人が死ぬ、ハッピーエンドではない映画は、今の精神状態には辛い。


だが、逆療法になったのか、ショック療法になったのか、
現実逃避するには凄まじい内容だったので、却って少し気合が入ったような。
いずれにせよ、『プラトーン』『プライベート・ライアン』よりも、
主人公がアジア人というだけで映像が見易く感じられた。
感情移入し易かったのも、確か。
それにしても、戦争を知らない世代の私にとっては、
知識で知っていることを視覚的に目の当たりに見るのは、
実際の映像ではなくて、作られたものだとわかっていてもしんどい。


メイキング映像を前もって見ていたのだが、良くまあスタントではなく、
俳優自ら火薬の山を走り回って、凄まじい映像に身を投じたものだと思う。
日本ではこの映像は作れないと思ったし、
映画の『山本五十六』は映像的に穏やかで、
TVドラマの『坂の上の雲』の日本海海戦の凄まじさよりも遥かに、
「えぐみ」のある内容をドラマに仕立てていた点で、
さすが韓国の作品と納得してしまった次第。


ノルマンジー上陸作戦をドイツ側の目から撮ったというよりも、
ドイツ軍に外国人部隊として東洋人が存在していたこと自体、
自分にとっては驚き。
それにしても、日本が周囲の国々にしてきたことも酷いが、
ロシア側の行為も負けず劣らすだと改めて再認識。


最終的にはヒューマンドラマに仕上がっているものの、
戦争に付いて思うところがある人間にはなかなか酷な世界で、
差別や人種間の問題に頭を悩ませる人間にとっては、
仕事を思い出させる内容でもあり、
元々平和を訴える内容だとしても、心を浄化してくれるような世界ではなく、
現実を直視せよの警鐘に近い、感傷的である以上に、
ドライで割り切った演出でもあるので、
心が折れそうになる以前に、粉々にされている、そんな感じの映画。


日本人の主だった俳優も何人か画面に見え隠れするものの、
日本人朝鮮人関係なくシベリア抑留の悲惨な光景、
死を強いられる選択の余地無い徴兵、理不尽な命令の連続に、
戦闘シーンが加わるので、なかなか現実逃避することが出来ないリアルさ。
映画を見終わって現実世界に返ってくるとき、
その平和さ、のほほんとした平穏さに、掬われることにほっとすると同時に、
この時代に生きているやりきれない申し訳なさ、
この世界と比較すれば取るに足らないことにこだわって、
落ち込み続けていることが、どれだけ軟弱なことなのか、
改めて突きつけられてしまうので、全く現実逃避できない。


自分の道をどう切り開くか。
信念も保持し得ない、親として子供を守ることに徹しきれない、
ぐらついている自分にとっては、何とも凄まじい映画だった。


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