定番の家族の休日
午前中、ダッシュで和泉市の弥生博物館へ。こういう時は一人で鑑賞に限る。
『坂の上の雲』のお陰で、「頭の中が明治」になっているから、
今、この勢いでこの展示を見ないと、なかなかその「時代性」の中に溶け込めない。
「子規の叔父・加藤拓川が残した絵葉書−明治を生きた外交官の足跡−」展。
なかなかこれだけの資料を一気に見ることは、こんな田舎の都会では出来ない展示。
よくもまあ見せてくれたものだ。残念ながら仕事でばてていて、気が付けば前期展を見逃し、
今日が最終日。何が何でも滑り込んでみなければ・・・。
インターネットも国際電話もない時代、外交官の目と耳と記憶だけが頼り、
人間の持てる知性と感受性と国際感覚が時代を左右した時代、
弱小国日本が鎖国を解いて一等国の仲間入りを仕様と喘いだ時代、
そのさなかにあって、時にはスマートな外交官であり、時には危ない橋も渡り、
火種と火消しになるような自分物を懐に抱え、情報戦に明け暮れ、
それこそシャドウ・ゲームの日々。
世界を見たいと切望しながらも病を得て、内的な世界を掘り下げた結果、
文人として歴史に名を残した正岡子規。その叔父もやはり「ただ者」ではなく。
当時の優れた人材はあちらこちらで接点を持ち、密度の濃い交友を、
綺羅のような人生を凄まじい勢いで駆け抜けていったのだなと、
改めて考えさせられた次第。力づけられたものの、
生まれた時代と社会状況、自分の卑賤さ、無力さを思うと、
ただただ哀しくなってくるので、鑑賞者に徹しなければと思った次第。
それにしても予算の関係なのか、特別展示のスペースが小さいと思っているのか、
小さなパンフレットだけで、図録がないのがいかにも残念。
当時のヨーロッパの実情を知る上での貴重な外交資料、風俗を知るよすがとなる書簡類、
写真、系図、それらのものをじっくり見るのは楽しいが、ミニ解説の付く図録を、
ためつすがめつする時間も欲しいというに、残念。
取って引き返し、娘を連れて大阪市内に出る。久しぶりにビアホイで昼食。
昔のランチメニューはなく、店の雰囲気も少々変わってしまった。
そりゃそうだ。もう娘はこの春から中学生。
いつまでも街も店も同じであるはずがないのはわかっているが、心寂しい。
家人は娘や私の気持ちを盛り上げようと、それなりに気を遣ってくれている。
娘が幼い頃よく来たベトナム料理の想い出の店、慣れた味。
家族の休日の定番コース、楽しいコメディ映画、お手軽な夕食。
屈託無いお笑い満載ナンセンスコメディスパイ映画、要はパロディ。
『ジョニー・イングリッシュ 慰めの報酬』を見終わった後、久しぶりの家人宅。
名物駅弁に舌鼓を打ち、何もせずのんびり寛ぐ。
現実に遠くに出かけることは出来ないけれど、デパートの駅弁フェアでちょっと贅沢。
そんな週末を迎えて、博物館・外食・映画の家族の休日は暮れていく。
心の傷を引きずっている家族を癒すのは、定番の休日コース。
観て、食べて、観て、食べて。
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