Festina Lente2

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日欧の武具を眺めながら

大阪歴歴史博物館にて念願の展覧会を見る。
特別展「日欧のサムライたち―オーストリアと日本の武器武具展―」
早く見に行かねばと思っていたけれど、思い立ってから1ヶ月目でやっとこさ。
年度末年度初めはその余裕が無くて・・・。


   


平成18年、オーストリア第2の都市グラーツのエッゲンベルグ城、
その一室を飾っていた絵画が豊臣時代の大坂城と城下町を描いた屏風だと判明。
この発見を機に、平成21年に大阪市とシュタイヤーマルク州立博物館ヨアネウムの間で、
大阪城とエッゲンベルグ城の友好城郭提携が締結。
本展は提携3周年を記念する特別展・・・だそう。


  


娘のたっての望み、西洋と日本の刀剣、鎧甲の展示。
まあ、こういう物を見たいと思うようになったのは、
私の仕込みと言うよりも、アニメの影響というのが残念だが、
何にせよ、美術館や博物館に足繁く通ってくれるのは嬉しい。
かつてドイツで甲冑博物館なるものを見たのはニュルンベルクだったかな。
もう四半世紀も昔のことなので、記憶が曖昧。
でも、私自身も武器や甲冑は嫌いではない。
むろん、実践ではなく観賞用として、である。


    


かつて軍事オタクもびっくりした、ドイツの観光局にも受けた、
エロイカより愛をこめて』の主人公の一人、NATOの少佐が武器の似合うキャラで、
当時の少女マンガファンはそれなりに武器に詳しくなった。
それ以前、娘と同じ中一の頃の私、『ワイルド7』に夢中で、
乗れもしないのにバイクと拳銃に詳しくなった。
それと似たようなものだろう。
刀剣や武器の類は、思春期の女の子にとっては、知的武装の変形、
アニムスの成せる業、自己変容のための踏み台、
疾風怒濤の時代を乗り切るための象徴のようなものだ。


  


女性が白馬の王子様に憧れるのは、結婚相手を求めているのではなく、
機動力と武力と知力を行使できる存在を取り込むためだ。
相手を篭絡して玉の輿に乗るためではなく、
自分自身の内側にその特性を呼び込むためであり、
待つだけでは何もできないと自覚してこそ、
ジェンダーから解き放たれて、自分を想像できる。


    


戦争、流血、血なまぐさいものの象徴として、
武器や甲冑が存在すると思う向きもあるかもしれない。
しかし、展示されるものは実践用ではなく美術品として価値のあるもの、
装飾品として作られたもの、審美的なものであるから象徴性は高い。
異なる価値観の元、流血は日常生活の一部である女性にとって、
自分以外のものを攻撃する中で流される血の意味を、何に求めるか、
戦いが仕事の一部であった男性とまったく同義であるはずも無く。


  


目に見えぬ鎧をまとわねばならぬ時もある。
鎧を鎧と、刀を刀を見せてはならぬ時がある。
じっとしていることが動いていることであるように、
激しく戦っていることが耐え抜くことよりもたやすいように、
様々なギャップの中で、二律背反、ダブルバインドの中で
あらゆる影を背負って生きていくこと、
そういう戦いを強いられる世界で生きていくことが、
当たり前の日常生活の一部になっていく、
そんな毎日を、君はもう感じ始めているか。
そんな思いで娘を見ている自分を、娘の未来を想像するかーちゃんを、
ややもすれば思い煩いたくなる気持ちを振り払いつつ、日曜の午後。

図説 西洋甲冑武器事典

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