フランク・ロイド・ライトを偲んで
(5月4日の明治村の記事の最後。写真は大きくなります)
少女時代、青春時代、背伸びしていたのだろう。
フランク・ロイド・ライトという言葉の響きは心地よかった。
理由はわからない。ただ、小中学生の頃周囲にはいなかった。
S&G、サイモンとガーファンクルの話が出来るクラスメイトなんて。
勿論、NHKの『ステージ101』の影響もあったが、
シカゴのサタディ・イン・ザ・パーク同様、
ロック・ミュージカル、ジーザス・クライス・トスーパスター同様、
歌詞の背景にあるものを納得するような年齢でもなく、
理解力があるわけでもなく、雰囲気に酔ってのめりこんでいった当時。
英語の語感というものは、英語を習いたての私にとって、
異国の香りにも等しいエキゾチックな世界、
日本語では曰く言いがたい、表現しにくいことをさらりと、
格好よく言ってくれるもの、そんな憧れを純粋に持てた時代だったので、
「フランク」という人名よりも、その言葉の意味の「フランク」に、
韻を踏んでいるように響いた「ロイド・ライト」、
その一言だけで、何だか素敵だなあと感じてしまっていたあの頃、
実際にはどんな人だったかを知ったのは、高校から大学だった。
サイモン&ガーファンクルの名作アルバム、『明日に架ける橋』の中の1曲、
「フランク・ロイド・ライトに捧げる歌」。
2人の透明感溢れるデュオは勿論のこと、メロディラインも何もかも
『明日に架ける橋』の迫力には及ばないのだけれども、
私に「フランク・ロイド・ライト」という名前を教えてくれた曲。
心の中に、そのメロディを刻みながら帝国ホテル中央玄関を眺めた。
少し贅沢にアフタヌーンティーを頂いた。(3人で1つをセットを分けて)
先人の遺してくれた様々な遺構を、幾つも眺めながらそぞろ歩く一日。
実はこの曲は、ポールがアートに別れを告げる内容だという。
アート・ガーファンクルが建築学科の学生だったことから。
(→こちらのブログの解説を参照)
無論そんなこととは何も関係なく曲を聴くことは出来る。
それでも、軽妙なメロディに乗せて何かに別れを告げているとするなら
「明治は遠くなりにけり」の心境を、柔らかくくるんでくれているなら、
それはそれで、そんな感じにも思える。
時代、思想、共感できたはずの諸々のもの、
そういうものに別れを告げなければならない、一抹の寂しさ。
触れようと思ってももう触れることの出来ない、あの感覚。
自分が半世紀も生きてくると、何もかも未来に向けて明るくなどと
思うことさえもこざかしくて、そう思う振りをができることが
ある一定の年齢を生きてきた分別なのではないかと実感する。
少なくとも若い頃のように「先行きがわからない不安」ではなく、
何かが終わってしまった、過ぎ去っていってしまった「俯瞰(ふかん)」が、
心の中の感慨の大部分を占めてしまっている時が多い。
景色も音楽も、出会いと別れを通奏低音に持っている。
それは、家族旅行にひと時でさえも、私の心を蝕む。
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まるで、マヤ・アステカの遺跡のような、建材の一部が積まれた裏側。
フランク・ロイド・ライトは完璧主義だったのか、予算オーバーで、
この帝国ホテルを完成させることが出来ないまま離日、
当時の責任者は引責辞任を余儀なくされた。
設計から11年後、開業当日は関東大震災の9月1日、その日。
耐震防火に配慮した画期的な設計のこのホテルは、
殆ど損壊することなくその真価を発揮した。
本日の残り時間が少なくなってきた。次にまた来る、リベンジといっても、
閉演時間まできっちり見てしまいたい私たち。
お土産も物色せねばならぬ。運宮中でもSLは見ておきたい。
あれやこれやと眺めながら戻っていく途中で、かつての宇治山田の郵便局。
未来への手紙を書いて3人で投函。さて、その頃私たちは・・・?
その名も「はあとふるレター」。
最終のバスを拾い、4丁目から1丁目へ戻る。
まだまだ明治村の村民でいたかったが、閉園時間では致し方ない。
お土産を買いたくても買えない、買う時間も無い時は写真に残して・・・。
晴れ女の面目躍如の一日が暮れなずむ中、ドライブして家人の実家へ。
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