Festina Lente2

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『これは本』

出先で紹介して貰った本。どちらかというと、小学生向き。
読み聞かせにも使えそうな本。
使いようによっては中学生でもOKな内容。
それにしても、そう、こういう出来事、関係、
日常的に起こっているような気がする。
古典的な読書の在り方に対して、今時の人の考え方や姿勢、
その余りの乖離に、さっくりメスを入れてくれた感じの内容。


ほのぼの感、あるある感、ユーモアが溢れている。
子供が好きな「繰り返し強調」を巧みに用いて、
立場が逆転するどんでん返し的なラスト。
お話作りの定番、基本を抑えているとはいえ、
こんな風に切り込まれると、本当に笑える。


これは本

これは本


笑ってばかり入られないのだが、後しばらくすると、
本とはめくるものではなくなっているかもしれないから。
ケータイがスマホと呼ばれるものに王座を奪われたように、
木簡は巻物に、巻物は冊子に、その時代は紙の発明によって長く続いたけれど、
もはや私自身も鉛筆やペンを手に取って字を書くことが稀になってきたように、
「読む」という行為が、もの珍しげな動作を伴って行うものだと認識される、
そんな時代が目の前まで来ている。


スクリーンでスクロールするのが当たり前の画面、
それに慣れてしまっている人間には、一枚一枚めくったり、
行きつ戻りつ適当に飛ばし読みなどしてみたり、
いきなり最後から読んでみたり、などという遊びを含めた読書、
最初から集中して読む読書、紙の匂いやページをめくる手触り、
そういうものを楽しみながら「読む行為」というものが、
昔話になっていってしまう時代。
この手の絵本は貴重な存在かもしれない。


というわけで、会話の成り立たないような人間関係、
友達の家に集まって全員が同じことをするのではなく、
全員がばらばらでゲームをしているのが珍しくない時代の、
幼少時からケータイやパソコン操作は日常茶飯事の子供たちが、
古典的な「読書」なるものに接した時の状態を、
皮肉りながらも暖かく見つめたこの本を、
一度手に取ってみるのはいかが?


教育関係者でなくても、ちょっと唸らされるかも。
図書館関係者であれば、もうとっくに知っているのだろうこの本、
いやあ、娘に読ませたら何と言うかな。
原題は『It's a Book』。中学生でも読めそう。
それにしても普段本を読まない子供に読ませるのは大変。
興味関心を引く以上に、その本に向かわせる動機、
モチベーションをつけるのにどうしたらいいか、
ちょっと考えさせられる本でもある。


世代や環境を越えて、考えさせられる本。
ユーモアはあるけれど、私は笑いつつも哀しくなる。
少し落ち込んでしまう。
それでも笑えるからいいけれど、なかなか考えさせられる。
そんな本。皆様もいかが?

It's a Book

It's a Book