Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

夜明けの図書館

軽い読書ばかりに流れているが、老眼のせいばかりではない。
仕事が忙しく腰を据えてじっくり本が読めない。
そんな中で「図書館」という言葉が最近よく見る単語の一つ。
実は最近市の図書館にも殆ど行けていない。
予約した図書も、結局読むことが出来ないままスルー。
勿体ないと思うけれど、馬力が出ない。


不思議図書館 (角川文庫)

不思議図書館 (角川文庫)


娯楽というか、暇つぶしというか、速読は出来ても好きではない。
自分の世界にしっかりじっくり没頭する時間を捻り出すのは、難しい。
通院や出張が減って、電車に乗る時間が無くなると私の読書時間は減る。
外に出ている時が多ければ多いほど、結構本が読めたりする。
職場や家の中にいると雑用の波に流されて、
読みたい本を手に取ることも出来ない。


新版 図書館の発見 (NHKブックス)

新版 図書館の発見 (NHKブックス)


図書館に通う暇もない昨今、
「図書館」という単語を見たり聞いたりすることが増えたのは、
一つに6月に映画化される有川浩『図書館(戦争・内乱・危機・革命)』
シリーズの流れのせいだろう。
昔は図書館というと何だか文系のイメージ、軟弱で古くさいイメージ、
ちょっとオタクなイメージ、非リア充な世界と、
あまりヒロイン・ヒーローの活躍する場では無かったのだが、
新しい図書館のイメージが生まれつつあるのは、
本を読む場所、調べ物をする場所以外に、
人の集まる文化交流センターのイメージが定着しつつあるからだろうか。


知の広場――図書館と自由

知の広場――図書館と自由

 


図書館、それは情報収集の場、調べ物学習の場、自習室のある所、
読み聞かせ、紙芝居、お楽しみ会の出来る場所、
普段読まない他紙や地域コミュニティ紙に目を通すことが出来、
雑誌のバックナンバーも読める場所。
メディアリテラシーが公共に開かれている場。
かつての暗くて寒くてとは全く違う開かれた場として定着した、
新しい図書館のイメージの元で育った世代は、
図書館のプラスイメージを増幅させて、発信できるようになってきた、
そういうことなのだろうか。


理想の図書館とは何か: 知の公共性をめぐって

理想の図書館とは何か: 知の公共性をめぐって


私は人気の「図書館もの」をまだ全巻読み通してはいない。
一つは漫画の展開を文字にしたような、ライトノベルに抵抗があること、
読みやすさに流されて面白いだけで終わってしまうことが多く、
年齢のせいなのか、売れている本の作り方について行けないだけなのか、
読むTVドラマのような世界に浮遊しきれない部分が否めない。
面白いしワクワクする部分もあることはあるが、
しっくり物語り世界にはまる、そういう感覚が生まれてこない。
何度も何度も読み返したくなるような、重層・重厚な世界感が感じられない。
年を取ったせいなのだろうか。


図説 図書館の歴史

図説 図書館の歴史


それはそうと、ラノベ・小説等の読み物のみならず、
漫画の世界でも「図書館」の躍進著しい。
スポ根物でなくても「受ける」漫画・アニメが溢れる
価値観の多様化した21世紀が、
追いつけ追い越せではない時代に生活する人々の漫画を生み出すのだろう。
図書館に集う人の背景、図書館で働く人の意気込み、それぞれの悩み、
そういった生活感に密着しながらメッセージを発する物語、
決してこなれた絵、研ぎ澄まされた感覚、
丹念に縒り合わされ作られたストーリーではないけれど、
ほのぼの心に染みるような優しさが漂う。
そんな漫画を最近一冊読んだ。


夜明けの図書館 (ジュールコミックス)

夜明けの図書館 (ジュールコミックス)


レファレンスがテーマ。司書の仕事が好きな人、
せざるを得ないからそこにいる人、
色んな人の思いが交錯させながら「お宝発見」的ドラマを
絡ませているところがミソか。
こんな情熱的なレファレンスは経験がないし、
自分自身こんな風に本や情報を捜し求めたこともあまり無い。
その点は、ある意味反省しなくてはならないのだろう。


図書館で調べる (ちくまプリマー新書)

図書館で調べる (ちくまプリマー新書)


「調べ学習」に躍起になっている教育の現場には、
ある意味背中を押してくれる「ありがたい漫画」かもしれない。
何しろ「調べる」とはどういうことか、わからない子どもが多いのではなく、
大人だってわかっていない。調べ方の浅さ深さ、狭さ広さに鈍感なのだ。
ケータイ辞書に載っていなければ「難しくて複雑」と切り捨ててしまう、
そんな若者が増えている中で、この作品の視点は新鮮だ。


読書力アップ!学校図書館のつくり方

読書力アップ!学校図書館のつくり方


調べること、情報を与えること、その相互作業の中から生まれてくるもの、
レファレンスの大事さ、「何事にも先達のあらまほしきことかな」の世界を、
分かり易く描く世代が生まれていることに、心が明るくなった。
それから「仕事」の現場を伝えるという意味でも。
親子間、世襲制、先輩後輩どころか、ご近所なんて全然の、
人と人との関係性が希薄な今、図書館のレファレンスで触れ合う機会は、
これから成長する子ども達にとって、非常に重要な一コマであるに違いない。


図書館が教えてくれた発想法

図書館が教えてくれた発想法


そして、これから老いていく、定年後自分の世界がどんどん狭くなる、
寂しくなる、家族以外の人間と話す機会が殆ど無いような、
無言でネットやTVの前に座りがちな世代にとって、
図書館という様々な年齢層の人が集まる場所は、とても重要だ。
普段利用していても、自分の立場からしか物事を見ない癖が強く、
漫画はあっさり読み飛ばしてしまうことが多くなり、
軽い読書楽な読書と割り切ってきたが、その中でもふと手を止めて、
考えながら読みたくなる一冊、それがこの『夜明けの図書館』。


読書を支えるスウェーデンの公共図書館: 文化・情報へのアクセスを保障する空間

読書を支えるスウェーデンの公共図書館: 文化・情報へのアクセスを保障する空間


というわけで、大作・長編を読まずに過ごしている自分への言い訳も兼ねて。
それにしても、読書量が減ったなあ・・・。
専門書など全く手に取らなくなり、ちょっと自己嫌悪。


図書館に訊け! (ちくま新書)

図書館に訊け! (ちくま新書)

TOKYO図書館紀行 (玄光社MOOK TOKYO INTELLIGENT TRIP 1)

TOKYO図書館紀行 (玄光社MOOK TOKYO INTELLIGENT TRIP 1)