香りあるもの、何処
春が怖い、春は恐ろしい季節。
そんなお話はあちこちにあるけれど、
春夏秋冬、香り高い花の咲く季節は何となく怖い。
梅見が苦手になったのも、百合の花束を敬遠するのも、
薔薇を育てなくなったもの、庭仕事が何となく億劫になったのも、
年のせいではなくて、ものの香りがよくわからなくなってきたから。
(熟睡できる機会が減ったから?)
そんなふうに言ったら人は笑うだろうか。
お医者様に言えば、大袈裟なと一蹴されるだろうか。
だが、ストレスに晒され、副鼻腔炎が悪化し、
実はその遠因は歯から来ていて、治療。
突然香りが飛んで、すったもんだしたあげく、
私の嗅覚は自分の記憶にあるものと、ずいぶん差が出来てしまった。
加齢と共に、変わっていくのが当たり前なのかも知れないが。
例えば雨上がりの庭、むせかえるようなむっとした匂い、
湿った土や木々の葉から立ち上る、
犬小屋の周りの動物の匂いと混じった、
排気ガスと混じったすえた匂い、風呂場、トイレ、洗面所、
ありとあらゆる所で自分に馴染みのあるいい匂い、
敬遠したい匂い、色んな香りや悪臭、記憶の中にあるそれらが
どうにもこうにも心許ない彼方にある。
花の香り、お吸い物のゆず、搾ったスダチ、リンゴの甘み、
オレンジの爽やかさ、グレープフルーツの渋み、
様々な匂いが記憶されているものとズレがある。
それを意識して以来、料理や土いじり、花を見たり嗅いだりすることさえも、
億劫に、いや、おっかなびっくりになっている自分にうんざりしている。
体調に左右され過ぎる。妊娠中ではあるまいに。
そう、あの当時はある特定の匂いだけが鼻についたり、わからなかったり。
敏感さの度合いに狂いが生じていて厄介だったが、
同じように、いや、それ以上に香りに関する記憶が曖昧になりつつある。
確かなものとして上書きされていくのではなく、
本当にこんな香りだったか、匂いだったかと半信半疑のまま、
別のファイルにしまうように記憶されていくので、脳が疲れる感じ。
電車の中に香水を付けている人が少ないのでも、減ったのでもなく、
私が嗅ぎ分けられなくなってきているのでは?
最近の植物の香りが少ないのではなく、私の所に届いていないだけ。
近くまで寄ればわかる、ではなくて、以前の私はかなり遠くからでも、
距離があっても様々な香りがわかったというのに・・・。
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どんなに楽しく毎日を過ごそうとしても、体調はなかなか御し難い。
気持ちの問題なのか、体力の問題なのか。
はたまた避けられようもない年齢的なものなのか。
明るい日差しの皐月とは打って変わって、体調には波。
真面目に服薬すればコントロールしやすいのかも知れないが、
面倒な思い、ストレス多々重なる中で警報を発するのは嗅覚。
副鼻腔炎が悪化したとも思えないのに、朝方痰が絡む時。
週末に襲ってくる胸痛が、単にストレス、気のせいなのか、
かつて母がよく言っていた肋間神経痛なるものなのか。
もう少したちの悪いものか、量りかねているうちに、
匂いがわからなくなってしまった。
左手が思うように動かないことに、諦めてきた矢先、これか。
あちらこちら命のやり取りに関係しない事柄であっても、
小さな不調の積み重ねは、苛々と心を蝕む要素の一つ。
花を愛でることからも自分を臆病にさせる。
そんな心に棘刺す思いを味わった、昨日。
なので、バラ園に行っても思いっきり楽しめない気持ちを
引きずったまま、薔薇の写真をよくよく見れば、
自分の肌の染みならぬ、アップした写真には黒い点が。
これがカメラが不調な証拠。そう、カメラまで?
そんなふうにマイナーになってしまうのよ。
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