Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

薔薇と茶室と 

久しぶりに家族3人、万博公園散策。
家人の社宅からは車で20分程のこの広大な公園は、私たちの憩いの場。
もっぱら私の関心は民族学博物館の展示や特別展であり、
四季折々の景色であったのだが、近くて幸い、すぐに行ける。


    

  


そう思っているうちに、贅沢にも余り出かけない時期が増え、
それぞれの予定が噛み合わず、おざなりの映画鑑賞で家族の休日を済ませ。
幼い娘に色んなことを経験させようと、親なりに心砕いたここでの時間、
寒さの中梅を楽しんだ早春の日、初夏の夜の蛍狩り、
朝早くから散歩して眺めた蓮の花、真夏の花火、
かつてのパビリオンの跡地を辿るスクラッチ
明るい太陽とひまわり畑、秋の日の紅葉、民芸館、
一体あの日々はどこへ行ったのか。
想い出は尽きない万博公園、久しぶりのバラ園。
折しも今はローズ・フェスタ。


   

  

  


ちょっとしたミニ・コンサート。
心和む景色を見ながら、のんびりふんわり過ごす時間。
いつの間に娘は私と殆ど同じくらい大きくなったのか。
日に焼けるのが嫌だと雨傘を日傘代わりにして歩いている。
いつの間に私たちは年を取ったのか。
お互いこの6年間で随分真っ白な頭になって。


    

  


本当はいつものように博物館や民芸館に入りたいのだが、時間もない。
家人や娘はあまり興味を示さない。
それでも緑滴る園内を散策し、薔薇の香りを確かめる。
仕事のストレスが増えてきてから、次第にまた嗅覚は失われていった。
連休前後の時間のある時には、普通に花の香りや食べ物の香りが楽しめたのに、
ほんの少しの疲労やストレスは、それほど体から余裕を失うのか。
いつの間にか私は花の側に行くのが怖くなっている。
香りのある花なのかどうなのか、記憶の中の香りの強さと比較して、
その弱さに愕然としてしまうから。


    

  


日の光は明るい。自分の顔を余り照らさないで欲しい。
強い日差しは気持ちいいと同時に、その後の疲れ。
美しい花も匂いの強弱テストになるように。
もしかして色も香りも若い頃感じたものと、変わってしまった?
そんなふうにおっかなびっくりにさえなる。
ただの薔薇を眺めるだけでも。


    

  


そして、娘の小学校の夏休み以来慣れ親しんだ、
この大阪の北部の大きな公園。
自分の小学校の遠足、エキスポ70を思い出させる公園、
ここで過ごした日々が、くるくる走馬燈のように回る。
娘は中学一年生。もう一緒に並んで歩いたりしない。
楽しそうに走り回ったりしない。
親から少し離れて歩くお年頃・・・。


    

  


いずれはアヤメかかきつばた、いえいえ、あれは菖蒲。
もう少し時期的に後の方が沢山咲いていたようだけれど、仕方ない。
ぐるっと歩いて、蕾だらけの蓮園を見て、3時のお茶の出来る所へ。


    

  


何度も万博公園に来ているものの、初めてのお茶室。
日本庭園内の千里庵でお抹茶とお菓子を頂く、心和むひと時。
菖蒲や蓮にはいま少し早く、見ごたえのあるものは少なかったが、
それでもローズ・フェスタのバラは心を慰めてくれた。
菖蒲はしっとりと日本の色を見せてくれた。
お茶室での時間は、ガラス窓に切り取られた景色が一幅の絵のよう。
かつて訪れた外国(とつくに)からの賓客は、どんな風に眺めたのだろう。
この日本庭園を。


    

  


確かに景色を眺めてそぞろ歩いていれば、色んなことが思い出される。
同時に色んなことを忘れることも出来る。
ほんの少しの間ではあるけれど、想い出の中を行ったり来たり。
現実から離れて行ったり来たり。


    

  


この日が家族3人、今年最後の万博公園になるはず。
すぐに来られるよ、と思っているうちに時間はどんどん過ぎる。
ドップラー効果を連想させる速さで。

薔薇空間 宮廷画家ルドゥーテとバラに魅せられた人々

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きみのためのバラ (新潮文庫)

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