新藤兼人監督逝く
100歳で没。大往生。
29日に亡くなったそうだ。老衰。
3ヶ月前のブルーリボン賞の席には姿を見せていたそう。
凄い。
あらまほしき最期かな。
名監督だということは知っている。社会派の監督だと。
それなのに、私の記憶の中に鮮明に残っているのは、
『午後の遺言状』ただ一作のみ。どうしたものか。
あの世界の、何とも言えない人間関係、
枯れたようでいて枯れていない人間関係、女の怖さ、なまめかしさ、
そういうもが何とも言えずに体の奥底にまで響いてきて、
忘れられなかった映画。
- 出版社/メーカー: パイオニアLDC
- 発売日: 2001/10/10
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 46回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
20年ほど前の映画だから、若さを失いつつある自分を意識して、
気になる映画だったのだろうか。
女性として中途半端な人生に苛ついていたので、
思わず惹かれる内容だったのか。
とにかく今も忘れられない『午後の遺言状』。
けれどもその真価が分かりきれていないジレンマを抱えての、
記憶の底での感慨。
だって、杉村春子が出演、新藤兼人監督の妻、乙羽信子の最後の出演、
45年ぶりに銀幕に復帰した朝霧鏡子、三代女優の競演とか言われても、
その3人の最盛期を知らないんだもの。
だから、実際の所、新藤監督の活躍した時代、
脂ののった時期の凄さ、作品とリアルタイムに生活したわけでもないので、
この作品しか思い出さない、というか、思い出せない。
芸術かな短命な人と長生きな人に分かれるけれど、
監督はご長命であっただけに、沢山作品を残すことが出来た。
それだけ忘れられずに生きてこられた。
年を取っていたからこそ、撮れる映画も沢山あった。
そう思うと、『午後の遺言状』の意味合いは深みを増す。
というか、そういう高齢者と言われる年齢にあって、
常に最前線、現場に立っていたことに敬意を表す。
お疲れ様でした、監督。さようなら。
- 作者: 新藤兼人
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/08/03
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: 新藤兼人
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1998/02/20
- メディア: 新書
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (2件) を見る