Festina Lente2

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新藤兼人監督逝く

100歳で没。大往生。
29日に亡くなったそうだ。老衰。
3ヶ月前のブルーリボン賞の席には姿を見せていたそう。
凄い。
あらまほしき最期かな。


名監督だということは知っている。社会派の監督だと。
それなのに、私の記憶の中に鮮明に残っているのは、
午後の遺言状』ただ一作のみ。どうしたものか。
あの世界の、何とも言えない人間関係、
枯れたようでいて枯れていない人間関係、女の怖さ、なまめかしさ、
そういうもが何とも言えずに体の奥底にまで響いてきて、
忘れられなかった映画。


午後の遺言状 [DVD]

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20年ほど前の映画だから、若さを失いつつある自分を意識して、
気になる映画だったのだろうか。
女性として中途半端な人生に苛ついていたので、
思わず惹かれる内容だったのか。
とにかく今も忘れられない『午後の遺言状』。
けれどもその真価が分かりきれていないジレンマを抱えての、
記憶の底での感慨。


だって、杉村春子が出演、新藤兼人監督の妻、乙羽信子の最後の出演、
45年ぶりに銀幕に復帰した朝霧鏡子、三代女優の競演とか言われても、
その3人の最盛期を知らないんだもの。
だから、実際の所、新藤監督の活躍した時代、
脂ののった時期の凄さ、作品とリアルタイムに生活したわけでもないので、
この作品しか思い出さない、というか、思い出せない。


芸術かな短命な人と長生きな人に分かれるけれど、
監督はご長命であっただけに、沢山作品を残すことが出来た。
それだけ忘れられずに生きてこられた。
年を取っていたからこそ、撮れる映画も沢山あった。
そう思うと、『午後の遺言状』の意味合いは深みを増す。


というか、そういう高齢者と言われる年齢にあって、
常に最前線、現場に立っていたことに敬意を表す。
お疲れ様でした、監督。さようなら。

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