パンフレットを捨てながら

引っ越し準備で今まで貯めていたパンフレット類を処分する。
旅行した所、出かけた所、親子で1泊、2泊3日、想い出がこぼれていく。
要らないものばかりだと言うけれど、捨てる私は辛い。
たかが紙切れと言うけれど、同じものは二度と手に入らない。
映画の散らし、名所旧跡見所案内、偶然手に入ったちらし、
出張先で貰ったもの、駅や図書館、博物館で手に入れた様々なちらし。
そんなもの集めてどうするんだと言うけれど、
確かに丁寧に保存していたわけではないけれど。

想い出がこぼれていく。あれもこれも欲張って、
とーちゃんかーちゃんが元気な家に一緒にどこかに出かけた、
そんな想い出を一杯作っておこうと気合いを入れて、
あれもこれもと欲張って、欲張って、欲張って。
1人でも遊べるように、どんな所にどんな面白いものがあるか、
音楽、美術、目も耳も色んな所に向けられるよう、
歴史の重み、楽しさ、原因と結果の関係がどうなったか、
由来、いわれがどんなものであったか。

小さなものから大きなものまで蘊蓄の嵐、知識の宝庫、
お手軽紹介、永久保存版にしたいような内容のもの、
いずれもチラシはチラシ、ではなく、生活必需品。
何も買い物バーゲンのチラシが欲しいわけではない。
沿線の催し、町内会の企画、本当は参加させたかった子供会、
ハイキングやピクニック、何度でも訪れたいひなびた温泉町、
ドライブ著中の道の駅や地元の朝市。

思い出せばきりがない。行きたい、行きたかった、
もう一度訪れたい、欲張りなお出かけ願望。
一緒に出掛けられる時間が、人生どれだけあるとでも？
緑の風の中、小高い丘の上、茅葺屋根の向こうに見える白い雲、
鮎の掴み取り、夜の花火、異国の食べ物市、コンサート。
野山も街中もたった一人ではなく、家族で出かけたからこそ。
美味しいランチ、贅沢なディナー、気楽な屋台、朝寝坊に宵っ張り。

思い出はコラージュでいっぱいなのに、記憶は時間の流れに押しやられ、
パンフレットはどんどんごみの山になる。
捨てていけといわれるのが悲しい。
捨てなくては前へ進めないのかもしれないと思うと、さらに哀しい。