レ・ミゼラブル

職場で落ち込んだ時、気分転換は別世界に浸るに限る。
乗り気ではなかった娘を誘って来てみれば、やはり良作、
繰り広げられる迫力のある舞台と音楽に魅せられる、ミュージカル。
別の映画で筋肉隆々の超能力者荒々しいウルバリンこと、
ヒュー・ジャックマンが別人となって現れ、
受刑者・市長・ヒロインの悩める父を演じる。
そう、彼の名はジャン・バルジャン。

新装版 「レ・ミゼラブル」百六景 (文春文庫)

私の知識は少年少女世界の名作文学50巻（小学館）範疇内。
それでも『ああ無情』の挿絵はオリジナル版から取られていて、
コゼットの姿には哀れを禁じ得なかった。
外国文学の中にある自分の知らない世界に、
どれだけドキドキしたことだろう。
（後に『逃亡者』というドラマや映画を知った時も、追跡してくる人間の、
無情さや無慈悲さに悲憤慷慨したのは、『ああ無情』のせいかもしれない）

レ・ミゼラブル 全4冊 (岩波文庫)

過ちが許される、過ちを償う、努力する、
そのために自分がなすべき事は？
キリスト教の精神を知らないと理解しにくい部分もあるが、
仏教の精神と置き換えても何ら変わらないと思う。
それにしても、失うことと得ることが表裏一体であり、
追うものと追われるものがコインの裏表であるこの世界。
何故に、この世界を作りたもうたのかと問う。
何故に、彼を、彼女を自分に遣わしたのかと。
何故に自分をこのような境遇に陥れたのかと。

日経エンタテインメント! ミュージカル映画バイブル (日経BPムック)

人が、誰もが疑問に思いながら生きている、生きていく。
生き抜いていかざるを得ない世界で、
夢見るもの、挫折するもの、全うであろうとするもの、
信念が揺らぐもの、自信を失うもの、
知らなかったことが明らかになり、
知らされなかったことも明るみに出され、
知らずにいることが罪だとさえ思われ。

Les Miserables Original London Cast / O.L.C.

生きるとは愛すること。
では、死は？

様々な比喩を、生き様を、人の思いを、
歴史を、情熱を秘めて物語が進んでいく。
一緒に観た娘は一体何を感じただろうか。
「良かったけれど、重い話だなあ」
･･･「重い話」それでも構わない。
メロディも時代も、何もかも横に置いて「重い話」でも。
その「重い話」がいつかは自分の世界の話になり、
自分自身が主人公になるまであと少し、時間があるから。
そう、「重い話」だと感じて貰わなければ、困る。

Les Miserables Complete Symphonic Recordings

レ・ミゼラブル。
歌声よりも高らかに、そして重々しく、
人の心に訴えかける「人生のありよう」よ。
理不尽で、情けなくも素晴らしく、
愚かしくも哀しい、「人間のありよう」よ。

娘よ、君はいつか知るだろう。
謳われ描かれた世界は広く、それでいて狭い。
自分が知ることの出来る世界は限られていても、
誰よりも深く自分自身でいられる世界。
それは限りなく狭く、そして広いことを。

レ・ミゼラブル~サウンドトラック

レ・ミゼラブル　２５周年記念コンサート