Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ルーパー

SFの世界では、未来から来た自分は過去の自分と接触できないはず。
でも、ドラえもんでも何でもそういうタブー無しで、
過去に干渉したり、過去から未来に出かけてちょっかい出したり、
逆に現在から過去に遡ってあれこれと・・・。
タイムトラベルものはSF映画の定番とはいえ、明るい未来のために用意される、
消して暗い未来を創るためではないというのが鉄則。
そういう点ではこの映画もそうだ、とは言える。
なのに、見終わった後の感じが酷く悪い。気持ちよくない。
とても明るい未来が残されているとは余り思えない。


主人公は簡単に言えば殺し屋だ。
それも、生体認識表が埋め込まれていて殺人が難しい未来から、
生きたまま転送されてくる、未来からの依頼を受けて、
未来から現れた人間を殺して始末するという、荒んだ殺し屋。
礼金は銀だが、たまに金を背負って現れる奴もいる。
それは、殺し屋の30年後の自分。
依頼は絶対に断れない。仕事は仕事。
自分で自分を殺して、あと30年確約された余命を楽しむ、
というのが殺し屋稼業の定番という設定。


何とも殺伐とした未来。突然変異も増えていて、
X−menの世界ではないまでも、超能力者がいる設定。
しかし、コインを浮かせるぐらいが関の山の念動力では、
ちょっとした余興にしかならないらしい。
そんな時代、そんな生活を続けている主人公は、
いつの日かフランスに行くことを夢見て、銀をせっせと貯めている。
そこへ現れた金を背負った未来からの自分。
彼が殺される前に逃げたことから、物語はどんどん進む。


未来からの自分と現在の自分、つまり過去と未来が対峙する形。
協力してよりよき未来を、というわけではないらしい。
まず、そこが何となく違和感。
元々は同じ自分の筈が、若い自分と老いた自分の間には確執、
軋轢が深くなるばかり。


未来の自分にメッセージを送るために、自分の体を傷つける主人公。
そうすると老いた未来の自分の体にメッセージが「傷」となって浮かび上がる。
何ともダイレクトで「ぞっとしない」方法だ。
未来からやって来た自分、30年後殺されるはずの自分は、
妻と自分の未来を取り戻すために、ある人物を殺そうとしていた。

Ost: Looper

Ost: Looper


殺伐とした社会に殺伐とした生き方をして来た自分を変えた妻、
その妻を殺され過去に転送されて殺されるすんでの所を逃げて、
未来社会を支配する人物を、子どものうちに抹殺して、
未来を変えるのだという。
しかし、未来の老いた自分が必死になって探す人物は、
まだ幼い子ども、幼児。
まるでヘロデ王の幼児虐殺のよう。


確かにPG12だけのことはある。殺人、麻薬、幼児虐殺、
マイナーな未来映画は青少年、特に小学生レベルには宜しくない。
成人保護者の同伴が適当とあるが、娘には見せたくない映画。
性・暴力・残酷・麻薬描写・ホラー映画、
小学生が真似をする可能性のある映画が審査の対象とされるだけのことはある。


有名な俳優が出ている話題作だとしても、
ブルース・ウィリスとゴードン=レビットの主演だとしても、
見るんじゃなかったと後味の悪さだけ残る映画だった。
超能力の在り方にしても、ちっとも良くない。
むしろ、制御できない力の巻き添えで近親者を殺してしまった、
そういうトラウマを抱えて生きていく親子が未来の鍵を握る。


厳密に言うと、マイナーなパワーを持った息子を母親が愛し通し、
育て抜くことが出来るかどうか、その一点。
主人公が殺し屋家業にまで転落して荒んだ生活に入っていった理由、
それは母親に捨てられたから。
子どもから母親を奪ってはならないと気付いた、若い主人公が、
未来から来た老いた自分を、双方共々消してしまうことで、
この親子の存在を存続させる形を選択することで、
未来をに望みを託す、そういう終わらせ方はどうか?


とてもハッピー・エンドには思えないし、
人生観も未来観も歪んでしまいそう。
職業観としても、何もかも。
こういう映画を作ることと、未来と過去が繋がっている、
ループ、ルーパーであることがどうしてもプラス思考には繋がらない。
この作品の良さが見出せなかった。
負の連鎖を強調するだけの、昨日のレディスデーのレイトショ−。
見るんじゃなかった。