THE HEART OF THOMAS

密林に頼んでいた『THE　HEART　OF　THOMAS　（トーマの心臓）』が届いた。
高1の時友人にプレゼントされた原作、
この単行本をどれほど読み返したことか。
あれから四半世紀を超えて、再びこの物語に英語で挑戦できる。
大丈夫、台詞は全て頭に入っている。
如月をこの世界で埋め尽くすのだ。

Heart of Thomas

じっくり何度も読み返したくなる作品。
それはやはり思春期に読んだ作品。
漫画というよりは劇画に近いけれど、絵の繊細なこと、
美しいこと、分かり易いこと、そして人間関係や、
心理描写の巧みなこと、全く古さを感じさせない。
愛情・友情・羨望・嫉妬、
何とも切ない世界、親子の情愛、師弟の関係、
人の死を取り巻く様々な思惑、キリスト教的な宗教観。

トーマの心臓 1 (フラワーコミックス)

連載当時、編集部は打ち切りさえ考えたというが、
時代の先端を行っていた、ギムナジウムを舞台にしたこの作品は、
別の漫画家が描いていたような性愛的な要素は無く、
純粋に思春期特有の世界感を描いていて、秀逸だった。
いまだにファンが多いのも、２次的な作品が多く作られているのも、
発表されてから40年ほど経っているのに、英語版が出るというのも、
この作品の根強い人気を表している。

トーマの心臓 2 (フラワーコミックス)

源氏物語を漫画化して一世を風靡した大和和紀の『あさきゆめみし』や
『ドラえもん』の英語版はあっても、
漫画界の純文学とも言えるこの作品の英語版がなかったのは、
何故かと不思議に思っていたが、これで、如月を
少し青春の香りを懐かしみながら、英語で読み進めて、
振り返る時間を持とうと思う。

トーマの心臓 (3) (フラワーコミックス)

トーマは散歩をしながら父親に問う。
「どうしてお父さん、
　神さまはそんなさびしいものに人間をおつくりになったの？　
　ひとりでは生きていけないように」。

このような問いかけを持つ子供、
会話ができる親子がどれほどいるだろう？
父親が何と答えたか？　
トーマはどうなったのか。
「トーマの心臓」とは何なのか。
気になる方は原作をお読み下さい。

トーマの心臓 (小学館文庫)

　

トーマの心臓1 萩尾望都Perfect Selection 1 (フラワーコミックススペシャル)

この作品は思春期真っ只中の人にお勧めですが、
文学的な漫画作品を読みたい人には特にお勧め。
キリスト教の知識があれば、更に哲学的な考察も。
そして、出来ればその続編も読むと物語の周辺がよく分かる。
さらに、『トーマの心臓』の奥深さを再確認できる。
萩尾望都作品、『ポーの一族』と並んで前期の最高傑作の一つ。
じっくり英語で読み込もう。日本語の台詞の一つ一つをなぞりながら、
思い出しながら、思い出に浸りながら。

トーマの心臓2 萩尾望都Perfect Selection 2 (フラワーコミックスペシャル)

　

訪問者 (小学館文庫)

　

A Drunken Dream and Other Stories