Festina Lente2

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96時間 リベンジ

実は前作の『96時間』を見ていない。
だから、リーアム・ニーソンの演じる父親が、
どれほど親ばかぶりを発揮して、誘拐された娘を助けるために、
その本職である特殊技能を駆使して犯人を追い詰め、
娘を取り戻すかという見せ所を知らない。


でも、昨日の映画の後味が悪かったので、
スカッとする映画、結末の分かっているハッピーエンドな映画、
アクションがあっても、勧善懲悪になる作品が見たかった。
というわけで、久しぶりにファースト・デーの映画鑑賞。
1日おいて映画を見る、ちょっと贅沢な月末、月初め。
というか、余りにも『ルーパー』の後味が悪かったので、
験直しというか、気分転換にこれくらいがいいかなあと。


リーアム・ニーソンは結構好きな役者の部類。
リュック・ベッソン製作・脚本だったら、ジェットコースター・ムービー。
余り悩まずにどんどんテンポよく結末に進んでいくだろうと踏んで、
正解。あっという間に見終わった感覚。(実際92分しかない)
小気味良いぐらいどんどん展開して、やっぱりあっという間に正義は勝つ。
おまけに分かれた妻子との復縁を感じさせる、親子の絆、夫婦の絆、
けれども、子離れも必要と感じさせる終盤、微笑ましい。


勧善懲悪にもドンパチ、暴力シーンが含まれるのだけれど、
どういう理由で相手を消していくのかわからない、
命令されるままに無抵抗な人間をどんどん殺戮していった、
『ルーパー』のシーンよりも、遥かにわかりやすい納得しやすい、
誘拐組織とその背景の理不尽この上ない復讐劇を、
見事に切り抜けていく、主人公のスーパー手腕にドキドキハラハラ。


それが海外旅行気分を盛り上げるイスタンブールの街中を背景に、
縦横無尽に駆け回るスーク、地道、屋根の上、カーアクション、
ハマムと、観光気分にも浸れるお約束場面満載。
サービス精神たっぷりなのが、嬉しい。
要は頭をからっぽにして見られる単純アクション映画。

ただ気になるのは、いつでも西洋人が善でそれ以外が悪役。
誘拐組織の背景がアラブ系だったり、トルコの少数民族と重なり、
西洋人同士の敵対関係、欧米にはびこる諸悪の根源という構図にならないこと。
まあ、幼児や婦女子に対する「財産意識」や男尊女卑の観点は、
宗教文化の観点から否めない部分も存在するけれど、
それでも、あまりにも露骨かしらん?


良かったのは、父親の指示に従って「生き抜くため」に
娘が脱出劇・救出劇の一翼を担うこと。
車の免許を取ることさえもデート優先で、父親との約束をないがしろにし、
「父親面されること、おせっかいを焼かれること」にへきえきとしていた娘が、
両親を救うために「囚われの姫君」役から脱して行動していたのは、
それなりに嬉しい(どうして嬉しく感じてしまうのかな)。


カーチェイスも超ハードなドライビングスクールといった感。
親子の情愛に執着するのは敵方も同じなのだが、
向こうは父と息子、こちらは父と娘、
観客がどちらを贔屓にするかはともかくとして、
邪まな稼業で生き延びてきた山岳地帯の寒村の諸事情は、
法外な出稼ぎで一族を栄えさせる、よくあるパターンの背景。
哀れを催さないではないが、映画の続編は既に予想される展開、
粗筋のもとに製作されているので、結末にブレがない。
特にこういう勧善懲悪ものではブレがないから、安心して見ていられる。


仕事や何やかや、面倒なことが、自分には不向きなことが多いものの、
頭の中を空っぽにして、すっきりリセットをさせるには、
まあ、適当な1時間半。
こういう時は車を飛ばしてシネコンまで15分以内という、夜に感謝。
それにしても、現代のお姫様願望、お馬に乗った王子様を逆手にとって、
「絶体絶命でも助けに来てくれる存在」を物語の主人公に据える、
当たり外れのない、確実に稼げる作品は観るのが楽でいい。
観客の側からは疲れなくていい。
少々荒っぽい作りでも、チャンバラと同じ。
剣豪が勝つ。
同じ構造。


そして、親が子供を救う。
父親が娘を、(元)夫が(元)妻を。
少し成長した娘が、両親を。
この構造が、観客を安心させる。
あるべき枠組み、絆を再確認させてくれるから。
(そのマイナスの形、鏡に映したように対照的な形は、敵側)
現実に、こんなスリリングな96時間は誰でも御免だと思うけれどね。


もう一つ、瀕死の妻を救う設定。
現実に奥さんを不慮の事故で亡くしているリーアム・ニーソン
役柄とはいえ、大変だなとちょっと重ねて思ってしまった。
むろん仕事上の役柄だから、気にしていては始まらないのだろうけれど。
そんなことを考えながら見てしまうって、やっぱり年だな。

冬の航海

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