Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

歌舞伎展−江戸の芝居小屋へ

博物館・美術館話題がまだまだ続く。
実は3月の初め、有給休暇消化に1日休みを取った。
転勤先が分からない土日、関東で過ごす休日。
1日目は川崎の工場地帯の夜景を、2日目は寺と梅見、
雅叙園百段雛飾りとガード下焼き肉、3日目月曜日は博物館・美術館。


ところが哀しいことに、月曜日開いている博物館・美術館は少ない。
荷物カートを持って、最終的には新幹線に乗るため東京駅に向かうにしても、
何処で何を見ればいいのか非常に限られている。
なので、取りあえず、・・・そう取りあえず気を取り直して、
浮世絵スタンプラリー。


    


ブラタモリの影響もあって、
関西にあってもお江戸の町歩きには興味津々。
歴史と地理と好奇心をドッキングさせて歩くのは大好き。
だから雅叙園に行く途中、目黒の坂道は楽しかった。
昔はここから富士山が・・・なんて想像するのは。


  


しかし、家人との待ち合わせで銀座に出たので、スタンプラリー残り三つは
家人が引き継ぎ、終業後の夜に達成してくれた。
予想外にまずかった銀座でのイタリアンランチを経て、
私が向かったのは松屋。そこでは書道展を堪能。
普段美しい水茎の跡にも堂々たる墨痕にもご縁がない私ではあるが、
先輩ブログ(→http://asobimozi.exblog.jp/)から学ぶことは多い。


追悼 生誕100年 杉岡華邨展は、
私の卒論、懐かしい『万葉集』の和歌がクリアファイルになっていた。
むろん購入。普段文字を相まみえる機会が少ないだけに、良い時間が持てた。
草書・行書の崩した文字を読めるはずがない私なのだが、
(もちろん解説は付いているが)
その紙面に広がる文字を、筆の跡を眺めているだけで、
何故か心に感じるものがある。絵を眺め入る時のように。


さて、杉岡華邨氏のもと、書道が盛んな奈良というイメージが強い。
近隣の書道教室の先生方は、「奈良まで行く」とよく口にされるからだ。
奈良は墨や筆の名産地だからと昔は思っていたのだが、
指導者在ってこその、奥深い書の世界。


しかし、この日の一番メインはこちら。
これを見るために夏以来再びやって来ました。
新しい歌舞伎座が誕生する記念イベント、いや、展覧会。
楽しい展示でワクワクさせてくれるサントリー美術館
歌舞伎座新開場記念展 歌舞伎 ―江戸の芝居小屋―』
むろん、詳しい解説は先輩ブログを参考に。



それほど熱烈な歌舞伎ファンではないけれど、歌舞伎界はかまびすしい。
いや、危機的状況とさえ言っていい。
せっかく新しい歌舞伎座が出来ようという矢先、
屋台骨といっても言いスターを失っってしまった。
中村勘三郎市川團十郎が相次いでこの世を去ったのは、
歌舞伎ファンでなくても、何とも惜しくてやるせない。


若い頃は安く歌舞伎を見られる会の「つて」で、観に行けた。
母も元気で一緒に観に行こうと誘ってくれたりもした。
しかし、仕事に追われ時間的な余裕、金銭的な余裕もなくなると、
手近で手頃な気分転換にかまけて、舞台や劇からは足が遠のいた。
臨場感溢れる世界の素晴らしさを知っていても、
わざわざ出向くことをしなくなってしまったのだ。


それゆえ、歌舞伎の世界の草創期、絵巻物に繰り広げられた、
生活感溢れる当時の熱気、気合い、笑い、楽しさ面白さ、
悲痛な覚悟、御触書、人気の背景等、
垣間見る「人生」の諸相にはっと胸を突かれる。
非日常の空間を演出する側と観客との間にある、それに。


家人に見送られ、ささやかな関東での休暇を跡にした3月4日。
その余韻と、転勤先が分かってじわじわ押し寄せる現実の狭間にあって、
美術館・博物館、仕事に関係のない夏炉冬扇の世界の思い出に浸る私を、
弥生の春は何処まで許してくれるだろうか。
そんな思いのよぎる今日。

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