入谷朝顔市と夏目漱石の世界美術展
本来は家人と共に見たかった漱石の美術世界展。
そのためにわざわざ上京したのに、社宅の寄り合いがあるという。
本命に出向く前に、せっかく上野まで足を伸ばすなら
その一駅先の入谷にて朝顔市、欲張ったのが運の尽き。
恐れ入谷の鬼子母神、地下鉄は空いていたのに、地上は別世界。
浴衣姿に屋台の出店、物凄い人出、想定外の梅雨明け。
猛暑で哀れなほど萎れた朝顔の鉢がずらりと並んで、交通規制。
伊勢物語の東下りの風情を残す言問通りに憧れ出向いたのは、
独りよがりな世間知らずのお上りさんの私。
荒くたい関東弁の下町のおじさんの物言いに辟易としながら鬼子母神に参拝、
朝顔の御守りや記念切手、手ぬぐいなどを求めたものの、
季節の風物詩や涼を感じる以前の問題。
人混みにうんざりしただけで、這々の体で退散する羽目に。
裏通りに一本入った所で有機野菜を商う出店などがあり、
そこで休憩がてら味見をさせて貰った中でも、
生でもかじれる甘いトウモロコシは美味で、おやつに購入。
上野にとって返し、1度しか言ったことのない築地を思い出しながら
駅ビルで寿司をつまみ、エネルギー充填後、
午後一杯を初めて訪れる東京芸術大学附属美術館で過ごした。
念願の漱石の世界美術展。
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せっかくだから学生さんの作品展示も見て、その辺の建物もキョロキョロ。
明日までの展覧会の土曜日、漱石人気はさることながら、
展示の仕方が世紀末美術の退廃的な雰囲気を漂わせる、
イギリス独特の香りが漂ってくるものが多く、楽しいのなんの。
文学史の教科書でしか見たことのない作品、
『吾輩は猫である』の装丁が、かくも一冊一冊違っていて、豪華とは。
文、文章、本、装丁、挿絵、デザイン、絵画、洋書、ファッション。
明治を駆け抜けた文豪が影響を受けた欧米の文化の香りが、
えもいわれぬ薫りを伴って会場全体を燻すが如き、
知的好奇心の醸す熱気に当たって、買い物しすぎた。
心は満足なれど、体は一服を求めて、坊ちゃんビールの閉館時。
さて、折良く上野公園で家人と待ち合わせ。
これから七夕前夜祭。合羽橋の商店街へと繰り出そう。
笹の葉飾りが揺れる宵、ひとときの風流を求めて。
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