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エリジウム

エリジウムイリジウムだったら元素名。
エリジウムスペースコロニーの名前なんですと。
映画の中ではつまり別世界、汚染された地球とは異なる理想的な環境。
医療設備も整い、自然も管理され、皆健康で裕福な暮らしをしている。
あからさまな身分差別の元、汚穢溜めのようになっている地球には
貧乏で医療サービスもまともに受けられない人々がひしめいている。
ここまで露骨に差別的な環境を打ち出してくるか、さすが海外作品。


わかり易いと言えばわかり易い労働者搾取、スラム化した地球、
お月様ならぬ天空に浮かぶスペースコロニーは貧富の差の象徴。
それにしては行ったり来たりが意外と簡単な。
おまけに管理しているコンピュータシステムの改竄過程がヤマ場なのだけれど、
不正ダウンロード、書き換えは死に値するところが何とも。
情報を開くゲートは生死に関わるって訳ね。



それでも地球市民エリジウム市民に書き換えることで、
医療ロボットが地球に派遣され治療を始めるシーン、
何だかなあ…。
本来ならば逆だよね。
地球からスペースコロニーにあらゆる物品を供給し、
人的な交流を交えて環境を刷新し、固定化しないように配慮する。
そうあるべき筈のものが、独裁体制の元で硬直化特権化していく。


まさに、あちらこちらにある国家体制の縮図、ではあるな。
地球規模にまで至っていないだけで、この類似、矮小化されたモデルは
至る所に散見している、と言っても過言ではない。
ある意味自虐的なSF作品ではあるよね。
そういう中で、冷酷な指導者の役割を演じるジョディ・フォスター
反体制派の労働者階級の企てる反乱。
スペースコロニーへの移民を認めない特権階級。
どこかの国の政治事情と重なるなあ。


エリジウム、恐らく余り受けない映画だと思う。
特に政治家は自分がけなされているみたいで、嫌じゃないのかな。
重なって見えてくるものが沢山あるのでは。
さて、テロに陥ることなく多くの民衆を救うことのできる自己犠牲は尊い
現実にはそういう事態は起きないだろうけれど。


ちなみにこの映画米国ではR指定
それほど強烈な銃撃戦があるとは思えないが、
反体制的な思想を意識させたくなかった、植え付けたくなかったというのが
本音では無かろうか。
一触即発の何かを刺激しそうで。


そして、『第9地区』の強烈さから比べると、やはり綺麗事で終わっている気がする。
マット・ディモンのマッチョな行動派、反体制人間と
ジョディ・フォスターの冷徹な上流階級然とした演技よりも、
ゴキブリ型の宇宙人として生きていく主人公の変容と差別社会の激しさに比べれば。

第9地区 (字幕版)

第9地区 (字幕版)