明日はコンサート

最初はチケットを取る気持ちはなかった。
聞きたいとは思っていたけれど、コンサートに出かける情熱が。
新聞に追加公演決定、その文字が何度も躍っていたのを知っていた。
明日だ。その日はいよいよ明日に迫っていた。
それでも私にとっては、そこそこな金額なので気が引けた。
娘はビートルズは好きだが、コンサートに行く気はないという。
確かに、家族全員で行くには高すぎる、か？
いや、海外旅行に行ったと思えば安いよ。

御年71歳の彼がやって来る。
どうする？　聞く？　聞かない？　聞いてみたい？
後から後悔するぐらいだったら、良い席なんかにこだわらず、
とにかく足を運んでみようよ。
「お母さん、一人でも行っておいでよ」娘が言う。

図書館に行くついでに、駅前のチケットショップに。
幸か不幸か、いや、幸いだというべきなのだろう。
全く良い席とは言えないけれど、チケットは残っていた。
ここからだと、殆ど見えないと言ってもいい、悪い席だけれど。
生の演奏が聴けるのならば、いいんじゃないの？
そう、自分に言い聞かせて、チケットを買う。
手数料込みで、東京まで新幹線で行けるお値段。

でも、とにかくチケットを、公演の前日に手にする。
売り場のお姉さんは、「今から払い戻し、返金は出来ませんが」と。
念を押されるほど、だったのか、私。
ちなみにまだ余っていた席は、機材の影でステージが見えにくい席。
私は影にはならないけれど、ステージのほぼ真横スタンド。
まあ、いいさ。

逢いに行くさ、聞きに行くさ。
これが最後になるかも知れない、彼の歌声を直に聞けるなんて。
だから、明日はコンサート。

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