春立つ今日
春立ちぬ。
昨日は節分、今日は立春。
何かいいことあるかしら。
袖ひちて むすびし水の こほれるを 春立つけふの 風やとくらむ
紀貫之―あるかなきかの世にこそありけれ (ミネルヴァ日本評伝選)
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律儀に毎年思い出すこの歌、紀貫之。
受験教育の賜物で、これ1つでどれだけの技が隠されているか、
理知的観念的な古今和歌集の賜物と叩き込まれて幾星霜。
歌のやりとり1つが恋愛となり政治の駆け引き、
むろん人格そのものを表すバロメーターであった時代、
自分の技と努力を知性を持って示すは当然の時代。
文字も美しく、歌も麗しく。
もっとも、庶民は読み書きには無縁。
(一部の人々が和歌を嗜むのは歌謡の世界の名残なのか、
万葉集の時代からの伝統なのか)
一部の貴族、恵まれた階級の知的な自己表現の世界は、
一般庶民の知るところではなかったけれど・・・。
思い出をよすがに、あれこれ物思う立春の、
何とも美しく絵になる事よ。
心の中の想念だけは自分の自由自在に操れる、
誰にも侵されぬ世界であるからこそ、いっそう。
春立ちぬ。
何か、いいこと無いかなあ。
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