Festina Lente2

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レッド・クリフ(part1)より『三国志』

とりあえず痛みの治まった抜歯跡に一本義歯を入れるために、型取り。
前回傷口が塞がっていない為、上のみ。今回は下のみ。
かみ合わせも取るので、型取りだけでちょっとした時間。
その時は何でもなかったけれど、やはりドライソケットで傷の直りが遅い分、
刺激があったのか、(型を取って外す時引っ張るのは歯肉がはがれる感じ)
鈍痛が増してきた。昼食も取っていないが、それほど食べる元気もない。
夕べ寝ていないし、とりあえず休憩する場所を探そう。


座れる場所=映画館。今から始まるのは『レッド・クリフ』
観ようとは思っていたけれど、過大な期待もしていない映画。
なぜならあの長い『三国志』の物語のごくごく一部だけを、
ハイライトとして取り上げている作品だから、ある意味邪道。
というか、『三国志』の話を全く知らないで、この映画だけ観たら、
各人物像に誤解が生じるような気もする。
まあ、難しいこと考えずに娯楽映画と言われればそれまでだが。


「世界史」で授業。「東洋史」という名前で受けることはなかった世代。
されど、古代中国史の場面で小学生の時に読んだ『三国志』が、
どれほど役に立ったか。人物名も地理もばっちり。
小学生用の読書と侮るなかれ。
「少年少女世界の名作文学50」の『三国志』のお陰で、
難しい漢字も人名も、各エピソードも人物関係も、
大まかな所はしっかり頭の中に半世紀近く残っている。


私は横山光輝の漫画の『三国志』は読んではいない。
ストーリー的には長い分、詳しいのかも知れないけれど、
あの漫画漫画した画風が劇画調の話のイメージとギャップが大きく、
あまりにもそぐわないので読む気がしなかったのだ。
小学館の世界の名作文学の挿絵のほうが、遥かにリアルで格調高く、
その場面を印象付けるのにふさわしかったと今でも信じている。


劉備関羽張飛3人の英雄を印象付ける桃園での誓い、
雪の中、孔明を訪ねる劉備関羽の愛馬となる赤兎馬
レッド・クリフなどと英語で言ってしまうと感動が薄れる、「赤壁の戦い」。
華陀膏で有名な華陀が毒矢の刺さった関羽のうでの骨を削る図、
あの挿絵も凄かった。青く錆を吹いたような変色した骨を削る様子、
麻酔代わりに酒盃を傾けながら碁を打ちつつ、名医に腕と命を預ける
猛将関羽の肝の据わりように感動した。


劉備が草鞋売りと蔑まれていた事も、張飛が肉屋風情と侮られていたのも、
孔明の人徳と聡明さに周愈が静かに嫉妬し、ライバル意識が高じ、
映画の中での矢傷が結局命取りになるのも、
ストーリーの中の様々な複線を知っていて画面を見れば、
一粒で二度美味しいの構図だが、何も知らずに映画だけ見ても・・・。
まあ、若い観客世代は、ゲームの三国志で鍛えた世代が多いのかも。

RED CLIFF~心・戦~

RED CLIFF~心・戦~

文庫版三国志完結記念セット(全14巻)

文庫版三国志完結記念セット(全14巻)



映画そのものはまあまあ。戦闘シーンには緊迫感もあるし、
中国映画特有の人海戦術的迫力、中国語の会話の響き、
例えば馬を駆るシーンの掛け声、琴を弾じる場面、
音の掛け合いに戦に通じる響きを隠し持つ演出、
それはそれでなかなかいいのだが・・・、戦闘場面以外もかなり冗長。
特に笛の場面、牛盗人の場面で周瑜の人徳を強調したかったのだろうが。
赤壁の戦いに焦点を合わせて、かっこよく描きすぎたかなあ。


若手の二人、孔明周瑜に焦点を当てたために、
三国志の他の武将は随分おっさんおっさんした風情で描かれ、
ちょっとかわいそうな気がしないでもない。
劉備も情けなければ、張飛もコメディアンみたいで、
関羽のみがややいかめしく強面(こわもて)であったものの、
人物描写が漫画風、ステレオタイプ過ぎた。


講談だから、演義だからそういう人物描写で構わないと言われたら、
少々身も蓋もないような気がするのだが、ストーリーを知らない人に取れば、
こういう演出の方が人物像を把握し易くていいのだろう。
曹操を助平で強欲な権力者に描くのも右に倣えで、
雄大な景色やリアルな戦闘風景の対極に、軍師二人をクローズアップすべく、
他の英雄達を省略した感があって、残念だった。


映画を見ながら、自分の過去の記憶の中に刷り込まれている
三国志』の場面場面のエピソードの力に驚かされた。
そして、漢文の世界で学んだつたない知識が蘇った。
戦いの場面での陣形も、亀の姿を見ると八卦を、
陣立ての中にも雁や鶴を、太鼓には鼓腹撃壌の世界を、
討ち死にする兵士に、「万骨枯れて一将功成る」の有様を見せ付けられた。


中国映画には制限が掛かるからスプラッタにならぬよう、
残酷なシーンが入らぬよう極力セーブした戦闘場面で、
様々な平気が出てきたこと、合図に用いていた太鼓、
北斗の拳』ではないけれど、急所・秘孔を突く場面等、
西洋映画に無い中国らしさが随所に見られた。
ちょっとばかり昨年の映画『300』を意識した映像も。


とにかくそういう今まで見たものとの関連が、
映画を見ながら走馬灯のように光る。
心の中でやり取りしながら映画を見るので忙しい。
ある意味、映画の間延びした部分、省略されえいる部分、
それをイメージで補って観ているといってもいい。
しみじみそれを思わされた、本日。


映画の出来は・・・、まあ、続編が来年春公開。
そちらを観るためには、順当にpart1を観ておけば。
その程度ではないでしょうか・・・。
超大作の肝心要はCGが作り出す迫力なので、
それ以外の所、どの場面で楽しめるかは人それぞれ。
長い映画の割りに、寝ずに見られるのが良い所でしょうか。


もう一度、読み返したくなった。『三国志
やっぱり関羽の生首に悩まされて、華陀を殺して、
狂い死にして行く悪役敵役の曹操の末路まで見ないと、
気が済まなくなって来たかも・・・。(笑)
赤壁の戦い」だけじゃね、歴史ものの「原因と結果」の
楽しみが半減するというもの。


ちなみに娘にとっては三国志は、『ちりとてちん』の中で出てきた
徒然亭の草々兄さんを初めとする落語家の面々。
上方落語三国志』の残りの二人は、 万葉亭柳眉 土佐屋尊健。
そのルーツはむろん、『三国志』の劉備孫権曹操
ルーツに関しては、まだ娘に追いつかれていない。(笑)
本家本元では悪役だった曹操が、『ちりとてちん』の世界では、
美味しい役どころ、落語ブームの盛り上げ役となったことは、
まだまだ記憶に新しい。


何といっても草々の兄弟子、徒然亭草原( そうげん)
草原兄さんはこと 桂吉弥は、今も高座にあがる時に、
又の名を徒然亭草原でございますと付け加えると、観客に大うけ。
去年の今頃は、『ちりとてちん』に染まっていたなあと、
『レッド・クリフ』から『三国志』『ちりとてちん』と懐かしく思い出した。
秋の夜長の物思いがこれならば、罪は無いなあ。

横山光輝三国志大百科 永久保存版

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三国志占い―徹底プロファイリング 三国志三十六武将

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