Festina Lente2

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静止する地球よりも『K−20』

今週は週初めと週末に映画を観ることになった。
しかし、残念ながら年末以来映画の鑑賞カードが行方不明。
ガックリ来ている私。新年早々ついていない。
これまでの鑑賞ポイントがパーだ。せっせと貯めて、
無料で見られるのを楽しみにしていたのに。
一体何処に仕舞ったのだろうか、それも二つの映画館用。
最近は記憶力の減退が著しく、呆け呆けになって来たのか、
脳の中に白い点が増えてきたのか、神経そのもの駄目なのか、
単純に年齢のせいとは思えないくらい、物忘れ著しい。
パソコンを打つ速度もどんどん遅くなってきて、
更新も滞りがちだしね。


それはさておき、家族と離れて孤独に過ごした11日の日曜日、
地球が静止する日』を鑑賞。キアヌ・リーブスのファンではないが、
往年のSFのリメイクとあっては、興味津々。されど・・・、
予告編が上手すぎたせいか、中身は散漫。何だ、これ?
味付けの薄いスープというか、間延びした演出というか、
場面場面では大袈裟過ぎる位「お芝居」めいた演技。


でも、要所要所で決め手がなくて、宇宙人に人間はそんなに悪い奴じゃないよと
単にわかって貰わないと、滅ぼされちゃう。
その人間たるや、義理の親子関係にすったもんだしている、
白人の母親と黒人の息子。・・・アメリカの家族関係と人種問題を、
こういう一点に凝縮させているのか?
頼りにならない科学者が男性、防衛長官が女性、
エイリアンの情報を大国の機密事項として保持しようとしても、
インターネットのお陰で全く機密保持が出来ない有様。


キアヌ・リーブスの雰囲気でもって、謎めいたトーンを保持。
それって、『コンスタンチン』や『マトリックス』で使った手。
いい加減にそういうイメージで役者を使うのをやめたら?
色んな役ができるからこその役者なのに、固執した役柄。
秘密めいたミステリアスな、理解しがたい存在。
特別な能力を持っている・・・特別扱いの配役。
観客の側としては、「また・・・」と面白くない。
それともそういう役柄の彼に固執して、映画製作し続けたいのか?


傲慢な人間を滅ぼす神の意思を持った宇宙人、
人間ではなくて地球そのものを救いに来た宇宙人、
人間を消滅させようとするきっかけが、他者への「攻撃」であり、
一旦滅ぼすと決めたら、聖書の中のイナゴの大群のように、
何もかも喰い尽くし、通った後に何も残さない。
その「滅びのイメージ」が先行する映画作り。
戦争で犠牲になった連れ合いと、その連れ合いの息子と抱き合って
悲しみと寂しさを共有する、母と子。
その存在が宇宙人の心に「人間の愛」を認めさせる。
壮大なストーリーと引っ張り方をした挙句、これ?
あくまでも父親不在。父性はエイリアンに? 
それとも神に委ねて?


単純でお粗末過ぎて、お金をかけたSF映画の割りにがっくり。
大掛かりなセットも科学者人も集まってすったもんだして、これ?
最初から人類、期待外れ過ぎるって・・・。
面白く無いこと、この上ない。期待したフルコースを待っていて、
これだけしか無いの? 量も味付けも盛り付けも駄目じゃん。
そんな感じの仕上がり、『地球が静止する日』。
鑑賞カードを失くして正規料金払っただけに、怒り倍増。
あ、単純なのは私めの鑑賞態度の方だったかしら。


それに比べて、本日17日、家族3人で鑑賞の『k−20』。
私としては余り期待せず、娘の希望で見に行ったのだが、
娯楽映画の王道を走っていて、これはこれでよし!と
頷くことができる、満足した2時間余り。
新しい怪人20面相と明智小五郎、小林少年像だった。

地球が静止する日

地球が静止する日

地球の静止する日―SF映画原作傑作選 (創元SF文庫)

地球の静止する日―SF映画原作傑作選 (創元SF文庫)


読書好きの少年少女なら一度ははまる、江戸川乱歩
「怪人20面相」のファンか、探偵明智小五郎側か、好みが別れる所。
ちょっと捻ったファンは、小林少年派になったりする。
小学生の頃の読書で、推理もの探偵もの、アクション冒険ヒーロー。
今のようにアニメが発達していなかった時代、この手の文学作品は、
胸躍らせて続きを読み、わくわくする典型。


怪盗ルパンのシリーズを読んで、ルパン派になるかホームズ派になるか、
探偵ホームズのシリーズを読んでホームズ派になるか、ワトソン派になるか。
それぞれの好みが分かれるところ。
ルパンシリーズについて言えば、完全にルパン派。
奇岩城で大ファンになり、フランスに旅行するたび物語を振り返ったのは
文学少女の御約束。ホームズは・・・面白かったけれど、近寄り難い感じ。
でも、やはりロンドンではその足跡を追って・・・は御約束。
20面相はどうしたものか。字で読む漫画のような感じで推理を楽しむというより、
家の中で時の沢山ある紙芝居を見ているような感覚が強かっただけに・・・。

([え]2-1)怪人二十面相 江戸川乱歩・少年探偵1 (ポプラ文庫クラシック)

([え]2-1)怪人二十面相 江戸川乱歩・少年探偵1 (ポプラ文庫クラシック)

怪盗紳士 怪盗ルパン 文庫版第1巻

怪盗紳士 怪盗ルパン 文庫版第1巻


それはさておき、かつての文学少年少女の心をくすぐる題材、
「怪人20面相」をどんなふうに換骨奪胎してくれるのか。
てぐすね引いている中年の親と、やっとその面白さに目覚め始めた娘。
いかが相成りますことか・・・だったのだが、面白かったの一言に尽きる。
頭の固い方から見れば時代錯誤、知的冒険・軟弱活劇ファンタジーかも。


ネタばれしたら映画を観る甲斐が無くなってしまうから、
今回はかなり伏せておいて、どんでん返しが面白かったと言えましょう。
新しい20面相像というか、明智小五郎像と言うか、
役者の演技もさることながら、ストーリー展開が良かった。
演出もなかなかの出来栄えだったと言えるでしょう。
昭和の時代への懐古、もしも太平洋戦争がなかったらという設定、
ある程度のファンタジー的な想定の元に繰り広げられるので、
SF的な突拍子も無いシチュエーションに放り込まれるのではなく、
こういうことって「あるかもしれない」という流れの中に、
いつの間にか乗せられて映画の世界に入っていく。


ちょっと歴史の勉強をしているような、日本史・世界史を皮肉るような。
身分制、東京の景色、古色蒼然として時代劇がかった雰囲気。
映画らしい作り物、アクション、善玉と悪玉、二つの顔、
なんともわかり易い構成。映画鑑賞入門編みたい。
娘に見せるには、少々長い2時間余り、でも飽きることなく満足。
家族全員で、楽しめる仕上がりなのが嬉しい。


話の摑みも、オープニングも上手くて、これなら海外に出してもいいじゃん。
そんな雰囲気さえした『K−20』(B級映画として扱われるのだろうけれど)
今年最初に見た邦画としては、充分娯楽映画の役割を果たして、
役者・演技・演出・ストーリー展開としては二重丸なのでした。
アジアと日本をまたに駆けて活躍する金城武一人が活躍、なんてことは無い。
要所要所をベテランと日本の若手が、ちゃんと占めている。
日本人好みの義理と人情、アニメ派好みのメカと仕掛け、
萌えーな感じのお嬢様、哀切誘う焼け野原的戦後日本と孤児達の生活。


それぞれの世代がはまるようなツボを押さえて、映画作りが為されている。
そんなふうに思える作品。むろん、形而上学的な喜びを追求する、
そういう作品ではなく、お正月の娯楽映画。
気分すっきり、楽しめたなあという充実感溢れる作品、
とでも申し上げておきましょうか。
同じ2009年口切で楽しむ洋画だったら、アニメ「WALL−E」、
邦画であれば、「k−20」。


今回は詳しいネタばれ無し、ということで一つだけ今回の私のツボ。
映画の中に「テスラ装置」というものが出てくる。
でも、どうしても私の耳には「デスラー装置」にしか聞こえない。
宇宙戦艦ヤマト』世代の私には、そう聞こえて仕方が無い。
おまけにこの装置、姿を現すまでに紆余曲折、様々なからくりを経て、
起動シーンはまるでヤマトの波動砲デスラー砲を髣髴とさせる。
往年のアニメファンには、ちょっと懐かしい甘酸っぱいものだった。


マニアックに作られた映画をお楽しみ下さい、です。
一つ一つの小物などチェックしながら見ると、更に楽しい。
漫画「有閑倶楽部」ファンの世代にも充分楽しめる仕上がり。
単純明快なストーリー展開と、どんでん返し。
明らかに30代から50代まで広い世代ターゲットにしている。
(ご年配の方々のの怪人20面相のイメージは覆しているかと・・・)
娯楽映画はここまで徹底すると、いいんじゃないとすっきり。
気持ちが明るくなる、ストレス解消、そんな映画でした。

K-20 怪人二十面相・伝 公式ガイドブック

K-20 怪人二十面相・伝 公式ガイドブック

K-20 怪人二十面相・伝 オリジナル・サウンドトラック

K-20 怪人二十面相・伝 オリジナル・サウンドトラック