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仕事の教科書

今朝の読売新聞にこんな文章が載っていた。
とても素敵な文章だと思う。学生向けのページの記事から。


拝啓 MESSAGE
おくりびと」は仕事の教科書
学生の皆さん 佐藤龍子 静岡大准教授
 「おくりびと」がアカデミー賞外国語映画賞を受賞しましたが、私は見終わってしばらくして、学生のみなさんにぜひ見てほしいと思いました。若者に将来の仕事を考えさせる「キャリア教育」のエッセンスが凝縮されているからです。私がみなさんに伝えたいことがそろっています。

 この映画とキャリア教育とどう関係があるのか、キーワードで説明しましょう。

 本木雅弘さん演じる主人公は、長年の夢をかなえてチェリストとしてオーケストラに入団しますが、直後の解散で、失業。人生は思い通りにいかないと失望します。最初のキーワードは<希望と失望>。

 失意のまま帰省。新聞で見た求人広告を「旅行業かな」と勘違いして面接を受け、すぐ採用されます。悪で考えるだけでなく、行動を起こしています。キーワードは<偶然と行動>。

 納棺師が何かもわからないまま働き始め、やがて今までの仕事とは全く違う様々なスキルや社会性を身につけていきます。<まずは働いてみる>という大切な部分です。

 つらいことや嫌なことも経験しますが、小さなやりがいや喜び、人に感謝されることも体験していきます。<小さな喜びと感謝>。いやいや始めた仕事にも責任感が芽生え、仕事の奥探さと人間の尊厳を感じながら、徐々に仕事が好きになっていきます。

 山崎努さん演じる社長は温かく、時に厳しく主人公を育てて、見守ります。キーワードは<育てる>。

 どうでしょう、今の時代に仕事とは何かを考えさせるストーリーだと思いませんか。監督や脚本家はもちろんそんな意図で作っていないでしょう。私の深読みのし過ぎかもしれません。でも、美しく豊かな山形県庄内地方の自然を背景にしながら、この映画は、「キャリアデザイン」の教科書のようだと感じました。

 人生は自分が思い描いたようにいかないことも多いけど、思いがけない出会いが人生を豊かにすることもあります。誰にも訪れる死を縦糸に、仕事と人生を横糸にして、探い感銘を与える作品です。

 アカデミー賞受賞で、各地の映画館で再映されることでしょう。仕事と自分、仕事と成長、そんなことを真剣に考えてみるきっかけとして、足を運んでみてください。

 ご意見は、〒100−8055読売新聞東京本社「大学取材班」へ。
 ファクス03・5200・1827、メールdaigaku@yomiuri.com


ということで、ご意見のある方は読売新聞へどうぞ。
キーワードで若者にわかり易くあっさりと書かれたこの文章、
なるほどなあと思わされますね。

ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書~なぜ学び、なにを学ぶのか~

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教科書に載った小説

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娘に「お母さんは子供の頃、何になりたかったの?」と訊かれる。
答えると、「それ以外は無かったの? ほかにもう無いの?」とせっつかれる。
本当に子供の頃は何も考えずに大きくなった。
仕事を選ぶにしても、安易に選んでしまったというか、
安全策を取って収入を確保したというか、
オイルショックを経験しているので)冒険しなかった。
そういう母親の体験は、どれくらい役に立つものなのか。


新しいものにチャレンジしたかというと、そういう部分もある。
努力したかと言われれば、それなりに努力はした。
野心は無かった。というか、芽生えなかった。
この分野に入って全身全霊で何かをするとかしようとか、
それ以前に目の前の事に追われてあっという間に10年、
転勤すればしたて、あっという間に時間が過ぎる。


結局自分が置かれている環境をがらりと変えてしまわないと、
何も出来ないと思いつめて、色んな講座に通ったり、
社会人大学院生になってみたりしたけれど、
それがキャリアにどう繋がっていったかといえば、
転職したわけでもなし、アプローチを変えただけで、
出世も無く、キャリアアップも無く、淡々と過ごしている。


そういう時代、そういう時期の私の時間は、高齢出産以後の、
育児に全力を掛けた数年といっても過言では無い。
不惑を過ぎての出産育児は、20台とは異なるエネルギーの使い方をする。
心は満たされたが、体にはガタが来る。仕事は削って省エネになる。
アプローチは多彩になったが、昔熱中できた事には醒めて、
いわゆる隙間仕事に目が行くようになり、
派閥争いにはうんざりで、引き籠りたい気持ちが募った。


今から仕事に就こうという人間と、親として娘にどう語ればいいのか、
逡巡してしまう人間と・・・。何もかも肯定して前向きに語れない、
そういう自分がいるからこそ、若い頃に出来なかった事も、
様々できるようになってきたと言えば、そうかもしれないが。
娘に聞かれて苦笑いばかりが込みあげる。
子供の頃何になりたかったか、なんて。


仕事に教科書なんて無いと、笑い飛ばす事が出来ずに、
まあこの「おくりびと」をそういう見方で読む事も出来るなと、
切ない気持ちになってしまう自分がいる。
ここに書かれたキーワード「希望と失望」「偶然と行動」「育てる」、
それに当てはまるものは何だったのか、
これに付け加えるとすればどんな言葉を贈ろうか、娘に。


ちなみに、『若草物語』のジョーに憧れていた私。
周囲からは医学に進む事を期待されていた私。
結局どちらの道にも進めなかった私。
今では桃の節句雛人形を飾る気力も無く生活に流されているけれど、
本日は雛祭り。氷雨降る中、桃の花と鶯餅・桜餅・菱餅だけ買って帰宅。
今年の3月はどんな月になるかな。

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