Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

絵画・七宝・影絵・映画

暑い夏を、暑い盆地、京都で過ごす。
といっても丸一日炎天下ではなく、涼しい建物の中で過ごす・・・。
筈だったのに、ルーブル美術館の前は長蛇の列。
平日とはいえ、お盆を計算に入れていなかった私が馬鹿だった。
入館して観るまで、珍しく40分待ち。このロスは暑くて痛かった。
故にいつもなら借りる有料ガイドもイヤホンを当てるのも鬱陶しい。
おまけに今回の展示説明は今一つで、絵も面白くないし。


我が家では恒例の美術館博物館はしごツァー。
スルットkansaiで回れるだけ回っちゃおうの金曜日。
予てから観る予定だった「ルーブル美術館展 17世紀の絵画」
そして娘が見たがっていたメルヘンの世界、藤城清治の影絵。
この二つが本日のメイン、プラス予定外のおまけが一つ。
そして予定のおまけが一つ。


予定外のおまけというのは、京都市立美術館へ向かう途中、
夏期特別公開の並河靖之七宝記念館の案内を見たので。
そういうわけで本日は忙しくなりそう、京都の夏。
娘も慣れてきて勝手知ったる我が家のツァー。
午前中一つ、午後一つ、金曜に出歩くのは開館時間延長が多いから。
大阪の北部からだと、阪急一本で京都方面に出る方が安く付くから。
そんな御財布事情と手軽さも手伝って、夏休みのお出かけ。


そこで、ある意味娘の成長というか正直な意見を見聞きすることに。
「おかあさん、今日の展覧会面白くないよ」とルーブルの作品群を前に。
そりゃそうだろうな、画面が暗いし、テーマも分かりにくいし、
今回の17世紀の作品群、大家の作品とはいえ、
どう見ても(子どもにとって)心に染み入るような
感動を呼び覚ます作品群とは、ちょっと違う。
有名な画家の作品といえども、興味津々で見られる絵かどうかと問われると、
正直、好みの17世紀の作品は少なかったのは確か。
ある意味、薀蓄を知って、角度を変えて観てみないと難しい。
聖書やキリスト教、神話について、詳しく知っているわけでもないし。


また説明、展示の仕方が今一つ。手抜きではないかと思ったくらい。
娘が初めてルーブル美術館展を見た時は、
http://d.hatena.ne.jp/neimu/20061028/1162095910
子供用の音声ガイドもあって喜んでみていたのだけれど、
今回はそれも無かったし、このテーマと展示では確かに・・・。
余りにも説明・解説不足で不親切な感。
私自身も、余り面白くなかったのは体調のせいばかりではあるまい。


娘がさすがに何度も連れまわしただけのことはあって、
マルガリータ」の肖像には反応していた。
聖書で出てくるモーセのエピソードにも。
何しろ「赤ん坊が流される、拾われる」はドキドキする話題。
それ以外は、色彩が暗めで分かりにくかったよう。
肖像画も大人のものは余り興味を引かなかったようだ。
「この間の国立国際美術館の展示の方が面白かったよ」
そりゃそうだ。テーマが「美の宮殿の子ども達」だからね。
その時の記事はこちら。http://d.hatena.ne.jp/neimu/20090711


気を取り直して、広い道路から一本は行った静かな住宅地、
京都の街中らしい路地に面して、娘婿が開院した並河医院の向かい、
和風建築の家が並河靖之その人の邸宅兼仕事場。
知る人ぞ知る、並河靖之七宝記念館。
七代目小川治兵衛という人の造園、京都指定名勝の名庭園。
(何も知らずにふらりと立ち寄ったのが恥ずかしいかも)
池と灯篭のある落ち着いた庭が美しい。
暑い日ざしにうんざりしていただけに、心なごむ和の佇まい、
しっとり落ち着いた七宝の輝きにほっとした。


 


娘は七宝焼きの体験講座の経験があるので、展示されている顔料、
製作過程、炉など、それなりに眺めていた。
かーちゃんはやったことが無いのでさっぱりもだ。
但し、江戸末期から明治にかけて、当時の家具がそのまま残された
家の設え、様子、庭の有様など、昔懐かしい佇まいに癒される。
芸術家の一芸を極める厳しさよりも、このような家の中で、
仕事場で、庭を打ち眺めつつある時は模索し、
ある時は一息入れていたのだろうかと思いやる。

  


公開されている屋内は、昔の水や、井戸のある水周りも見ることができて、
高い梁の下、神棚の元、薄暗い土間のタイル張りの台所の様子に
どのように三度三度の食事を用意したのか、しみじみと往時を偲んだ。
親の田舎の井戸水を組み、火吹き竹を用いて竃で煮炊きした経験が、
子どもの頃の記憶とはいえ蘇って来て、不思議な気持ちにさせられる。


その後、京都文化博物館のある近所でいつものランチ、
お気に入りの店へ出かけてみれば閉店していてショックを受け、
仕方なく少々お高めの蕎麦湯を出してくれるお店で一服。
特別展 藤城清治「光と影の世界展」へ。
私にとってはパルナスの宣伝CMや木馬座の思い出と一緒に蘇る、影絵。
娘にとっては勉強ドリルの表紙の笛吹く小人らしい。

 


鏡や水面を巧みに利用した展示は、三面鏡の向こうに異次元が広がり、
無数の影絵の国が見え隠れする不思議な空間を演出。
かわいい動物達、笛を吹く小人、少女、どれをとっても見慣れた影絵。
子どもの頃からあちらこちらで見かけた藤城清治の世界。
齢85歳を過ぎても旺盛な制作意欲。
でも、ファンタジックでメルヘンチックな世界を吹き飛ばすかのように、
図録は分厚くお高く、記念として買ったお土産は遥かに予算オーバー。
先ほどのルーブルでは何も買わなかった娘も、さすがに絵葉書購入。
何時じっくり見られるかわからないのに、DVDも1枚買ってしまった。

光と影の詩人―藤城清治の世界 (別冊太陽)

光と影の詩人―藤城清治の世界 (別冊太陽)


勝手知ったる文化博物館を飛び出して、大阪市内に取って返し、
家人と待ち合わせた夕刻、夕食のサンドイッチを頬張りながら、
『ナイトミュージアム2 』を鑑賞。これが本日の予定のおまけ。
嬉しいことに、1同様面白い。歴史マニアでなくても十分に。
続編というのは期待外れも多いだけに、この作品には満足。
昔々、丸一日掛かっても見切れなかったメトロポリタンを思い出す。
今回舞台はスミソニアン博物館
日本の博物館とは、規模が違い過ぎる。


前作もそうだがヒロインとして選ばれる女性は、日本では馴染みが薄い。
以前はインディアンと呼ばれた、アメリ先住民族のサカジャウィアだったり、
女性飛行士のパイオニアアメリア・エアハートだったり、
なかなか目の付けどころかいいなあと思う。
この映画の中で黒人のパイロットが、このアメリアに向かって、
「あなたのお陰で我々マイノリティにも道が開けた」云々の下り、
差別と偏見がなお著しい中で、キャリアや夢を実現させるのが難しい現実、
アメリカという国の一面をさらりと掬って見せてくれていた。


動くはずの無い展示物・陳列品が夜になると命を持って動くという発想、
このファンタジーが過去を生き生きと蘇らせ、
歴史に学ぶこと、本当にやりたいこと、夢を持つことの素晴らしさ、
飽くなき探求精神、知のフロンティア、共生という理想を考えさせてくれる。
娯楽映画の中に、昔紙の本をめくりながら夢想した「扉の向こう」を、
空想と現実が渾然一体となった楽しさを見出し、懐かしくなる。


何が実際あったのかわからない過去、歴史の世界。
それでも人々の情念は世界を動かし、作り上げ、その営みを、
「人類の進歩」として形あるものにし続けてきた。
博物館にはその足跡が様々な形で遺されている。
それをどのように受け止め、受け継いで行くか。
わくわくしながら訪れる美術館・博物館、様々な記念館、
その向こうに広がる自分につながる時間の流れ、
原因と結果の無数の網目。


家族で笑って過ごした映画館。
娘よ、いつか君は思い出すだろうか。
何時の日か、感慨にふける事があるだろうか。
自分の心の中に、今日のような日があったことを。
時の流れを追いかけながら、生活、仕事、恋愛、学び、
衣食住の全てが、業績や遺跡の影にあるささやかな生活が、
自分の歴史を作り上げて行くのだということを。
世界の歴史の一部になって行くのだということを。


かーちゃんは、自分の時間を受け継ぐ君を、
生活を共にし、人生の時間の一部を共有する君に、
色々なことを思うよ。

映像が語る20世紀 Vol.5 ~ニューディールへの期待~ [DVD] WTC-005

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