Festina Lente2

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一足お先に『クリスマス・キャロル』

人はみな草のようで、その栄えはみな草の花のようだ。
草はしおれ、花は散る。
しかし、主のことばはとこしえに変わることがない。(ペテロⅠ 1:24)


勉強会の後、いつもの映画館で待ち合わせ。
軽く中華で腹ごしらえ、本日は封切り直後の『クリスマス・キャロル
ただのアニメだったら遠慮したかったのだけれど、
ロバート・ゼメキス監督、主人公のスクルージジム・キャリーがモデル。
一人で何役もこなしているというので、興味津々。
でも、私たちが年を取ったようにジム・キャリーも年を取った。
ナマの俳優、コミカルな演技よりも、パフォーマンス・キャプチャーの力を
借りて映画に出演しているような気分になるのは・・・私だけ?


どんな風に仕上げているのか覗き見てみたい・・・と言うのが本音。
でも、1800円も出して見る価値があるかと問われると、ちょっと微妙。
原作を読んでいる娘も、「えー、本当に見に行くの?」
おませな娘は『イングロリアス・バスターズ』に年齢制限が
掛かっているのが悔しいらしい。私は遠慮したい映画なのに。
うーん、やっぱり自分だけでこそっと見たほうが良かったかな。
でも『沈まぬ太陽』は3時間以上必要、なかなか見に行けない、
家族と見るには1時間半の映画は、妥当な鑑賞時間。
娘よ、暴力的な映画より、今はディズニーだよ。


幸い映画館はビップなブレミアシート。広々とした座席、落ち着いた雰囲気、
夜空に星が煌くようなしつらえの空間で、ひと時。
チャールズ・ディケンズの代表作、クリスマスの定番、
19世紀のロンドンが蘇る作品。・・・昔、母が元気だった頃、
母の大学時代の英文学講義の思い出話に出てきたっけ。
守銭奴スクルージと同様、あれは・・・『サイラス・マーナー』。
金色夜叉』ではないけれど、お金に目が眩んだ人生、
いや、お金によって歪んでしまった人生、
それをどんな風に再生させるのか。(再生できるのか)


この作品のストーリーはみんな周知のもの。
今更、新しい改変を付け加えてどうこうはできない。
何を、どんな視点で描くのか。
それはまるで『フォレスト・ガンプ』のように始まった。
上空からの視点、視野、俯瞰して見下ろす町々、
現代からタイムスリップしていくための心の準備、
そのなだらかなイントロダクションを経て、
いきなり死人の目からコインを取る葬儀の準備場面。

クリスマス・キャロル (岩波少年文庫)

クリスマス・キャロル (岩波少年文庫)

クリスマス・キャロル (竹書房文庫)

クリスマス・キャロル (竹書房文庫)



旧友マーレイの幽霊の訪問を受ける前と受けた後、
お決まりの過去・現在・未来を行き来する物語。
原作に忠実に描かれたというが、思っていた精霊の姿とは違っていた。
作品の色合いが、日本人好みからは程遠い色彩、コントラスト。
ややけばけばしい感じのクリスマスカラー
誇張された表情が、やや投げやりな抑制の効いた会話とちぐはぐ。
でも、コックニー訛りが行きかう、たくましい庶民の様子、
子どもたちが遊ぶ生き生きした下町の雰囲気は、
何とも言えず、「大英帝国の底辺」を髣髴とさせていて良かった。
ちょっとした服装や物言いから身分階層がくっきり浮かび上がる。


不気味に光るノッカー、荒れ果てた屋敷・調度品、
不味そうな食事、不機嫌で不幸せそうな居間の様子。
本当は上等でどっしりした織りのカーテン、天蓋付きのベッド。
それが虚しい寂しい雰囲気を盛り上げている。
常に上から見下ろす感じで描かれるのは、霊の視点?
神の視点? 観客が様子を窺っている気分を盛り上げるため?
ちょっとこの描き方が多いので、違和感。


精霊たちに連れられていく時も、常人とは違う視点で
ものを見ることを強調するために、常に上から見下ろす構図。
知らなかったことを知るためには、一つ上から考えるのが当たり前と
言われればそうなのかも知れないけれど・・・。
反対に、3人目の精霊に見せられた恐ろしい自分の未来に怯え、
逃げ惑うスクルージがねずみのように小さくなり、
生きている人間の世界を見上げるしかない、という対比のために
上から目線と下から目線を極端に描き分けたのだとしたら、
まあ仕方が無いか・・・とは思ったが。


原作と多少異なる部分は仕方が無いとはいえ、
19世紀のビクトリア王朝時代をアニメにするのに、
上流階級ではない庶民の生活を描き出すと、ああいう雰囲気?
『オリバー・ツィスト』アニメ化なども、こういう雰囲気?
ゼメキス監督のアニメのイメージがキャプチャーに頼り過ぎているのか、
『ベオウルフ』もそうだけれど、何だかなあ・・・。
ここまでこだわるんだったら、CG利用して実写でやれば?
そんな風に言ってしまいたくなる。


日本のアニメを見慣れた目には、かえってキャプチャーによって、
人間の動きを真似るがゆえに、アニメにできることをせず、
限界を作っているような気がしないでもない。
より人間に近づけたいと思う余り、不自然な気がするのは私だけ?
ネタばれになってはいけないので、興味のある方は映画館へ。
でも、鑑賞資金を節約したい人はパスしてもいいかも。
色彩や構図を観察したい人はいいかな。
英語の聞き取りに関しては、あれが正しいコックニー?。
アメリカ映画なので・・・方言指導が入っていたようで。


我が家の家族での11月の映画鑑賞はこれにて打ち止め。
後は12月。何を観るかな・・・。


実は今日の勉強会は養子縁組の実際について。
スクルージが様々な形で慈善を施したり、
他者と積極的に交わっていくその先に、考えられるもの。
『サイラス・マーナー』の世界でも、はっきり描かれていたけれど、
愛するものを得るという、お互いを必要とすること、
このことをしっかり実感することが、クリスマスの真髄でしょう。
決して「施し」などではなくて。

クリスマス・キャロル (光文社古典新訳文庫)

クリスマス・キャロル (光文社古典新訳文庫)

クリスマス・キャロル―A Christmas carol 【講談社英語文庫】

クリスマス・キャロル―A Christmas carol 【講談社英語文庫】