Festina Lente2

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昨夜『間宮兄弟』を見て

昨夜、のほほんとBSで映画を見た。
緊張を強いられない映画。こういうのも、たまにはいい。
強烈な印象は残らないけれど、心がほんわりする。
特別美しい恋愛も、涙誘う悲劇も、何も起こらない。
けれどものほほんとこのまま、この空間、
映画の中に広がる日常生活を眺めていたい気分。
そんな映画、『間宮兄弟


間宮兄弟じゃなくて、マニア兄弟だ」と言うせりふがあった。
なるほどオタクだ、オタッキーな兄弟の日常だと言われれば、
そうかもしれないけれど、こんな日常生活に憧れている自分がいる。
仕事をしながら過ぎていく毎日、表向きは社会人、
しかし、その実態は・・・!?


結論から言えば、一緒にこの映画を見ていた娘が、
「何も見ていないようで、実は見ている」
「何も感じていないようで、実は感じている」
「わかっていないようで、実はわかっている」
その人情の機微の裏表に反応しているのがわかり、面白かった。


一見醒めた、はちゃめちゃに見える、若者らしからぬ、
色んな行動、出来事、その中に散りばめられた優しさ。
一緒に暮らす、共に暮らす、そばにいること、
誰かと何かをしながら暮らすこと、
遊んだり食べたり、TVを見たり、出かけたり、
そんなささやかな毎日の繰り返しが、
たまらなくいとおしくなる様な、仕上がり。


例えて言うならば、毎日食べても飽きない白いご飯。
噛み締めれば噛み締めるほど甘みが増すような、
どんなおかずにも合うような、そんな白いご飯を、
ちょっとお結びにしてみたり、お茶漬けにしてみたり、
そんな変化が生活の喜びだったりする。
上手く言えないけれど、そんな味わいがあった映画。
主人公は男兄弟二人だというのに、
泥臭さも汗臭さも無い、あっさりとした出来上がり。
変わった映画だった。

間宮兄弟(通常版) [DVD]

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間宮兄弟 (小学館文庫)

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BSで見た『間宮兄弟』。本当はどうしようかと思ったが、
予告編が余りにも面白かったので、やっぱり見てしまった。
日本映画はシリアスか馬鹿馬鹿しいか、うまい具合に力が抜けて、
心穏やかになれるものが少なく、泣かせようとしたり、
今までに無い迫力などを目指して作りこみ過ぎ、
見る者に見る前から気負いを抱かせるものが少なくない。


しかし、予告編に違わず『間宮兄弟』は、ほのぼのしていた。
男性二人暮しのむさ苦しさも、かさ高さも無く、
何とも言えないほんわりした雰囲気と間合い、殺伐さからは縁遠い、
微妙な面映さ、面白さと哀しさ、愛らしさを楽しむことができた。
男兄弟しか出てこない、川原泉の漫画版?

原作を読んではいないけれど、川原泉の漫画で育てた娘は
この作品に感じる所あるだろう、共感してくれるだろうと期待。
母の予想通り、片手に『アタゴオル物語』の15巻を離さぬまま、
画面を見る娘。漫画に笑っているのか映画に笑っているのか。

アタゴオルは猫の森 15 (MFコミックス)

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男兄弟というものが、どのようなものかわからない。
知らないからわからない。それだけのことなのか、全く予想外なのか、
何よりもきちんと整理整頓されている男の二人暮しの部屋が、
珍しいというか何と言うか、自分の整理整頓の下手さ加減が恥ずかしい。
少しばかり悩んでしまうのだが、
この日常生活、生活感溢れる室内と、二人の仕事風景、
人間関係、そして恋愛。女性に対するアプローチの仕方が面白い。
派手なアクションもなく、日常生活の延長線上。
自分も登場人物の女性人と同じ目の高さになって、
この兄弟の生活を覗き見してみたい、そんな気持ちになって見入る。


一人は小学校で昔で言う所の用務員さん、技術職員をしている弟。
一人はビール工場で試飲、テイスターの仕事をする兄。
そこに絡む弟の勤め先の小学校の女教員(とその不倫相手)
行きつけのビデオ屋の女店員(と彼氏)と、その妹とその彼氏。
兄の同僚(とその妻)と不倫相手。
微妙なカップルのオンパレード。
何処がうまく行っているんだか、いないんだか。


登場人物が多いのか少ないのか、妙にすっきりした仕上がり。
ゲスト出演で顔を出す浮世離れした母親役、
歌を歌わない中島みゆきが、艶然と微笑む妙な色っぽさを振りまく。
こんな天然の母親がいて、父親が早世した家庭に育ったら、
どんな女性も選び難いのではないか。
この家庭にして、この息子たちありなのか。


そう、のほほんと暮らしているように見える兄弟にも、
早死にした父親と同じような弁護士になれなかった、
そのことを口にする場面に、秘められた忸怩たる思い。
田舎で暮らす母親に対する愛情、申し訳なさにも似た気遣い。
母親として、適齢期?の息子たちの悩みに薄々気付きながらも、
これといって積極的に何かをするでもなく、
マイペースに暮らし続けている母親。


娘は娘でカレーパーティ、浴衣パーティ、おでんパーティ、
その背景にあるそれぞれの思い、思惑、実際の展開、
兄弟の反省会、大人になっても人間は、人間って奴は・・・、
そんなものが見え隠れする場面を見て、鋭くコメントしていた。
なるほど、子供にもそれなりに通じるものがあるらしい。


何かどうにかしなくてはという、切羽詰ったものが無いけれど、
(結構切実なものが描き出されている割には、オブラートに包まれている)
みんなそれぞれ、少しずつ変化している。
その目に見えるか見えないかの、日々の生活の中の変化、
小さな前向きの変化の兆し、どうしようもなく流されていく感もあるけれど、
冬の陽だまりにも似たような、ほのぼのした感じに救われる。


お陰で今日、血圧が上がるのを防げたかもね。
歯医者で「型取りします」と言われ心積もりをしていたのに、
仮歯を外した主治医が、「土台を入れるのを忘れていました」と
何だか妙な間合いを取って、トンデモ発言
普段の私ならば少々頭に血が上っただろうけれど、
「この先生はこういう先生さ、
この病院は町医者と違って、大学病院、
教育機関だから、ある意味、のんびりしているのさ」と
諦め半分の許容でやり過ごすことが出来た。


口を開けたまま、仮歯を外されたままで憤慨してもさまにならんし。
治療計画をどう立てているんだか、呆れはするが、
文句を言い募っても始まらないしね。
それにしてもいつになれば、本歯が入るんだか、
私の口腔内環境、今以上に本当に改善されるんだか。


脱力系和み系の映画を見た翌日は、心の棘が抜かれていたよう。
良いんだか悪いんだか。
間宮兄弟』を見た翌日は、腹を立てる気力も失せ、
何だか、生活する日常、こんなもんだと思うしかない。
腹を立てて、不必要に血管収縮させる事は無いのさと。

思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫)

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Hey,Brother

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