Festina Lente2

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感慨もなく予定をこなす

一晩明けて新年を迎えると年が改まるように、
弥生つごもりが明けると、新年度になっている不思議。
4月、春、フレッシャーズ。そんな言葉が飛び交う。
新人、新入生、入社式、転勤・転出、異動、新天地。
・・・新規巻き直し。
気持ちの切り替え、環境の変化、初心に戻って。
そんな言葉が頭の上や目の前を行ったりきたり。


しかし、同じ職場に異動もなく7年目、この仕事について結構な長さ。
ひたすら現場を這いずり回っていると、新鮮な感動や感慨も少ない。
少ないというよりも、無いに等しい。
まして、7年も同じ職場にいるのは新人の時以来。
職場環境が変わらないことに、うんざりしながら生活している。
最も通勤場所に変化がなくても、人間関係はそれなりに変わるのだが。


職場でも古参の部類、OLで言えばお局様、しかしてその実態は?
誰もやりがたらない部署に隙間家具のように嵌め込まれた、
自由が利くようで実は効かない、有り難がられているようで、
実は小馬鹿にされている、トカゲの尻尾きり部門の長だ。
チーム・バチスタの栄光』のグッチーのように、
リスクマネジメント委員会の委員長というような、格好いい名称ならまだしも。


そういうわけで、年を取る哀しさ。淡々と一日を過ごす。
ふてぶてしいと言われても仕方が無い、感情のさざ波を立てないように、
色んなものを噛み潰し? かみ殺す心境で、物事に向かい合っている新年度。
何しろ一日に出席する会議の数が多い。
心に波風なんぞ立てていたら、今日一日持ちはしない。
先は長いのだ。今日が新年度の一日目。
空回りしない、エンジンはふかさない、ダッシュはしない。

沈黙の春 (新潮文庫)

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春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

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会議は踊る、されど進まず。いや、そんなことは無い。
進むことは進んでいる。ルーティンワークを。
いつもと同じ、毎年同じ。(勤務先が異なれば、変化もあるだろうが)
約束されていた人事、通例・慣例である人事、それが覆され、
そんな役回りを被る新年度とあっては、心晴れやかに気分も爽やか、
にこやかに迎える新年度、というわけには行かない。
それが、御前会議の場であろうともなかろうとも。


緊張の面持ち。いや、私ではない。
右も左もわからぬまま、異動・転勤でやってこられた面々。
あまりに数が多いので、誰がどうと名前は覚えられない。
おいおい覚えていくしかないか・・・。
とはいえ業界は狭いので、一人歩きする尾ひれの付いた噂を聞くと、
あれこれと思い巡らすことにもなるし、
何の前情報先触れがなくても、一目見てこれは・・・と思う人も。


幾つもの会議の場で晒し者同様に新しいメンバーが。
各自が所属する大小の役割分担に応じて、会議が目白押し。
この気忙しい一日に、エイプリルフールで笑いを誘うこともなく、
淡々と業務一辺倒に時間が流れていく。
どうやら、部屋には新しく女性が配置される模様。
新人と経験者のペア、これは助かる。
室長は「当たりだ」と嬉しそう。


というわけで、今年はこの部屋の常駐人口密度は女性が多い。
社会情勢に応じて職場も締め付けが厳しくなる一方、
あれもこれもと押し付けられる営業部門は、人の出入りが激しい。
年齢差も業界も甚だしい人間を、捌いて行かなければならないこれから。
確かに心機一転・新年度、人も部屋も変わるのだからと
何とか自分に言い聞かせてみるものの、
やることは同じ、やらねばならないことは同じ、
その量と責任だけは年々増してくる。
給料だけはどんどん減ってくる。
その隔たりをひしひし感じて、虚しくなる。


ここに来て7年。得たものは多いかもしれない。
しかし、心の柔らかさや人を信じて繋がる裏表を度外視した、
心通じる暖かさを年々失っていくような気がしてならない。
立場が変わったから? 役職が異なるから? 
単に年を取ったから?
心躍る新鮮な感動は、赤芽柏の若芽の色ほども萌え立たず、
仕事に向かうやる気などは何処へやら、静かに淀んで生気が無い。


友人は無駄なエネルギーを使わない事が一番よと言うけれど、
これが年を取ることならば、それは虚しい。
これが仕事で経験を積むことならば、後ろ向きに他ならない。
私には周囲を見渡す心優しさや余裕、暖かいまなざしが残されているか?
配慮されたいのならば、先に配慮する気配りがまだ・・・。


そんな哀しさを抱きながら、桜の木を見上げて、今日、卯月朔日。
こんなかーちゃんの心を柔らかくほぐしてくれる、
娘が海洋キャンプで作ってきた記念のペンダント。
命溢れる海の色を美しいグラデーションで、若々しく。

春になったら莓を摘みに (新潮文庫)

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新書479学問の春 (平凡社新書)

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