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『耳をすませば』

イバラード博物誌

イバラード博物誌

本日はイバラードファンでなくても、宮崎駿ファン,
ジブリファンならば大好きな映画、『耳をすませば』の放映日。
もう何度見ているか、わからないんだけれどね。
ちょっと違和感のある、母と姉の男言葉、というか、
つっけんどんに聞こえる会話の向こうに、父親。
そして、思春期の真っ只中。受験生の主人公。


娘は「しずく」が憧れのよう。「私の7年後の姿だ」という。
どうやら主人公を高校生と思っている様子。
まだまだ子供なのだなあ。でも、仕方がないか。
そう、小学生の頃は高校生ってものすごく大人のように思えたし、
男女交際も同じく、大人の世界の入り口だった。


でも、自分が思春期に入ってみると中学生ぐらいで
山のように甘酸っぱい思いを経験し、恋心を抱くのは日常茶飯事。
高校になると、友人たちの付き合いに比べ、自分は・・・。
恋愛は比較するものではないけれど、お手本となるべき理想に縛られ、
胸に棘刺すことばかりの日々。青春時代。

イバラード時間 [DVD]

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さてさて、耳を済ませばどんな音が聞こえてくるのか、
どんなメロディが響いてくるのか、娘よ。
若草物語』のジョーに憧れ、インク壺なるものにペン先を浸す、
その想像だけで胸が一杯になるような小学生時代。
あしながおじさん』のジェルーシャのように文章を書きたい。
読んでもらう相手を見つけたい。文通ごっこに熱を上げ、
書き散らした物語の数々はどこへ行ってしまったか。

耳をすませば イメージアルバム

耳をすませば イメージアルバム

ピアノでジブリ Studio Ghibli Works Piano Collection

ピアノでジブリ Studio Ghibli Works Piano Collection

そんな小学生時代から、現実とTVの中の区別が付かなくなるほど、
憧れ、ファンになったケン・ソゴルやトリトン
中学生になり、リルケや文語調の詩歌に浸り、
高校生ともなれば、実らぬ恋に心を苛立たせることが多く、
人一倍奥手な人間には、恋の楽しさよりも辛さばかりが真実。
思春期の良さは、どこにあるのか皆目わからず、
人生の苦さに通じるものばかりを掬い取っていた日々。


耳をすませば』の世界が、イバラードだったとは、
その後、知ることになるのだけれど、
自分の好きな絵本やイラストが動きを伴うとなると、
自分の心の世界と異なる動きばかりが目立ち、
小首を傾げつつ、こういう表現の仕方もあるのだなと、
何度この映画の再放送を見たことだろう。

耳をすませば [DVD]

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「耳をすませば」 サウンドトラック

「耳をすませば」 サウンドトラック



娘よ、その頃かーちゃんは一生子供なんて持てないかもと、
少々自分の人生を悲観的に危ぶんでいた。
そのかーちゃんに君が生まれて来てくれて、
ある意味イバラード以上に変化に満ちた毎日だ。
その君が、小学生になって何度も宮崎アニメを見て、
「しずく」を理想だといって憧れている。
物書きの世界に、何かを創造する世界に、
運命の相手である誰かと巡り合い、お互いに惹かれあう、
そんな世界に憧れている。

耳をすませば (スタジオジブリ絵コンテ全集)

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人生わからんもんだ。
ずっと一人かもしれないと思っていたのに、
今は君の成長を見守っている自分がいる。
だから、『耳をすませば』を見ると、主人公しずくに感情移入するよりも、
お爺さんたち世代に自分を置いて世界を眺めてしまう。
そう、青春は遠く過ぎ去った。恋の思い出は苦い。
報われない思い出は多い。だが、これから成長していく君がいる。
どんな煌めきを秘めているかまだわからぬ、
海のものとも山のものとも付かぬ、何かを秘めているはずの君。


世界中にいる沢山の「しずく」の中の一人である君を、
眩しい思いで見つめているかーちゃんが、ここにいるよ。

耳をすませば (集英社文庫(コミック版))

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