Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

様々な偲び方

ラジオから流れてくる「新日曜名作座」。
『きりきり舞い』第4回「くたびれ儲け」。
の今日の話は、どうやら怪談話らしい。
西田敏行と竹下恵子の芸達者な掛け合いを楽しみながら、
家族の週末の「最後の仕上げ」を車内で過ごす。
家人は私たちを送るため、車で大阪の端から端へ行ったり来たり。
ある意味大変だが、親が子供におやすみなさいのベッドサイドストーリーを聞かせるように、
高速道路を飛ばす車の中で家族全員聞き耳を立てながら
朗読に聞き入る時間は、本当に楽しい家族の時間だ。


いつものざわめきの名残りの梅田、川が光る淀屋橋界隈、
ジャンクション、海遊館前の大観覧車、最近は見ないIKEAの照明、
キリンに見えるガントリークレーンのシルエット、
遠くに見える通天閣のライトの色でお天気を確認、
臨海の工業地帯を走り抜けながら光の森を見る。


その間、今日の内容はお盆、終戦記念日敗戦記念日)にふさわしく、
死者の霊を扱った内容らしい。
墓参に出向く武家にお付き合いする羽目になった主人公。
話の舞台は江戸時代、主人公は小町娘と名高い舞。父親は十返舎一九
武家の家への玉の輿に憧れている舞は、飛ぶように早い駕籠に乗って二つの墓所を訪ねる。
同行の皆はよよと泣き崩れるばかりで一向に動こうとしない。
せっせと墓石に水を書け花や香を手向け、・・・。


葬られているのは赤穂浪士で打たれた、吉良側ゆかりの者であるらしい。
舞は昔のことなのにリアルに嘆き悲しむ人々を怪しみながらも、
その嘆きに巻き込まれ哀しみ涙をこぼす。
死者にとって忘れ去られず嘆かれること、思いを寄せて貰えることは、
立派な供養の一つだ。されど、『耳なし芳一』の話にもある如く、
必要以上に死者の世界に寄り添うことは、危険極まりない。


その点、本日のお武家の方々(霊魂)は筋目正しい、遠慮深い人々だった。
共に嘆き哀しむ心優しい舞をあの世に一緒に連れて行きたいとも思い、
それはやはり都合が悪かろうと逡巡し、一緒に行くと口には出したものの
どこに行くのかはっきりわかってはいない舞が、我に返りかけて
親や知り合いに話をして支度をせねばと現実的なことを口にすると、
「橋の向こう」には一緒に行けないからと、舞を駕籠から降ろす。
何とも心優しきあの世からの客人なのだ。

きりきり舞い

きりきり舞い

開甘露門の世界(かいかんろもんのせかい)

開甘露門の世界(かいかんろもんのせかい)



勝てば官軍、赤穂浪士判官贔屓のならいとて浪士側の人気が高い。
つまりは切腹させられた赤穂藩浅野巧守側の人気、
昼行灯と称された里家老、大石蔵之介側の人気が。
江戸城内でいじめを行ったとされた吉良側にも、家臣であったが故に、
この騒動に巻き込まれて浪士達に切り捨てられた者が沢山居ただろう。
負ければ塵芥の如く忌み嫌われ、打ち捨てられて、忘れ去られる。


喧嘩両成敗で切腹しても、後の世からも武士の誉れを称えられる浪士側、
それに比べて敵役として悪口雑言を被ることになる吉良側、
歴史の真実はどうであれ、争いに巻き込まれて散った命の側にも、
家族があり、妻や恋人、親子きょうだい、様々な嘆きがあったろう。
そういう部分にちらりと焦点を当てながら、今日この終戦記念日
我々にとっては敗戦記念日に当たるこの日に、こんな怪談話を放送するあたり、
にくいね、新日曜名作座。上手いね、NHK。


露骨に死者を偲ぶ話にするのは、朗読の世界では無粋な演出。
何のためにお盆にご先祖様が帰ってきて、どんな思いでこの世を去り、
何を未練に思いながらあの世に戻っていくか、さりげなく伝えている。
そう、物事には必ず裏と面、阿といえば吽、別の側面がある。
対になっているものがある。普段は余りに当たり前すぎて忘れてしまう面が。
この世とあの世の間の架け橋が、現世の橋と重なって、
向こうから来る時もあれば、こちらから安易に渡ることまかりならぬ、
生死の分け目となって横たわる。


主人公は真相に気づいた途端に気を失ってしまうのだが、
そこはお盆らしい、怪談話の仕上がり。お約束の結末。
まさか、そんな、イヤー、怖いの世界。
しかし、本当に親しい人を失った人々は、いつの時代であろうとも
たとえ一時だけの仮の姿でもいい、
あの世からその懐かしい姿を見せてくれと願ったことだろう。
せめて夢の中でいいから、現れて欲しいと思ったことだろう。


今日、終戦記念日敗戦記念日
今ある幸せの向こうに居る大勢の人々、そしてご先祖様。
毎日守って下さってありがとう。
戦争を知らない世代だが、戦争の恐ろしさを伝えておきたい。
祖父母・両親から聞いた話を、色んな形で知りえた話を、
娘よ、君に。怪談話ではなくて、本当にあった話として、
かーちゃんにできる形で伝えていこう。


夕映えの緋色哀しや 
    幾年(いくとせ)も酷き戦(いくさ)胸に収め得ず

原爆忌 夕空焦がし翳り行く 今日を明日へと如何に伝えむ 


                        寧夢

http://namiheiii.exblog.jp/11100049/のブログへのコメントから)

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