地ビールの夕べ

初めての人や企画する側にとっては快い緊張がある研修でも、
受身であったり、義務やお仕着せに近いもの、
何度も似たようなものを繰り返し経験している人間にとっては、
やや辛いものがあることも確か。
何たる贅沢と思われるかもしれないが、どんなご馳走でも飽きるように、
絶対必要と思われるものも役職上の義務、「ねばならぬ」世界の縛りの中で繰り返されると、
別の見方や試みはないものか、毎回これでいいのかとうんざりしてしまう。

いい加減、経験値を上げる以前に、経験を共有する者を開拓した方が・・・、
とも思ってしまうのだが、主催者側のジレンマも恐らく同じ。
これもまた、半ば強制でなければ人が集まらない、そういう組織運営。
自主研修とはならない構造上の問題、実施した、継続したという実績のための証明、
そういう絡みで動いているものだとわかっているので、
せっかくの企画から受ける感動も一瞬の内に雲散霧消。
間延びしたジェットコースター気分で二日目を終える。

良くも悪くも「馴れ」「慣れ」でしかなく、やり過ごしこなすだけの
「熟れ」に至らないのが哀しい自分。好きこそ物の上手なれだしね。
大人の慇懃無礼に毒されてしまった私。
世界で起きていることや目の前にある現実に対する真剣さ・謙虚さを通り越して、
刺激を素直に受け止める心、興味津々に反応する五感が麻痺している。
というよりも、それを広めたり共に企画したりする現場の仲間やニーズは希薄で、
それ以外に関する大元のところで日々揺らいでおり、
枝葉末節に当たるものではないかと切り捨てられてしまう部署、隙間仕事。
声を大にしようが、一旦事が起きてからでしか物事は動かない。
予防や未然に防ぐのは当たり前だから、それ以上あれこれ余計な時間を取らないでと、
いつも釘を刺されているような、そんな部分に100％全力投球は出来ない。

仕事の割り振り、力配分は実に微妙。してもしなくても変わらない部分も、
大きな全体を振り返れば絶対必要であり、わかっていても時間を割くことは嫌がられ、
義務でなければ誰も取り組まない。必然と周知の事柄であっても目を背けたがる。
そういう部署ばかり任されていると、やる気、モチベーションも保ちにくい。
徒労感だけがいや増しに増し、ケロリと「ここが私の生きる場所」と開き直ったり、
仕事だからと割り切ったり出来ないまま、時間だけが経ってしまった。
幾つになっても、自分で自分を認め、支えることの難しさよ。

U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

七人の敵がいる

そんな私の今日は、外飲み。前から目をつけていた店。
地下鉄から在来線へ乗換駅の、ちょっと気になる地下1階。
ここには何か、素敵なことが待っている？　いやいや、カウンターで、
冷たい地ビールを味わってみたい。仕事のことを何もかも忘れて。
大勢の中の仕事上の一人ではなく、ボーっと独りになりたい。
単にそれだけ。でも、お店はそれとなく「おひとりさま」に気遣い。

　　

一杯でやめておこうと思っていたが、利き酒ならぬ利きビールのセット。
小さなグラスで少しずつ楽しむことが出来るのは嬉しい。
色の薄い順に喉越しを楽しむものから、じっくり味わうものへ。
コリアンダーホワイトは名前の割に軽過ぎて、がっかり。
いわて蔵IPAカスケード、納得できるお味。
グーデン カロルス クラシック。本日の自分を最も癒す味。
料理との愛称も抜群でした。といっても、極力控えめに食べ、
脂質等分を控えめにしたつもりだったのだが・・・。

　　　　

　　

孤独な独り飲みに見えるのだろうか、「おひとりさま」は。
しかし、人疲れしている人間にとっては独りは心地よい。
たとえ自分が心から好きな仕事でも、発散させることも出来ず、
その場にいることが義務的に強要されている、その感覚から抜け出せず、
自分の「ミッション」の実感が日々遠のいていく今となっては、
心身ともに麻痺してしまいたい出張も多い。少々の酩酊、
そこまで行かずとも、脱仕事脱世間脱義務の独り飲み、外飲み。
くたびれたサラリーマン、宮仕えのおっさんの心境？　（失礼！）

　　　　

　　

私たちが結婚式の二次会を挙げた会場、今はもう無い。
あの日の徳島の地ビールはもう飲めない。作られてはいない。
ただただ、過ぎていった月日の速さに嘆息しながら、止まり木。
穏やかな人なれしたマスター、教育の行き届いたスタッフ、
しっかりした地元野菜、確かな調理、味、雰囲気良くほっと寛ぎ、
自分を整え直して仕切り直して、帰宅の顔を作る。

　　

二日間の出張を終えて、娘の待つ家への戻る私の外飲みの夕べ。
明るい内に帰れることが、普段とは大きな違い。
娘よ、君はこの夏の夕暮れを何をして過ごしている？
ごめんよ、かーちゃんは仕事の憂さを晴らすのに独り、外飲み。

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