人の心の隈は照らさず
秋の夜の月の光はきよけれど 人の心の隈は照らさず(後撰集326)
今週のブルーマンデーの夜はお月見、中秋の名月。
職場の若者は、どうして12日なのに十五夜のお月様なのですかと、
真顔で訊いてくる。ああ、説明するのも空しい。
会議会議に追われ、明日も早朝からの出勤、
心空しく会議をこなし、仕事に追われ、その合間の会話がこれか。
今日はお月見だから等と話を振ったり、話題を出したりする方が馬鹿だった。
幸い月は明るく、今宵の天気は上々。
心に憂いは多々あれど、月見る時ぐらいはせめて・・・。
食い気で気分を紛らわそう。
昔の人も詠っている。月の光が照らし出すもの、
敢えて照らさぬものに、どうして今は目を向けようか。
夏の終わり、秋の初めを告げるツクツクホウシの声も聞こえなくなってきた。
夜は集く虫たちの声がしっくり来る今日この頃。
せめて、せめて月の光に心を照らして忍ばん。
秋の夜の月の光はきよけれど 人の心の隈は照らさず(後撰集326)
人の心が測りがたいのではない。
自分でもわからぬ自分の心。
明るい所で紐解きたくはない己の心。
さやけき月影に、照らされてはならじの物思い。
正体見たりと我と我が身におののくことに?
人は見たいものを見、聞きたいものを聞く。
この数日見聞きしたくないものばかりが溢れている職場。
だからこそ、今夜のお月見。
隈無く照らす望月を愛で、敢えて照らさぬ「隈」を思いやる。
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